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人それぞれ違う「愛の言語」

留学生活も1学期分をなんとか乗り越え、最も仲の良い友人3人と「打ち上げ」をしているとき。
そのうちの一人が、「実は私、みんなにプレゼントがあるの…」と言い、
一人ひとりにプレゼントを渡しました。

「みんながいなかったら、一学期を何とか乗り切れなかったと思うから…」と。

もらったプレゼントをその場で開けてみてびっくり、
それぞれの好みや必要な物に合わせた、とてもセンスの良い贈り物でした。

とても嬉しい一方、私は焦ります。
「ありがとう!でも、私今日何も用意してないよ…」と。

すると、彼女はこう言いました。
「いいのいいの!
私、自分の感情を言葉で伝えるのが苦手でしょ?いつもキツくなっちゃう。だから、贈り物が私の”Love Language愛の言語”なの。」と。

ラブ・ランゲージ、愛の言語。
いい言葉だね、と言うと、彼女はそういう本がある、と教えてくれました。

それが、全世界でベストセラーを記録している、
ゲーリー・チャップマンの『愛を伝える5つの方法 (The Five Love Languages)』という本でした。


著者のチャップマン氏は、文化人類学と神学を修めた、アメリカで人気の結婚相談カウンセラーです。

彼は結婚生活で悩みを抱えるカップルたちの相談に乗るうちに、
愛情表現の方法は人それぞれ違うこと、そしてその違いがすれ違いを生み出す大きな原因になっていることに気づきます。

彼ははそれを「愛の言語」と考えました。

中国語しかわからない人に英語でどんなに話しかけても理解されないように、
もし互いの「愛の言語」が異なれば、どんなに自分の愛の言語で表現しても相手には全く伝わらないのです。


チャップマン氏は愛の言語には5種類あると言います。

①肯定的な言葉
②クオリティ・タイム(相手に注意を注ぐこと)
③贈り物
④サービス行為
⑤身体的なタッチ


例えば夫は、①肯定的な言葉を彼の愛の第一言語とするとします。
「ありがとう」や「すごいね」と言うこと、言ってもらうことに愛を感じます。

しかし妻は全く自分を褒めてくれません。彼女の愛の第一言語は、④サービス行為です。

妻は夫を喜ばせようと、料理をつくったりスーツにアイロンをかけたりします。
逆に、自分のために掃除機をかけてくれたらどんなにうれしいかと、夫の行動を待っています。

しかし彼は行動では愛を何も示してくれません。なぜなら彼の愛の第一言語は言葉だからです。

お互いがお互いに愛情表現をしているのに、それが全く相手に届かない。
この本はこうした、結婚生活での「愛の言語」のすれ違いに焦点をおき、
世界中で大きな共感を呼びました。


しかしこの「愛の言語」は、なにもカップル間の「愛」に限定されないはずです。

学期末の打ち上げでプレゼントをくれた友人は、
「言葉で伝えるのが苦手だから…」と本人も言う通り、
ときに笑顔が少なかったり、少しとげのある言い方をすることもあり、
この人は今私と一緒にいて楽しいのだろうか、他人に関心があるのだろうかと思うことがありました。

しかし私が驚いたのは、
彼女が一人の友人にハンドクリームを贈ったことです。

それはその友人がいつも手の甲をこすり、乾燥を気にしているからでした。

私は、友人が手の甲の乾燥を気にしていることを、その日に気づきました。

彼女は周囲の他人に関心がないどころか、私たちのことをよく見て、私たちのことをよく考えてくれていました。

彼女はそれを言葉の形では多くは示さないかもしれないけれど、
彼女の愛の第一言語である、贈り物の形で伝えてくれたのです。


人それぞれが、それぞれの愛の第一言語をもっています。

それは、全く個人的な感情に根差したものだからこそ、
他人は違うかもしれないということを忘れてしまいがちです。

愛も、友情も、そしておそらく怒りや恨みも・・・
人それぞれ、ことなる「言語」をもっている。

このことに気づけたとき、
コミュニケーションはきっとあたたかなものになるのではないでしょうか。


【参照文献】
ゲーリー・チャップマン(2007)『愛を伝える5つの方法』ディフォーレスト千恵(訳)、いのちのことば社.


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