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【無料レポートあり】コロナ禍での消費者心理と消費実態の変化 ~2020年振り返り~

新型コロナウイルスの感染拡大やそれに伴う緊急事態宣言の発令など、2020年は今までにない大きな変化がありました。マクロミルは2011年から毎週継続して消費者定点観測(Macromill Weekly Index、以下「MWI」)を実施していますが、そのデータを使って2020年の消費意識や消費実態を振り返りました。

新型コロナ感染者数の変化と、消費者気分の変化

消費者の気分を「ポジティブ」「ネガティブ」に分けてみていきます。新型コロナ以前までは、ゴールデンウィークやお盆・年末年始といった、いわゆる消費が盛り上がるタイミングに「ポジティブ」スコアも高まるという傾向がありました。また常に「ネガティブ」のスコアよりも「ポジティブ」のスコアが高い状況が続いていました。

しかし2020年1月、中国・武漢での都市封鎖が報道されたタイミングで、初めて「ポジティブ」と「ネガティブ」が逆転。3月の小中高一斉休校の報道のタイミングで「ネガティブ」が一段上のステージへ上昇、4月の緊急事態宣言発令の直前でピークに達しました。その後、緊急事態宣言の発令期間中から冷静さを取り戻し、徐々に「ネガティブ」が低下し「ポジティブ」も回復しました。そしてコロナ第2波では、第1波よりも「ネガティブ」の盛り上がりの山は低く、これまでの感染者数を遥かに上回る第3波でもそれまでとほぼ平行を保ちました。

不安の山は第1波、得体の知れない”未知のウイルス”に対する恐怖感から多くの人がネガティブな感情を抱いていたことが分かります。

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人々の「不安感」と「景況感」との関係

「ネガティブ」の指標は、「悲しかった」「腹が立った」「憂鬱だった」「不安だった」と回答した割合の平均値から指標化されていますが、構成要素の1つ、「不安だった(以降、不安感)」のスコアについて見ていきます。コロナ禍において、「不安感」はMWIの様々なスコアの中で最も変動の起伏が大きかった指標です。この「不安感」と負の相関が強かったのが、消費者にこの先の景気が良くなるか・悪くなるかを予想してもらい指標化した「景況感」です。

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4月、急激な「不安感」の高まりとともに「景況感」は急落。そして緊急事態宣言の解除と共に「不安感」は少なくなり、「景況感」が回復しました。このような短期間のうちにこれほどのスコア変動が起きたことは、MWIを観測し始めて初めのことです。7月のコロナ第2波で再び「景況感」は下降しますが、8月以降に緩やかに上昇し続け、経済回復への消費者マインドがうかがえますが、第3波と共に「景況感」の上昇はストップしました。

「景況感」と「消費金額」の関係

「景況感」に、今後1カ月の消費量が増えるか減るかを消費者に回答してもらい指標化した「消費マインド」と、過去1週間の「消費金額」の2つを重ねてみます。

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4月の緊急事態宣言が発令される前の2月初旬から「景況感DI」が下降すると共に、「消費マインド」が大きく上昇、ゴールデンウィーク半ばから「景況感DI」が急上昇するとともに「消費マインド」も回復しました。さらに「消費マインド」の波から2週間~1カ月程度遅れて、実際に消費者が消費した結果としての「消費金額」の上昇の波が訪れました。

Withコロナ 2020年の消費行動の変化

2020年の消費行動の縮小は、すべての領域、業界が一律同じ影響を受けたわけではありません。MWIでは過去1週間に消費した品目についてデータを取得していますが、例年に比べ大きく需要が消滅してしまった領域とそうでない領域とがあります。それは自宅の外で消費することを目的とするものと、自宅で消費することを目的とするもので違いが表れました。

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「自宅外」で大人数の交流と共に消費される食事会・飲み会、国内旅行、映画・コンサート・スポーツ観戦は、4月以降の需要が大きく減少しました。国内旅行は、9月半ばにGoToトラベルキャンペーンに東京都発着が加わってからは例年並みにまで回復。また、映画・コンサート・スポーツ観戦等のイベント関係は、5~6月頃の最低スコア以降、収容定員の上限緩和と共に、需要が緩やかに戻ったものの、例年の水準には至っていません。2021年1月の緊急事態宣言の発令で、当品目の需要回復はさらに先延ばしとなりそうです。そして、例年に比べて最も需要が減少したのは、食事会・飲み会です。例年であれば、食事会・飲み会のスコアは年間を通じて20%前後の購入率が見込まれますが、政府が感染拡大の大きな原因は“飲食の場”であるとし自粛を呼びかけたこともあってか、多くの人が食事会・飲み会を控え続けていたことがデータからも読み取れます。

