三日坊主日記 vol.278 『アニメーションがもてはやされる理由を考えてみる』
先日、テレビCMの企画をしていることを書いた。
そのCMは、数年前に僕が作ったCMの第2弾で、前回はアニメーションでキャラクターを提案し採用されたモノだ。
他にもう1本フルアニメーションの作品を作っているということも書いているが、なんだかアニメーションが大流行りなのだ。
映画、テレビ、CM、どのジャンルにも昔からアニメーションはある。僕らの世代もやはりテレビアニメで育ったし、アニメーション映画も好きでよく見る。CMディレクターとしてもアニメーションは度々作ってきた。だからアニメーションで作ること自体は何も特別なことではないんだけど、やっぱりなんだか世の中にアニメ作品が増えているような気がする。
web動画やTikTokの縦型動画でも、CMやMVでも、アニメーションが多く採用されるのは、やはり若者に受けがいいという理由が大きいのかも知れない。若者に受けるものはそれ以外の人にも受ける(若者の好みを分かっていたい、または分かると思っていたい人間の心理から)場合が多い。即ち、クライアントにも好まれる。
では、若者に受ける理由は何だろう。僕は、実写ではないよさ。人間が演じているのとは違うからよいのじゃないかと考えている。
では、実写ではないよさとは何だろう。まず、実写には情報が多過ぎると僕は思う。情報が多すぎて感情移入できない。どういうことかというと、例えば俳優やタレント。いろんな人たちが本人として、または別の誰かの役として様々なコンテンツに出ているけど、やはりその人の背景を見てしまうのではないか。
有名な女優さんがファストファッションのCMに出ている。とてもキレイな映像だし、服の魅力も女優さんの魅力も上手く表現されていて気持ちがいい。だけど、もしかしたら、この女優が普段からこのブランドの服を着ているはずがない。と、ちょっと意地悪な見方をする人もいるかも知れない。だとすると、その人は、その情報に気を取られてCMに100%共感できないのではないだろうか。
また、別のCMで50歳を目前にした有名女優のクローズアップのショットがあるとする。その顔に年相応の皺がなく、ツルツルの肌だとしたらどうだろう。「この人の肌スベスベ、さすが女優さん」と思う人もいるだろう。しかし、中には「この歳でこの肌はありえない。きっと修正してるわね」と思う人もいるだろう。逆に年相応の皺が刻まれた顔が映っているとしたら「この人女優なのに皺だらけ」とか「皺が多いのは生活が荒れてるのかしら」とか思う人もいるかも知れない。そういう意味で情報が多過ぎるというのだ。
他にも、恋愛のこと、家庭のこと、体調や病気のこと、などなどなど。人として生活している以上、その俳優にはいろんな情報がついてまわり、みる人の気持ちを掻き乱すのだ。そして究極はスキャンダル。離婚、不倫、禁止薬物、交通事故、などなど、人は数えればキリがないリスクを背負って生活をしている。映画ならまだしも、CM出演者にスキャンダルは御法度。広告代理店の営業マンは、自分が担当したクライアントの出演タレントが何かしでかしはしないか、いつもビクビクしているのだ。
その点、アニメーションのキャラクターには、意図的に入れる情報以外は入ってこない。皺の有無も制作者次第だし、スキャンダルも起こさない。顔もスタイルも思いのまま。肌の色も瞳の色も髪の色も自由。つまり、まるっきりゼロから世界観を作ることができるのだ。その上、動きやスピードにも制約がない。空だって飛べるし、海にだって深く潜れる。そして、モノによっては実写で作るよりも随分とお安くできる。制作者にとっても、クライアントにとっても、そしてみる人にとっても、良いことばかりと言えるのだ。
また、アニメキャラのコスプレをする人が多くいる。多くの場合アニメのキャラを真似ている。実写のキャラクターだと、なかなか真似たくなるコスチュームを着ていないからアニメキャラのコスプレをするのだろうけど、こんな考え方はできないだろうか。例えば、コスプレイヤーが美人アイドルのコスプレをするとしたら、見た人はなんていうだろう。可愛い。素敵。似てる。と絶賛する人もいるだろう。しかし、顔の作りがそもそも違うとか、〇〇はそんなブスじゃないって言われないだろうか。少なくとも、良し悪しではなく顔が似ていないという意見にはなるかも知れない。
つまり、生身の人間は世の中に2人と同じ人はいないのである。そういう観点からも実写よりもアニメーションのキャラクターに感情移入し易いのではないか。知らんけど。
そもそも、以前は芸能人の私生活なんて知る由もなかった。だから、みんなスターだったし、憧れの対象だったと思う。ある意味において、今の芸能人は可哀想だし、恵まれているともいえるのだ。
で、最後に今日の本題。CM第2弾の企画の草案ができた。前回提案したアニメのキャラクターに、新たにもうひとつキャラクターを作って提案する。いかにもクライアントが喜びそうな企画だ。そして、そのキャラクターが今回の訴求ポイントにピッタリとハマっている(自画自賛)。代理店の人にも大ウケだったし、また名作を作ってしまいそうな予感がするのである(自己陶酔)。