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オムニバス シリーズ"和多志の小噺"『1話 昨子編&2話 今日子編』。。。🥺💘


1話。昨子さくこ編『もし、その人と結婚していたら…🍃』



その昔、昨子さくこはまだ20を幾つか過ぎたばかりの頃、好きな人がいて結婚を約束していた。

それが、他愛のない理由で向こうの両親に反対されて二人は別れた。

最たる理由はたいした旧家でもないのに格式を重んじ我が家が釣り合わないという。

昨子の実家だってそんなに悪い訳じゃなかったのに反対されたのでその人はあっさり親の意向に従った。

結局はそれだけの男だったのである。

それから暫く時を経て、昨子は元彼と偶然にも同じ会社の東京本社から25歳の若さで地方のその会社の係長として赴任してきたKと出逢った。

Kは高学歴で長身でお顔はまずまずのハンサムボーイ。彼は大学を右総代で卒業し学校教授推薦でその会社に華々しく入社したエリートだった。

将来を有望視され、出世間違いなしのまさに3高。

その彼と偶然知り合い、軽い交際が始まった。

だれからみても羨望のKをなんなく射止めた昨子は回りの女子に妬まれた。

Kはとても紳士で好感がもて、失意にいた昨子の心を少しずつほどいてくれた。

しばらくして、適齢期になった昨子にお見合いの話が舞い込み、あれよあれよとほんの短い間に話は決まり、結納の日取りまで決まった。

そんなある日、突然Kから連絡があり逢うことになった。

彼は意を決したかのような重い表情で昨子に突然その縁談をやめてくれというのだった。

『縁談をやめてくれって、どういうこと?』

『暫く、見えなかったからどうしたのかしら?って思っていたのよ。』

「君の事を考えて休暇を取り、山に登っていた」

『え、わからない。私のことを考えて、山にって…』

「君と交際を始めた頃、同僚にあの女だけは止めとけと…」


暫しの沈黙が走る。

同僚が昨子が前の彼と付き合って結婚を約束するくらいの仲を知っていて、あの女だけは辞めた方がいいと言ったらしいのだ。

確かに元カレも長身でハンサム。昨子も決して美人ではないが一目を引く華やかな目立つ女性だった。。

小さな町の中で、当然二人の仲が噂にならない訳がなかったからだ。

なんで、今頃⁉️と心で呟く。

一度だって、全く意思表示なんかされてなかった昨子は好かれていたとは気付かなかったのだった。

『なんで、もっと早くに言ってくれなかったの⁉️もう遅いわ。結納は来週なのに…』

「自分でも自分の気持ちが分からず、冷静に考える時間が必要だったんだ。そして君を失いたくないと気づいたんだ!」と…

昨子は混乱したが考えてみたら、私も確かにこの人、Kを好きになっていた。でも、好きとも言われていなかったし、お見合いの話は瞬く間に進み、結納を一週間後に控えた中でのKからの突然の告白。戸惑うばかりだった。

