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本の事。

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大事な事はいつもこの中にある。 随分前に書いた物も改めて記録。 読みたくなる本に出会ってもらえたら嬉しいな。
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異端児はやっぱり魅力的。

著者 又吉直樹。芥川賞受賞。ベストセラー。 『火花』 すごく、まっすぐで情熱的で異端な先輩芸人 神谷さん。だから、お笑いのこと以外の事が不器用すぎて切ないんですね。 その不器用で切ない部分をすべて汲む感受性が強い後輩芸人の徳永君もまた、神谷さんの事を師と仰ぎ大好きでお笑いに一生懸命なんですね。 会話と会話の間に呟く一言や、もどかしい心の声。 お互いの葛藤が繊細に描かれていて、トコトン人間くさくてイイ。 そういう、心情や苦悩が垣間見れて、どうにも切なく、会話レベルが関西人らし

仮面は、ないよりあった方がイイ。

道尾さんの本は、ハラハラドキドキしながら、頭の中が物語でいっぱいになる事が多いんですけど、、、、 今回はちょっと違った。 『笑うハーレキン』 家も家族も仕事もすべて失いホームレス生活をする家具職人のお話。 『道化師に涙マークを書いたらピエロになる。』 気になって、道化師やクラウンやピエロ、ジョーカーについて、調べてしまった。 ピエロの涙マークの意味を知ったら愉快に笑えなくなってしまう。。。 みんな生きる為、忘れたい記憶に蓋をして、素顔を隠し生きている。 程度の差はあ

その執着こそが立派な愛。

『ぼくのメジャースプーン』 ある小学校で起きた陰惨な事件。幼馴染のふみちゃんは、 ショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。 大切な彼女の心を壊した犯人に対し“ぼく”だけにできることがある。 声の力を持った小学4年生のぼくが、ふみちゃんを救う為、復讐をする為、犯人に与える罰について1度きりのチャンスをどう使うか、必死に考え戦う物語。 『正しいとか正しくないとかはっきりした答えがある問題じゃない。 そんな中でどうすることが自分の心に恥じないのか』 哲学とか心理学とか、色ん

『〇〇バカ』は魅力的

【ボックス】 百田さんの書く本は、その内容の専門性にいつも圧感してしまいます。 その分野を職業として生きていけるじゃないかって言うぐらい詳しく、 読んでるこっち側は、その専門用語の意味を調べるのに必死だったり。。 だからこそ、物語の中に深く入り込めてしまうのですが、、、 物語は地下鉄御堂筋沿線。 大阪人としては、リアルな舞台。 ゆう(木樽)ちゃんの真面目にコツコツと確実に仕上げる努力と観察力も凄い尊敬と憧れですが、カブちゃん(鏑矢)の真っ直ぐで無邪気なボクシングバカな

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

多崎つくるは、高校時代に信頼を築き上げた大切な4人の友人から大学に入り突然、絶交を言い渡された。 突然の宣告に彼は深く傷付き、なぜ拒絶されたのかを確かめられないまま、年月だけが過ぎていく。 それでも、心の傷を隠して自分なりの人生を全うしてきたつくるだったが、36歳になったつくるは、ある女性と出会ったことで、固く閉ざした過去の蓋を開けることを決意したのだった_。 私、村上春樹さんの小説は、実は読んだことがなくて、、、 ただ、興味が惹かれたタイトルと“ハルキスト”と呼ばれる理由

温かさは、あたりまえの会話にある

『西の魔女が死んだ』 屋根裏部屋がある三角屋根の小さなお家。 サンルームの1畳程のおばあちゃんの台所。 摘みたてのミントティー。 ルビーのような野いちごの絨毯。 ラベンダーの香りが広がる庭には足踏みタライで洗ったシーツがキラキラとした空気に包まれている。 植物の匂いだとか、ジャムの味、おばあちゃんの言葉の優しさだとか、行動が、本物に触れてるように感じ心を軽く柔らかくしてくれました。 『おばあちゃん、大好き』 『アイ ノウ』 こんな、包容力と安心感ある返事。。。 暖かく

本が与えてくれるもの。

書評集-小泉今日子- 2005年から2014年の10年間、読売新聞の書評欄に掲載された小泉今日子さんの書評97編を一冊の本にまとめたものですが、、、 . 前掲の文章の結びに 『、、、、読み返すとその時々の悩みや不安や関心を露呈してしまっているようで少し恥ずかしい。でも、生きることは恥ずかしいことなのだ。私は今日も元気に生きている。』 と、あります。 書評だけでなく、ちゃんと感情移入したキョンキョンの言葉もそこに綴られてあって、その文章が綺麗で切なくて、、、でも、妙に

女は自分の立ち位置に共感を求める

『永遠の途中』 対照的な人生を歩む、2人の女性の27歳から60歳になるまでの生き方を描いた話。 『いつの時代も、女は迷いながら生きている。揺れながら不安に包まれながら、それでも自分にふさわしい生き方を選びたいと必死に考えている。』(乃梨子の思い。) 今まで、女性向けの小説の類はほとんど読んでこなくて、、、 お勧めしてもらって読んだ唯川恵さん。 この人は、いったい、どんな人生を歩んできたんだろう。 なんでこんなに、女性の気持ちが代弁できるんだろ。 自分にすらわからな

後悔の地獄に堂々とはまり込めばいい

『ハゴロモ』よしもとばなな 人は、大きなショックを受けた時 決して、自分の心を、過大評価してはいけない。 無理をして、はじめの頃に何でもない素ぶりをしたら 一生どこかが固いままになってしまう。 後悔の地獄に堂々とはまり込めばいい。 心の深い場所はそんな時じゃないと触れられない。 大丈夫。 必ず、戻ってこれる。 しかも、人を癒せる力と圧倒的な輝きが おまけとしてついてくる。 無理をしてはいけない。 無理が全ての悪い事を生み出す。 大丈夫。 人の感じる心の芯のところは、決して変