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書いた手紙を出さずにおくよ

言わないことがある。
言えないのではなく、言いたくないのではなく、言わずにいる。
言いたいと思えただけで、その気持ちを抱けただけで、
わたしには、優しい風が吹いたから。
あなたに言葉を渡すのは、いまじゃなくても構わない。
受け取りたいとあなたが思えば、わたしはこの手紙を、きっと届けるよ。

わたしの過去に種を蒔いてくれた。
諦めたつもりのかかわりにもう一度向かう勇気をくれた。
何に怯え、何を守ろうとしているのか、
何のためのたたかいなのか、気づかせてくれた。
この時間が、あなたとの未来のためにあるのか、
それとも、この紡ぎ直された時間のためにあなたがいてくれたのか。
どっちだろうね。
ひとつここにあるのは、
わたしの傷が癒えたということ。
あらたな傷を伴いながら、それでも確かに癒えてゆく。

いつか答えあわせをするように、
だいじな手紙を開くことができたらと思う。
もし渡せなくても、これはわたしのたからものになる。
おおきな引き出しに全てを入れるのではなくて、
あなたのための引き出しに、ひとつずつしまっておくんだよ。
引き出しの場所を憶えておくのは得意だから。
あなたがくれた気持ちを、わたしは忘れない。

たくさんの引き出しがある、この部屋が、わたしのたからもの。
だけど、ひとつひとつ、しまったものはいつでもあなたに渡せる。
もらった相手に返せる。
鍵を持った誰かが受け取ってくれる。

紙ひこうきにして飛ばしてみるような、
あそぶようにことばにしてみるような。
そんな無邪気なわたしもいるのだけど。

気持ちを抱いておくために、言葉がそばにいてくれる。
いつかのわたしに、いつかのあなたに、
きっと届くように。

この出さなくてもいい手紙を、今、書いておこうと思った。



恐れ入ります。「まだない」です。 ここまで読んでくださって、ありがとうございます。 サポート、ありがとうございます。本当に嬉しいです。 続けてゆくことがお返しの意味になれば、と思います。 わたしのnoteを開いてくれてありがとう。 また見てもらえるよう、がんばります。