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130万人のアンケートモニターとのコミュニケーション施策 ~iOSアプリのIDFAオプトイン率57.6%達成の裏側~

マクロミルは、顧客企業のマーケティング課題を解決するために年間3万件以上のリサーチやデータ分析等のプロジェクトを実施しています。そのベースを支えてくれているのが、130万人の「マクロミルモニタ(以下、モニタ)」さんです。日々様々なデバイスを使ってアンケートに回答したり、行動データを提供したりしてくれています。今回はその中から、iOSの「マクロミルアンケートアプリ」におけるコミュニケーションの取り組みについてWebマーケティングを担当する小松拓也がご紹介します。

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iOSバージョンアップによるIDFAのオプトイン化

去る2021年4月26日、Apple社よりiOS14.5のバージョンアップが施行されました。これにより、IDFAと言われる端末の広告識別子がオプトイン化され、アプリ側が広告識別子を取得する際、アプリユーザーの許諾が必須となりました。

このオプトイン率(広告識別子の許諾率)ですが、アプリ計測ベンダーAppsFlyerの調査によると、日本で実装されているアプリでの平均値は36%前後とされています(※1)。しかし、冒頭でも申し上げた通り、モニタさんによるアンケート回答はマクロミルの事業を支えるものであり、いかにこのオプトイン率を高められるかが非常に重要でした。

結果から述べると、マクロミルアンケートアプリでは初期段階で、通常値を大きく上回る57.6%を記録しました。では、いかにしてそのような数値を達成するに至ったかを説明していきます。

※1:AppsFlyre iOS14とATTに関する統計レポートhttps://www.appsflyer.com/jp/ios-14-att-dashboard/

広告を入れないアンケートアプリになぜ広告識別子が必要か

マクロミルアンケートアプリには、広告はまったく掲載していません。純粋にモニタさんへのアンケート調査を目的としています。広告を掲載しない理由として、アンケート調査で取得したデータの多くはマクロミルの顧客企業がマーケティングに活用するものであるため、アンケートアプリから他の企業の広告へ誘導するようなことをしては、中立性を保てなくなるからです。

ではなぜ、広告のないアプリに広告識別子が必要なのでしょうか。それは、広告識別子を使った調査を行うことがあるからです。例えば、スマホでとある広告を閲覧した人と閲覧していない人を広告識別子で判別し、それぞれにアンケート調査を行います。広告への接触/非接触による商品認知や購買意識などの違いを分析することで、企業のマーケティングにおける効果測定等に役立てられています。

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一方、モニタさん側の視点に立つと、広告識別子に許諾することで、配信されるアンケートの種類が増えることになります。膨大な数の消費者パネルを保持し、マーケティングに役立つ質の高いデータを顧客企業に提供するために、こうしたモニタさん自身へのメリットを伝え、できるだけ多くのモニタさんの理解を得る必要があります。何より、事前から丁寧にコミュニケーションを取り続け、エンゲージメントを強化することが大事であると考えています。

まずはセグメント分けとコミュニケーションプラン

では、実現のためには何を行う必要があるでしょうか。マクロミルでは、モニタさんの状態に応じてセグメントを分け、各々に対しコミュニケーションメッセージや発信のタイミングをプランニングしています。下記の図のように事前と事後、新規と既存、オプトインとオプトアウトでも大別されます。

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モニタさんの理解を得るために

プランに基づき、iOS14.5のバージョンアップによる広告識別子のオプトイン化が導入される半年近く前から、事前説明のコミュニケーションをスタートしました。具体的には、まず既存モニタさんの一部に広告識別子に関する調査を行い、全体的な受け止め方や許容度を見ると同時に、広告識別子とはそもそもどういうものか、マクロミルでは広告識別子どのように使っているのかを1から伝えるようにしました。

アンケートの結果、広告識別子に対する理解度が上がると、オプトインに対する許容度も上がることがわかってきました。それを受けて、マクロミルアプリに広告識別子オプトイン化(ATT)を実装する数週間前から既存モニタさん全体にコミュニケーションを取り、理解の促進とエンゲージメント強化を図りました。

個々のモニタさんに向けたコミュニケーションプラン

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更に、アプリの中でオプトインオファーダイアログが表示される一歩手前にも「次のページのダイアログで『トラッキングを許可』することでアンケートの種類が増える」といったメッセージを配置し、モニタさんにとってのメリットをきちんと紹介しました。

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そして迎えたアプリアップデート

マクロミルアンケートアプリでは、Apple社のiOS14.5リリースによる広告識別子オプトイン化がOSに全面実装されるタイミングより先行して、オプトイン化のダイアログを実装したアプリバージョンをリリースしました。

そして、その初期値のオプトイン率は57.6%を記録。つまり、半数以上が許諾をしてくれたということです。冒頭で述べた平均値36%前後なので、事前の丁寧なコミュニケーションが功を奏したと言えます。

オプトイン化実装後もコミュニケーションプランは続く

しかし、一方で許諾をしてくれなかった人や、iOS13以前からの仕様で端末の追跡型広告制限をONにしている人には、引き継ぎ理解を促進する必要があります。適切なタイミングをもって改めてこのアプリにおける広告識別子の利用方法や意義を伝えていくコミュニケーションを実行していきたいと思います。

まとめ

今回のアプリ改修におけるモニタさんとのコミュニケーションのポイントをまとめます

・セグメント分けとセグメント毎のコミュニケーションプランの抽出
・何よりエンゲージメント強化で信頼性を上げることが許諾への筋道
・一部の対象者で調査を実施し、全体の動向と攻略へのヒントを分析
・持てるコミュニケーションツールはすべて使う
・実装後のケアも考えた上でのプランニング

このように、マクロミルでは日頃からモニタさんとのエンゲージメントや信頼関係の構築に注力してパネル運営をしています。マクロミルの事業を支えてくれているモニタさんに対するこうした誠実な取り組みの継続が、日本最大規模のアンケートパネルの構築・保持に繋がると信じ、これからもモニタさんとのコミュニケーションの取り組みを発信していきたいと思います。今後も是非ご注目ください。

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