競技へのやる気が出ない選手への対応 byうさみ
Madoyaca代表の宇佐美円香です。
私はスポーツメンタルトレーニングを事業の1つにしており、ソフトテニス競技を中心に全国の小学生から大人まで指導させていただいています。
元々は高校教員として10年ほど働いていた経験を活かし、高校生を中心にチームに介入し、選手や保護者と深い関わりを作ってサポートするメンタルサポートも行っています。
また社会人大学院生として、スポーツメンタルトレーニングの専門家になるためにスポーツ心理学を研究中でもあります。
こちらの記事は指導者、コーチ、保護者、トレーナー向けの記事になりますが、選手が読んでも参考になるような構成にしています。
今回は「競技へのやる気が出ない選手への対応」について書いていきます。
今回の内容はメンタルトレーニングというよりもカウンセリング分野の話になりますので、スポーツ心理の視点からの対応をご紹介させていただく形になります。専門家(精神科医など)への紹介が必要なレベルには対応できないのでご注意ください。
対応時のポイント5つ
私が日頃心がけており、スポーツ心理学の学術的な視点からも大切なポイントは5つあります。
相談をするかどうかは本人が納得して決断した上で始める
専門家に相談するかどうかの基準は事前に決めておく
選手自身は競技意欲が低下した流れを自分で把握できるようにする
監督・スタッフ・保護者など第三者からの視点が状況把握に必要
選手の立場やサポート環境を考慮して対応を決める
第三者からの情報収集は必須
実際サポートをしていると、監督やスタッフから連絡があった上で、選手本人の了承を得て相談対応することが非常に多いですが、このような場合、選手本人以外から情報を得やすくなります。
客観的にサポート方法などを検討したり、話を聞く際にはこういった第三者からの情報は有効です。
選手の了解を得た上で、チームスタッフやチームメイトからの情報を得る場合もあります。
選手本人ができること
競技意欲低下の流れを把握する
もしこの記事を読んでいて悩んでいる選手がいたら、まず自分の競技意欲が下がっていくまでの流れを自分で把握することに挑戦してみて欲しいです。
競技意欲低下を自覚した時期はいつなのか?まず思い出して、そこから原因を遡ってみましょう。
1人で考えてみてもいいですし、意外と誰かと話しながら思い出す方が思い出しやすいので、1人で考えるのが難しい人は誰かに話してみるといいと思います。
原因に気がつくことは、自分の心のクセに気がつくいいアプローチになります。自分が何に対してモチベーションが下がってしまうのかを知ることができると、再発防止もできますし、また意欲低下が起きても対応できます。
無理に意欲を上げようとはしない
また、競技意欲が低下している時に、無理にチームが求めるようなレベルで頑張り続けると、精神的な疲労が蓄積して精神的な問題を生じさせる可能性があります。(とはいえ、だから頑張らなくていいということではありません。いい塩梅があるということです。)
このような場合、過去に自分と同じような経験(競技意欲低下につながっている原因の部分)をして乗り越えた人にアドバイスをもらったり、相談することが有効です。
私も自分自身の経験を話すこともありますが、その選手にとって適切なアドバイスをしてくれるチーム内の選手を紹介することもあります。
感覚としては、とりあえず意欲は出ないけれど、淡々と毎日やるべきことはやっておく。きっといつか意欲が出てくると信じて。という感じですね。
周りのサポート方法
チームスタッフができることもあります。
選手の相談に対応できる人をチーム内に複数置く
できれば監督以外で、選手の相談に対応できる人がチーム内に複数いるのが望ましいです。
選手は「選手」であり、チーム内の何かしらの役割(キャプテンなど)があり、チーム内で競争もしており、複数の役割があります。なので、その役割を理解し、多角的な視点で状況を把握しサポートするためには、チーム内からの複数の人の関わりがあるといいです。
選手は相談に対して心理的な抵抗感があるということへの理解
スポーツのメンタルサポートで難しいのがここです。
アスリートは他者へ相談することへの心理的な抵抗感が強いことが多いので、スムーズなサポートを行えないこともあります。
結局は本人が納得して相談をする形でないとあまり意味がないので、この場合は本人と良好な関係を築いている周囲のスタッフが本人に相談を促すか、一緒に相談をしにいくことができることが望ましいです。
専門家に相談する基準
多くのチームでは、チーム内でこのような問題について対処していることがほとんどであると思うが、メンタルコーチや精神科医に相談を依頼する場合のポイントを紹介します。
やる気の低下した状態が長期間続いている
競技以外の日常生活においても支障が出ている
この2点のどちらかに該当する場合は、心理の専門家との相談を検討した方がいいです。
また、このような相談を依頼する基準を事前にチーム内で決めておくと、実際に必要になった時に判断・決断しやすくなります。
心理的な問題が生じてから、相談までに時間がかかってしまうと、専門的な対応が遅れて状態が悪化してしまうことが非常に多いです。
そのため、チームに心理の専門家を介入させる仕組みを作っておき、定期的に情報交換を行うことが望ましいと言われています。
対応を考えるためのポイント
確認しておきたいこと
選手の立場
選手の心のクセ
サポート環境
の3点を確認しておくことが重要です。
選手の立場
選手の立場は、
・目に見えやすい立場
選手、キャプテン、高校3年生、スポーツ推薦 など
・目に見えにくい立場
長男、家庭に問題を抱えている、経済的に苦しい、学業についていけていない など
の2つある。
この両方を確認しておくのが大切で、特に目に見えにくい部分の情報は選手の心のクセを投影するものになりやすいので、細かく確認します。
選手の心のクセ
上記の選手の立場からある程度推測される心のクセもあれば、本人と関わる中で見つけられるクセもあります。
例えば、進学後に思うように競技成績が伸びず、親や恩師に負い目を感じてしまう義理人情に厚い選手であることがわかったり、これまで失敗や挫折を経験する前に親に助けられていた選手が初めて挫折して這い上がれなくなっていることがわかったり、様々です。
家族との関係を知ると、家族構成からある程度のキャラクターを分析することが可能です。
また、競技以外の部分で悩んでいることも非常に多く、本人がそこに気づけていない場合もあるので、競技以外の話も掘り下げていくことが大切です。
サポート環境
サポートに使える資源(人・もの・環境)を確認し、常にいい環境を保てるようにしていきます。
特に人的な資源(コーチ、スタッフ、保護者、学校であれば担任や関わる教員など)を把握して、それぞれがどんなサポートができるかを考えて依頼することが必要です。
場合によっては、この中に該当する人との人間関係が壊れていて問題を引き起こしていることもあるため、必ず確認しなければいけないことです。
選手本人との心理的な距離感もある程度把握し、比較的心理的距離が近く、選手がすぐに頼れそうな人は誰かを検討することも非常に重要です。
誰にでも生じる
競技意欲、モチベーションの低下は誰にでも起きることですが、競技の継続に支障をきたす場合にはサポートが必要です。
対応に困った場合は、遠慮なく心理の専門家に相談し、コンサルを受けるといいでしょう。
次回もお楽しみに!
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