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暗渠になった渋谷川を地図で探す

子どものころから川が好きです。
それも川幅の狭くなった源流や用水路がなぜか好きで、最近は見えない暗渠まで気になるようになりました。

自宅近くに渋谷川が流れています。地図を見ると渋谷川は渋谷駅付近が源流となっています。
源流なる場所を初めて見た時、意外とキレイな水が流れていることに驚きました。
この水の謎については、さまざまな本やメディアで取り上げられていますが、どうやら渋谷駅より上流は都市開発とともに下水道となり暗渠化されたそうです。そして、キレイそうな水は下水道の再生水だということのようです。

暗渠になるとなぜかその姿を見たくなります。しかし、暗渠の中を歩くことは難しそうです。

そこで今回はデジタル地図を使って渋谷川がどうなっていたのか、過去を遡りつつ、地形図なんかも確認しつつ、見ていきたいと思います。

渋谷川の謎については渋谷区や梶山公子さんのサイトが詳しいので、私はGISを使って現地に行かずして解説したいと思います。

それでは現在の渋谷川をQGIS(ソフトウェア)と国土地理院の地図データから見たいと思います。

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空中写真の右端(東)から真ん中(西)に延びているの青いラインが渋谷川です。
渋谷駅の手前で終わっています。

それではデジタル標高地図も見てましょう。

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なんとなく凸凹が分かりますね。

wikipediaを調べますと、渋谷川の上流は隠田川と呼ばれていて、源流についてはこのように記述されています。

「穏田川(渋谷川)の地形上の源頭は新宿御苑内にあり、苑内でさらに2つに分岐する形になっている。」
1つめは、
「苑内東部の玉藻池
ただし池自体の湧水はわずかしかなかったらしい。そのかわり、池からさらに200mばかり北の地点に玉川上水の水番屋があり、人工の水路を通じてここから大量の水が来ていた。水番屋では市中配水量の調整を行っていて、余った水は全てこちらへ排水していたためである。」
2つめは、
「苑内南部 - 西部の谷筋(“千駄ヶ谷”)
現在は庭園の一部となっている「下の池」「中の池」「上の池」の順に北西へ遡り、さらに北の「母と子の森」と呼ばれるエリアから苑外の新宿高校、天龍寺にかけてのあたりに湧水源があったとされる[3]。古地図を見ると、天龍寺の境内には池があったことがわかる。」

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ということで、大体この赤丸の辺りが源流のようです。

もう少し凸凹をクリアにしてみたいと思います。
国土地理院が公開している基盤地図情報から数値標高モデルをダウンロードしまして、QGISで表示してみます。表示するには少し面倒な処理が必要です。はとば様のサイトを参考にさせていただきます。

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低地を青く表示してみたところ、源流付近から現在の渋谷川まで川のようなものが見えてきました。

せっかくなので3Dマップも作ってみたいと思います。QGISのプラグイン「Qgis2threejs」を使いますと、簡単に数値標高モデルから3Dマップを作ることができます。

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垂直方向をやや誇張して表現をしてみましたが、源流付近は小さな谷のようになっています。

しかし、こんな面倒なことをしなくても、国土地理院の土地条件図を見れば渋谷川の跡地はところは「盛土地」と「凹地・浅い谷」であることが分かります。

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凡例

浅い谷ということで、渋谷川の勾配を調べてみたいと思います。これもQGISのプラグイン「qProf」を使うと土地の高低差を見ることができます。

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5キロで20メートルしか下がっていないのですね。かなり穏やかな流れだったようです。

でも本当に渋谷川はこの辺りを通っていたのでしょうか?

昔の空中写真を見れば分かるかもしれません。
国土地理院の地理院タイルにある1961年~1969年の空中写真を見てみたいと思います。ちょうど私が生まれた頃くらいです。

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なんとなく黒っぽい筋のようなものが見えます。
この辺りです。

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おそらく渋谷川だと思われます。
まだこの頃は暗渠になっていなかったのですね。記録には1964年に開催された東京オリンピック・パラリンピックの前に都市開発の一貫で暗渠になったとありますので、この空中写真はそれ以前のものかもしれません。

残念ながら空中写真にはJR千駄ヶ谷駅から北側の源流付近は写っていませんでした。現在のカメラの性能があればくっきり写っていたのですが、50年以上前ですので仕方ありません。

最後に現在の暗渠を地図で少し確認したいと思います。
現在の渋谷川は下水道になっているはずですね。東京都は下水道台帳を整備しておりその一部を公開しています。ここでは下水道の地図の一部を引用させていただきまして、QGISで表示してみたいと思います。表示するにはジオリファレンスという地図を重ね合わせる機能を使います。

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出典:東京都下水道台帳ホームページ、東京都下水道局、http://www.gesuijoho.metro.tokyo.jp/semiswebsystem/SuperaPageWeb.aspx
(一部加工しました)

JR千駄ヶ谷駅付近、線路のすぐ北側、下水道管が二又に分かれていますね。私はここが、渋谷川の2つの源流の合流地点だったのではないかと考えています。

それで、いまの渋谷川の再生水はどこから来ているのでしょうか?

それも東京都の下水道台帳を見れば正体はすぐに分かります。ぜひご覧になってください。
でもせっかくなのでちょっとだけお見せしたいと思います。
渋谷川や目黒川沿いの道を歩いていますと「清流復活」と書かれた看板がいくつかあります。この看板の地図をジオリファレンスしてみました。少し無理やりではありますが、ご覧ください。

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高田馬場近くの落合水再生センターから南下し、渋谷川に注いでいるようです。
新しい渋谷川の再生水が、昔の渋谷川の源流にあたる場所を通っているというのも、考えさせられるものがあります。

以上で暗渠になった渋谷川を地図で探す旅を終わりにしたいと思います。
最後までご覧になっていただきまして、ありがとうございます。

QGISやデジタル地図に興味をもった方は、ぜひ拙著をご覧になってください。
その問題、デジタル地図が解決しますーはじめてのGIS」(ベレ出版)

使用した地図データ・地理院タイル(全国最新写真)、国土地理院、https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/seamlessphoto/{z}/{x}/{y}.jpg
・河川データ、国土数値情報、
https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-W05.html
・地理院タイル(デジタル標高データ)、国土地理院、https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/d1-no455/{z}/{x}/{y}.png
・地理院タイル(空中写真1961年〜1969年)、国土地理院、https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/ort_old10/{z}/{x}/{y}.png
・地理院タイル(土地条件図)、国土地理院、https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/lcm25k/{z}/{x}/{y}.png
・地理院タイル(標準地図)、国土地理院、https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/std/{z}/{x}/{y}.png
・基盤地図情報ダウンロードサービス(数値標高モデル)、国土地理院、
https://fgd.gsi.go.jp/download/(会員登録が必要)

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