その当時、昨子の実家は商売がうまく行かず資金繰りに困っていた矢先のあるお金持ちからの縁談話。親は大層喜び、娘を嫁がせたいと思っていた。

昨子も両親がお金にかなり困窮していたことを知っていたので、結婚するには悪い条件ではないと思っていた。

そして結納の日を迎えた。
結納には1.5キャラットのダイヤに南洋真珠の高価なネックレスにロレックスの腕時計や様々な宝石の品々と結納金。

今では大したものではないかもしれないが昨子の当時の世代ではかなり豪華な結納品だった。

両親は舞い上がり、それをみた昨子はもうこれは今更断れない。従うしかなかった…

お見合いの相手?
それは某有名大学の大学院まで卒業した高学歴な上に資産家の息子。見た目は少々難ありだが、顔や体型はその内慣れるものと内心思った。

散々、親の苦労をはたで見ていた昨子はいつからか恋愛と結婚は別という冷めた考えを持っていた。

だから当然至極の結果だろうと想っていたが、やはり女心は揺れる。

結婚まで、後ひと月という時に昨子はKと日帰り旅行に出掛けた。

私はやっぱりKが好き。でも…

二人は秋の紅葉で綺麗な京都に出向いた。日帰りのつもりだったのに、最終に乗り遅れ、結局宿に泊まることに…

そして別れの契りちぎりを結んだ。

経験したことのない愛で満たされた二人の身体は重なっては離れ、また重なる内に想いと共に絶頂を迎え、恍惚の世界をさ迷うのだった。

明くる日、二人は別れた。。

もし、昨子はあのまま、あの人、Kと一緒になっていたら、どんな人生を送っていたのだろう。。。

叶わぬ実らぬ恋の記憶ほど深い…

あの人は今どうしているのだろう。。

今、和多志をみたら誰かわかるだろうか⁉️と心で呟く。

分からず通りすぎていくかもしれない。。。

過ぎ去った日々の記憶ほど愛おしいものはない。。。🥺💘
                         完結。


2話。今日子編『柿ノ木に想いを馳せて…』



いつも通る坂道の街路樹の中になぜか一本柿ノ木があった。

かなりの樹齢でその木だけがまるで異様な存在感があった。

今日子はそこを通る度にきっとなにかしらの理由で、その木だけ切り損ねたか、或いは何か曰く付きの木なのだろうと思っていた。

行き交う人はそんな木に気を留めることもなく足早に通りすぎるだけ。そんな今日子も全く関心なくいつも通りすぎていたのだった。

今日子は一年前まで仕事をし、女性では珍しくある一部上場企業のチーフマネージャーをしていて商品管理を任せられていた。

そしてジェネラルマネージャー抜擢の話がでていた矢先に、母の介護のために仕事を辞めざるを得なくなり会社を辞めた。

その母も介護の甲斐もなく虚しく半年前に亡くなり仕事に復帰しようとしたら、今日子のポストは既に他の者に代わり、帰る場所を失っていた。

母の死と仕事を完全に失った今日子は失意のどん底にいた。

暫くなにも手につかず、ただ無意味に日々の連続を繰り返していた。

そんなある日、久々に外に出た今日子はいつもの坂道を歩いていた。

その道は朝のラッシュ時には人の往来の多い道で回りの自然に目を止める人など誰一人いない。

そのラッシュ時を過ぎるとその通りは一変し人通りも少なく、よく耳を澄ますと微かな鳥のさえずりが聞こえてきて今日子は少し驚いた。

ここに鳥たちが遊びにきていたなんて全く気付かず、その時初めて気付いたのだった。

何気ない鳥の囀りの聞こえる方に目をやると今まで目をやることもなかった柿ノ木には見事な実が鈴なりになっていた。

そこに様々な鳥たちが集まり、柿の実を啄んでいた。

えっ、この柿ノ木毎年実をつけていたっけ⁉️

全く気付くことなくただ通りすぎていた。

あれだけ毎日通っいたのに全く気付かなかったなんて…

でも柿ノ木って確か実が沢山なる年とならない年が交互にやってくるって聞いたけど、じゃー、今年はたまたま実がなる年だったってこと⁉️

この柿の木をみて短編を…
去年はあんなにも沢山の実を付けたのに
今年はサッパリ実はなし😢

調べてみると、柿ノ木は手間のかかる面倒な木でちゃんと愛情をかけて育てないと毎年実をつけることを拒むらしい。今年は実を付ける年だったってこと⁉️

そのために毎年新しい枝を伸ばし、その上ちゃんと剪定して実の数を調整しないと行けない手間のかかる木だというのだ。

じゃー、この柿ノ木も街路樹と共に毎年だれかが剪定しているのだろうか⁉️

それとも自然放置?

でも、今年はたくさんの実を付けている。

特別に手を加えなくても季節が来れば実を付け、時が立てば葉🍃を落とし、また新たな年には芽吹く。

これも自然のサイクル。自然の循環ってやつね‼️


自然の法則は誰も止められないし逆らえない。自然って私たち人間の営みには関係なく、永遠にメビウスの輪のように生まれては朽ちる。

それはまさにエンドレスに繰り広げられる『創世と破壊』の繰り返し。

当たり前のことなのに、その自然に目を落とすことも愛でることもなく、置き去りにされていたように思う。

今日子は今まで塞ぎ混んでいた自分がなぜか恥ずかしくなり、とても小さく愚かな存在に思えてならなかった。

この雄大な自然の中にあって、人間の一喜一憂、喜怒哀楽、四苦八苦など一瞬の出来事。

ちっぽけな悩みなんていきる上では些細なこと。もっと前を向いて行かなきゃ。

過ぎ去ったことを悔やむより前に進むしかない。

和多志もこうしてはいられない。前を向いて行かなきゃ。それは和多志らしさを取り戻す瞬間だった。

なぜか柿の木を見ていて励まされたような、老木であっても風雨に晒されても各年であってもちゃんと実をつける自然の営みに勇気付けられた。

今日子は柿ノ木の枝に手を伸ばし柿の実をひとつ、ふたつと取った。

誰も取ったことを咎めはしないだろう…

この柿って何て言う名前の柿なんだろう…

渋柿なのかなぁと想いながら小さな鞄に収めた。。。🥺💘

              完結。

去年和多志が取ってきた柿たち
渋柿でした
この柿から連想した小噺です💕

オムニバスシリーズ3話心萊みらい編につづく。タイトル『…🍃』



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