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「トルコの構造的欠陥」EURO 2020 トルコvsイタリア 【マッチレビュー】

パンダくんとビーバーくんが話しています…

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ビーバー「まず、パンダくんの印象はどうだった?」
パンダ「前半はトルコがよく守っていたねえ。トルコはほとんどの時間を守りに費やしていた印象だったよ。」
「パンダくんのその印象は正しい。前半のシュート数は14-0だったし、キエッリーニのヘッドとインシーニェのシュートは惜しかったね。」
「そんなにシュート数の差がついていたんだ! びっくりだよ。」
「そう。でもイタリアは得点できずスコアレスドローで折り返し。後半に3点も決まったわけだ。」
「そうそう。ふたを開けてみればイタリアの圧勝だったよねえ。でもどうして、前半に耐えていたトルコは、後半になって一気に3失点もしちゃったのさ?」
「パンダくん、まさにそれが今日のトピックだよ! 順を追って話していくね。」


イタリアのビルドアップの変化の背景

ビーバー「パンダくん、今回の試合の序盤のイタリアのビルドアップのことで、どこか気にならなかった?」
パンダ「えーっと……。そういえば、右SBのフロレンツィが最終ラインに残っていたような。」
「正解! 序盤のイタリアのビルドアップは、最終ラインにキエッリーニとボヌッチとフロレンツィが残って3バックになっていたんだよ。」
「うん。でも、それの何がいいの?」
「基本的にはピンチの予防だろうね。マンチーニ監督はポゼッション主体のサッカーを標榜しているわけだけど、そういうサッカーだとカウンターを食らった時のダメージが大きくなる。」
「チーム全体が攻撃で前のめりになる分、後ろのスペースが多いってことだね。」
「その通り。だから、最終ラインはCB 2人+SB 1人でカウンター対策していたんだろうね。ほかにも理由はあるかもしれないけど、とりあえずはこのくらいの理解でいいや。」
「でもそのあとは、最終ラインがCB 2人だけになったよね? どうしてなのかな?」
「言い方はよくないけど、トルコのカウンターがショボいってわかったからだと思う。下の図を見て。」

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「わ、難しそう。」
「説明していくね。トルコの主役はSHのカラマン。トルコの戦術では、SHはイタリアのSBにぴったり付くことになっていた。だから、カラマンはずーーーーっとスピナッツォーラに付いていた。」
「スピナッツォーラはローマの選手だよね。推進力があるイメージだなあ。」
「そう。スピナッツォーラは推進力があってドリブルがうまい。カラマンはよく頑張っていたけど、正直1対1の守備はめちゃ怪しかった(笑)」
「スピナッツォーラは元気だったよね。」
「スピナッツォーラが元気だっただけに、スピナッツォーラを追って低い位置でディフェンスさせられるカラマンがかわいそうだったね。この図で見ると分かるとおり、せっかくスピナッツォーラの裏のスペースが空いているのに、カラマンはそこを使えなかった。」
「だから、トルコはカウンターが刺さらなかったのか。」
「うん。トルコはボールを奪っても、ユルマズに向けてロングボールを蹴るしかなかったんだ。トルコがそんな状態だから、フロレンツィも上がって攻撃に参加するようになったんだ。たぶん。」


後半の作戦変更

ビーバー「さあ、ここからが問題だね。どうしてトルコは瓦解したか?」
パンダ「気になるよ。おしえておしえて。」
「パンダくんにクイズを出すね。後半の頭から、トルコはヤズシュに代わってウンデルが入ったわけだけど、その交代の意図は何だと思う?」
「うーん。ウンデルって足が速いから……、やっぱりカウンターを狙ったのかな?」
「たぶん正解。その仮説通り、後半の最初はウンデルがカウンターでいいシーンを演出していたね。」
「ウンデル速かったねえ。でも、それがどうしたの?」
「ここからわかることは、トルコのギュネシュ監督は前半のカウンターの少なさを問題視していたということだね。そしてウンデルを投入したのに加えて、SHが相手SBを深追いしなくなったんだ。」
「なるほどねえ。それはスピナッツォーラの裏のスペースを使うためだね?」
「そうだと思う。もちろんスピナッツォーラがより自由を得るようになるんだけど、それは承知での作戦変更だったんだろうね。これが崩壊を引き起こすわけだけど。」

かわいそうなオカイ・ヨクシュル

パンダ「トルコはSHがよりカウンターに絡めるようになったんだね。これでトルコのペースになりそうだけど。」
ビーバー「たしかにその作戦変更でいくつかのチャンスは掴んだけど、大きすぎる代償を支払うことになった。トルコは2列目と最終ラインの間が大きく開くようになっちゃって、そのぶんアンカーのオカイの負担が増えた。」
「オカイの脇のスペースが狙われてたよねえ。」
「バレッラは特にそのスペースに入るのがうまかった。気づいたらそこにいる、って感じ。1点目はバレッラがオカイの脇から右サイドのベラルディにパスを出して、そのベラルディのクロスがデミラルにあたってゴール。」
「リッピ監督が、イタリアのスターはバレッラだと言っていたらしいけど、たしかにすごい選手だね。」
「64分にオカイは代えられちゃったけど、絶対にオカイは悪くないよ。オカイは戦術の被害者になっちゃったね。」
「あんなにスペースが空いたらどうしようもないもんね。」
「そうそう。フリーになったスピナッツォーラはぐいぐい仕掛けてくるし、大変だったと思う。結局3失点しちゃったけど、まっとうな帰結だと思うよ。」
「厳しいな、ビーバーくん。……ところで、ほかに気になったことはあった?」
「トルコのGKのチャクルはロングボールうまくてびっくりした。EURO終わったら、良いチームに移籍するかもね。」
「たしかに! そういうニュースターが現れるかもしれないのが、EUROのひとつのよさだよね!」


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