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三日坊主日記 vol.69 『人生というのは、何かを探す長い旅』

ビクトル・エリセ監督の『瞳を閉じて』を見た。

御歳83歳にして31年ぶりの新作だそうだ。僕は前作を見ただろうか。恐らく見たような気がするけど、内容はよく覚えていない。ただ、映画がモチーフに使われていたような気がする。いや、その前の作品か。もしかしたら誰か他の監督と混同しているのかも知れない。

とにかく、新作も映画がモチーフに使われている。監督と俳優の間柄である旧友との心の旅の中で、映画が大きなウエイトを占めている。エリセ監督は本当に映画が好きなんだと思う。映画監督なんだから映画嫌いな人はいないと思うが、好きの中でも特別に好きな部類の人なんだろう。日本で言うと誰だろう。山田洋次監督とか、大林信彦監督とか。いや、それは単なるイメージで、皆さんそれぞれ大好きなんだろう。

ちょうど今、筒井康隆さんの古いSF小説を読んでいる。遠い国から来た自分たちの祖先の記憶を求めて旅をする物語で、『瞳を閉じて』とは全く違う内容なんだけど、僕の中ではとても近い話に思える。「人生というのは、何かを探す長い旅」この映画と小説を同時に体験した今の僕が感じたこと。それは、取りも直さずいまの僕が考えていることなんだろう。

それにしても、やはり好き嫌いのはっきり分かれる作品ではないか。ある人の人生には深く突き刺さるけど、ある人にとってはとても退屈。僕の隣に座っていた若い女性は、ラストの上海から連れてこられた娘のシーンで号泣していた。彼女にはこの映画が、このシーンに込められたメッセージが刺さったんだと思う。誰か一人にでも深く刺されば、その映画は幸せだ。

僕は今、スペインで映画を撮れないものか企んでいる題材があるので、別の意味でも感慨深い作品だった。

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