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小説

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#即興小説トレーニング

白い肌

お題 興奮した俺

腹水がたまるようになったらもう、死期はすぐそこだときいた。
電車を乗り継いで、走って病院に行った。医療麻薬のパッチが貼られた胸元が白く露出していたのを見て、胸に悔しさと恨みが沸き起こり煮立つのを感じた。何に対してか。母さんの細胞のミスコピーの癌なのかそれとも、健康な人々か。どうにもならないとやけに落ち着き払った医師か。すべてなのか。
母さんの肌はこんなに白かっただろうか。そして

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廃城の姫

お題 暑い流刑地

ひな子はここのところ、湯呑み茶碗を洗わずに、毎日そのまま使っている。
飲んでいるのは水で、氷のあるときは、たくさん入れて笑顔でのむ。
めんどうくさいのだもの。それがひな子の言い分だった。布団からのぞく足を、ぱたぱたと泳ぐように動かして、笑う。つま先はぴんと、バレリーナのように伸びていたので、美しかった。
仕事でおれが何日か帰ってこれないときは、洗ってあげたりも出来ないので、雑菌

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