一方、「自宅」で消費するお酒については例年とほぼ同じ水準で推移し、コロナ禍でも家飲み需要は堅調です。また、季節イベントやホームパーティ等を想定した品目である自宅での特別な食事のスコアを見ると、ゴールデンウィークの時期に需要が高まっており、ステイホームを実践し、家族等と共に食卓を囲んでいた様子がうかがえます。6月以降も例年をやや上回る水準で推移しました。

外出自粛の2020年、オンラインでの購入比率は?

不要不急の外出が呼びかけられることが多かった2020年、オンラインでの買い物状況を、総消費金額との比率で見てみます。

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「オンライン購入比率」は2020年4~5月の緊急事態宣言の前に約17%、緊急事態宣言期間は平均23%程度と、緊急事態宣言によって約5ポイント上昇しました。緊急事態宣言解除後は若干低下して約20%、その後も以前より高い水準を維持し続けました。実際の店舗での購入を控えている人やオンラインで購入する習慣が身に付いた人などが混在しているとは思いますが、緊急事態宣言を経験したことによって、消費者全体における購入チャネルの大きな変化が見て取れます。

オンラインサービスの利用率

購入チャネルのオンライン化が進むと同時に、様々なオンラインサービスの利用も伸長しました。

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特に緊急事態宣言期間中は、ステイホームで退屈せずに過ごすために、「YouTube」や「動画配信サービス(NETFLIX・Huluなど)」などの利用率が大幅に増加。また、テレワークによって一躍脚光を浴びた「オンライン会議サービス(Zoomなど)」を6月から調査対象項目に加え、開始直後に最高値を記録しました。

テレワーク率の推移

また、2020年4月に7都府県に緊急事態宣言が発令された週から、MWIに有職者のテレワーク率・時差出勤率の設問を追加し、観測をスタートしました。1都3県に絞って見てみると、「テレワーク率」は緊急事態宣言が発令されてから徐々に高まっていき、5月下旬の解除直前には約40%台、緊急事態宣言解除後には25%前後まで減少しました。

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まとめ

今回は、MWIの「不安心理」「景況感」「消費マインド」「消費金額」の相互関係をご紹介しました。これらの消費者心理は連動して動いていることから、過去データを使って指標の因果関係を把握し、その先の“未来予測”も可能かもしれません。

2020年末から2021年にかけて、新規感染者数が爆発的に増え、医療現場は逼迫、2021年1月には11都府県にも緊急事態宣言が発令されました。しかし、今のところ、2020年に発令された緊急事態宣言の頃とは違い、人々の不安感が極度に高まっている状態ではありません。2度目の緊急事態宣言下の消費者意識や消費実態についても、近日公開予定です。

今回の詳細レポートを無料公開中ですhttps://www.macromill.com/contact/files/report/j200_t57k3a.pdf

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Macromill Weekly Index(MWI)とは
日本における毎週の生活者意識や消費動向を継続的に把握する、マクロミルの定点観測調査データです。1週間の消費金額や、消費カテゴリーのほか、内閣府が実施する消費動向調査や景気ウォッチャー調査の調査票を参考にした消費マインドや景況感などの指標を幅広く取得しており、政府が公表する「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料」にも採用されました。
調査は毎週水曜に実施、データは同週の金曜に即時性高く公表しており、BIツール「Tableau」との連携によって、性別や年代別、地域ごとなどの動向把握が可能です。

*** 筆者紹介 ***

マクロミル総合研究所 研究員 村上智章

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名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻修了。財団法人計量計画研究所に入所。国や地方自治体による社会統計調査の企画・運営管理、交通需要予測のモデリングに従事。その後、ヤフーバリューインサイト株式会社を経て2010年8月マクロミルに入社、ネットリサーチ総合研究所に配属。アンケートモニターと調査データのクオリティ管理を担当。専門統計調査士。

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