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先生が来たから、もう大丈夫

穏やかな色合いの空。
遠くから聞こえる子どもたちの元気な声。
静かだった保健室は、突然の来客によって空気が変わった。

「先生!○○さんがうずくまって泣いてるからすぐ来て!」

数人の生徒が保健室に駆け込んでくる。
慌てて行くと1人の生徒を中心にして、幾人の生徒が囲んで励まし慰めていた。

「○○ちゃん、先生が来たよ!もう大丈夫だからね!」

1人の生徒が○○さんにそう言い、離れる。

今、託された。


身が引き締まる。

まだ何もわからない状況で、症状を軽くできるのだろうか。自分はそれだけ安心させられるような存在なのだろうか。
そんな弱気な自分がいることを確認しつつ、子どもの前では絶対態度に出さないと決める。

遅れて、そんなふうに思ってくれていることに感謝の気持ちが湧く。


聞き取りをしていくうちに症状は安定した。
泣いてしまったことに恥ずかしさもあるのだろうか。
はにかみながら「ありがとうございます。もう大丈夫です。」と言われる。

手当ては何もしていないのだけれど、もしかしたら側に居たことだけでも役立ったのかもしれない。
そう考えると、すごい仕事だ。

「保健室の先生」という肩書きのおかげだけど、それに相応しい自分でいたい。

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