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大学生が興味本意で弘前市長選出馬予定者と話に行ってみたら、バチバチだった話。

花の季節を前にした青森県弘前市で、最近ホットな話題といえば弘前市長選だろう。今回は現職を含めて4人が出馬を表明しており、混戦必須な状況である。「色々噂は聞くけれど、もう何がなんだかわからない」大学生(3月31日までは)の筆者。しかし、一市民としてリベラルに判断したい。齢22歳、写真映りや印象だけで選ぶ訳にはいかないだろう。

そう思い立った筆者は市長選や地方行政・地域おこしに関心のある学生9人について来てもらって、恐る恐る市長選出馬を予定している山本昇(やまもと のぼる)氏の事務所へと向かうのだった……。

※先に述べておきたい。会を録音していないため、参加者の発言は正確なものではない。間違えがあればそれは筆者の責任である。そのことにご留意いただきながら、お楽しみいただければ幸いです。

※写真はイメージです。フリー素材を持ってきています。

↓ 市長選の混戦模様はこちらがわかりやすので参考にどうぞ ↓

800億円で、できること。

事務所で出迎えていただいた山本氏は写真より無骨な印象を受けた。他には市議会最年少の竹内市議と数名の大人たち。大人の多さに面食らった私ではあるが、1人じゃない。雰囲気に流されずに主張しようと心に決める。

一通り自己紹介を済ませたあと、竹内市議のひと言から意見交換は始まった。

「みなさん市の予算ってどのくらいあるか知ってますか? ……800億あるんです。800億円の使い道を決めるのが市長の役目です。税金ですので使い方は市民の納得のいくものであってほしいと思っています」

800億……アベノハルカスが建築費760億円、スカイツリーが650億円、東京ドームが380億円、東京タワーが170億円、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画は508億円、戦車1台8億円、新幹線は3億円。

頭を悪くして考えると、800億円あれば弘前にスカイツリーを超える世界最高の電波塔を建てることも、秋田から弘前まで新幹線を通すこともできる……かもしれない。

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こんなことは現実的でないが、800億円なんて数字だけでは腑に落ちない。”自分ゴト”として考えてみよう。総務省統計局 家計調査(家計収支編)2020年によると、一人暮らしの月の平均支出額は150,506円、年間だと1,806,072円。青森県の男性の平均寿命は78.67歳(2015年時点)、18歳で親元から離れたとして109,574,388……つまり1.1億円くらいあれば人生を全うできる訳だ。

800億円……ざっくり人生727回分のお金だ。自分達の日々の暮らしから少しずつ持ち寄って集まったお金だ。みんながちょっぴり我慢し合って集まった800億。血税とはよく言ったもので、なるほど確かに”市民が納得できる使い方”をしてほしい。

↓ 詳細な弘前市の予算についてはこちらからどうぞ ↓
http://www.city.hirosaki.aomori.jp/kurashi/zeikin/shiminnozeikin2.pdf

「ありがとう助かったよ。お礼はりんごでいいかい?」

果たして”市民が納得できる使い方”を今の市政はしているか、という議論はしない。困っている当事者には誠に申し訳ないが、弘前に住む一介の大学生にとっては対岸の火事である。しかし、大学4年間を過ごす土地が自分にとって楽しい場所なのか、挑戦できる場所なのかは重要である。

「学生はどんなことを考えているのか、何に悩んでいるのか教えてほしい」と山本氏は学生に尋ねる。悩みと言われるとパッと思いつかないが、ひとりの学生からこんなエピソードがこぼれた。

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「ちょっとしたお手伝いで、友だちに声かけて人を集めたことがあるんですけれど、お礼がりんごだったことがあって……。お気持ちはすごく嬉しいんです! 嬉しいんですけど……信頼されていないというか……」

筆者には共感できる部分があった。きっとその依頼主にも悪気はない。当の学生も対価を求めた労働ではなかっただろう。しかし、ボランティア精神は尊いが、”やりがい搾取”であってはならない。この小さな摩擦で起こるささくれは、”学都”を名乗るまちに似合うだろうか? 清貧思想で、食べ物があれば喜んで溌剌と働く若者像を妄想してはいないだろうか? そんな若者を演じてはいないだろうか?

「そんなに言うなら、あなたが声を上げて市役所にでも訴えなさいよ」というご意見はごもっともである。しかし、学生も暇じゃない。ささくれ程度で病院には行かない。じゃあ、どうするか。「あの仕事いやじゃないんだけれど、ささくれできるんだよね」の小言に耳を澄ますしかない。

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「弘前のまちのサイズ感は市民の声が市政に届きやすいと思っています。実は市役所時代は公聴広報課にもいました。”公聴”広報、聞くことが先んじると考えています。学生の発言により市役所が動いた事例もありますし、もしかすると、学生の声を聴くための”あいだ”が抜けているのかもしれませんね。」

と山本氏は言う。「同じ学生のために」と活動をしようと思った学生や、「学生相手にサービスを届けたい」と考える事業者の方ならわかっていただけるのではと思うが、実は弘前の学生の実態はよくわかっていない。勿論、弘前大学学生生活実態調査オープンデータひろさきなどの統計情報からそれとないイメージを作り出すことができるが、1万人いるとされる弘前の学生の声は思っている以上に届いていないのが現実なのではないだろうか。

若者が残りたくないまち弘前

ドキッとするタイトルをつけてみた。目標として掲げられるような「若者が残りたいまち」を実現するということは、現状は「若者が残りたくないまち」になる。次の表を見てほしい。

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平成27年のデータにはなるが、弘前市の18-24歳あたりの人口は全国と比較しても多いことがわかる。しかし、25歳以上になると途端に全国平均以下になる。就職で弘前を離れる若者(22-24歳)がどれだけ多いわかるだろう。離れる理由はそれぞれあると思う。残りたくても残れない人も、清々した気持ちで出ていく人もいる。この傾向は4年前に始まったことではない。人口の社会減は、要因は異なるが1955年以来弘前のトレンドである。67年間大きな成果があげられていない難解な課題だ。特効薬でも発明しようものなら5兆円くらいは貰ってもいいだろう。

いますぐ特効薬は作れないので、対症療法と原因究明を進めるしかない。そのために重要になるのが、データとしての若者の声……かもしれない。意見交換会では「りんご課があるなら若者課が設置されてもいいのでは」という意見もあった。実は弘前市の予算で若者(特に大学生)に対する予算は学都弘前コンソーシアムの300万円を含めて、1,000万円もないそうだ。この話が本当であれば若者予算は予算の0.0125%である。推して知るべしというものだ。

さて、一弘前に住む若者としては、煙たがられても若者の声を聞き出し、具体的な施策にできる方に票を投じようと思う。最後にこの雑文が少しでも思考のトリガーになれれば、これ以上の幸せはない。

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