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【劇日記】ここにいるということ ~演劇ユニットPUYEY『UP』


演劇を観に行った。
新型コロナウィルス騒ぎが起こってから、生の舞台に出向くのは初めてだった。

福岡のパフォーマンスユニット、PUYEY(ぷいえい)の『UP』。地元の子ども&かつての子どもとの一部共演もする、という実験的演出もあるらしい。以前拝見したパフォーマンスも興味深かった。

毎年参加している学会が、今、岡山県で開催されている。本当なら今頃、宿で発表準備をしなかがら、土産はきび団子にしようか…などと考えている頃だった。それが、コロナ禍のためオンライン開催になり、モニター越しでの参加になった。高い渡航費を払わなくても、職場を休まなくても学会に出席できるのは、嬉しい。
そして、とても寂しい。

そのようなことを考えているうちに、気づくと開演時間ギリギリなり、職場から全力ダッシュで会場の文化会館に滑り込んだ(主宰のSさん、いつもすみません…)。

息を切らしながら会場に入り、誘導されたのは、まさかの舞台の上。照明の明かりが、すぐ目の前に浮かんでいる。

以下、あらすじやネタバレに触れます。

高校の宿泊研修で、森をさ迷う明子と剛。
2人1組で挑戦するオリエンテーリングで、教室のはみ出しもの同士、明子は不満をもらしながら歩く。
やがて2人は、奇妙なユーチューバーに出会う。
むかし、小学生の間で流行し、今は落ち目のキャラクター『ケシタマン』の着ぐるみを被って動画配信をするも奮わない。
『ぶん、ぐー!』という決め台詞の、子ども向けキャラクターのような声が脳天に響く。
物語やがて悲しく聞こえるようになったのは、私も年を重ねてしまったからなのか。
(ちなみに『市民参加』のシーン、小学生あるあるのイジメの台詞がえげつなくリアル)

喧々諤々の末、3人は剛の目的『小さいときにみつけた、宇宙人探し』に山頂に向かう。(天井から吊られた柔らかい布とダンスで表現。渓流渡りや崖のような場所をそろりそろり歩く…もはや探検家)

終盤の、メインキャストの「ここにいるよー!」という叫びを聞いて、不覚にも涙ぐんだ。
全身で跳び跳ねて、最果ての『誰か』にメッセージを送る、それは、演劇の原点だと教えられたことがある。
大昔、舞台の向こうに声を、感情を乗せて届けることの大変さを教えてもらった。
声が枯れるまで叫んでも、足がもつれるまてま跳び跳ねても届かない声がある、と、その時知った。
今、新型ウィルスが流行して、隣の席の間に無機質なビニールシートが張られ、集団の中にいても『個』と『個』の距離は遠くなる。その向こうの誰かと繋がるために必要なものは、何だろう。
そのようなことを考えてるうちに、ゆるっと物語は終わる。なにも解決しなかったけど、ほんの少し希望が見えたような、了。

『ぶん、グー!』という決め台詞と一緒にポーズ。
ありがとうございます。

PUYEYさんのオリジナルグッズを購入。
トートバッグ、かわいい。一点ずつ手作りとか。


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