老化細胞除去剤(BPTES)体験談(5) 次回投与の前に計算

今回は予定では150mg(2.5mg/kg)のBPTESをiv予定である。ただし前回50mg(0.8mg/kg)の投与で急性反応的なものが若干生じた感があったため、薬物動態の検討を雑文的に記す。

150mgをワンショットivすると血中濃度は一時的に66μMに達しうる。(60kgの人で血液量を60/14Lとした場合; 35μg/mL) 投与したBPTESはコロイド状となっているため血管内皮細胞の間隙(0.05-0.5μm)はそのまま通過できない。一方、毛細血管径(5-20μm)よりは小さいため、おそらくいったん全血中を漂流する。

水溶性ではないため、おそらく分布容積がまあまあ大きいと考えられ、徐々に血管外に移行する。漂流している分もアルブミン等に補足され、緩徐に移行する。また、BPTESの化学式を見てわかる通り、水に「完全に」溶けないわけでもないと思わるため(※ヘキサンですら13μg/mLの水への溶解度がある。BPTESは下記の通り分子内で分極が多少ある。35μg/mLくらいなら普通に溶けそうである)、徐々に血清に直接溶解するとも考えれる。

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BPTESはどう代謝・排泄されるのか全く分からないという問題はあるが(肝経由の排泄と思われるがCB-839と違い肝機能には影響しない)、一般的な脂溶性注射剤(ロピオンとかプロポフォールとかソナゾイドとか)のワンショット時Tmaxはだいたい2~6分、Cmaxは80~20%。とすると、少なくとも初回の血中循環中2分ほどで1/5~4/5ほどは消失(組織/間質移行)していくとすると、α相の半減期は一般的に1~10分程度と考えられ、実際に他の脂溶性薬剤もこのくらいである。(例:プロポフォール1.5-2分、ハロペリドール10分、ジアゼパム1.5分)

かなり長めにα相Thalfを10分と見積もり、30分でdivした場合

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60分でdivした場合

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上記のように安全を見積もって組織分配が遅いと考え、α相Thalfを10分とした場合には、30分でDIVしてしまうと血中濃度は30μMほどに達してしまう。過量投与時の組織毒性は不明であるが効果期待量からするとtoo muchである。60分でdivするとちょうど60分後くらいに間質との間で定常状態に達する。また、この時のピーク濃度は前回トライアル時(ワンショットiv)の予想血中濃度22μMよりも低い。

というわけで60分かけてdivしたいと思う。

また、上記から分かるのは、細胞内液等への分布やアルブミンへの捕捉、順次排泄される分等を無視した場合(単に薬物は血液と外液にのみ分布すると仮定した場合)には、60kgなら150mg投与で10μMを超え16μMくらいで平衡に達する(効果が充分期待できる量になる)ということである。ただし現実的にはそこまで達さないと考えられるため、やはりマウスでの投与量である12.5mg/kgが設定されているのかもしれない。



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