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バージンロードを歩む姿に

ホテルやウエディングプランナーのお仕事を通して、たくさんの人たちの人生ドラマのワンシーンに立ち会ってきました。
そして、最近少しずつまた結婚式のお手伝いをさせていただくようになりました。

挙式のリハーサルでは、新郎新婦様そして親御様に式の流れや動作を説明して練習していただきます。
多くの場合、新郎様と新婦のお父様がガチガチに緊張されています。説明はうわの空なのが、こちらからもわかります。表情からして絶対頭に入っていないです。でも大丈夫。本番はアテンドの私が黒衣として、ずっとそばで言葉がけと合図を送っていますから。

そんな私はできるだけ写真に写り込まないように、かがんでいたり、シャッターチャンスの時にはバッと距離をとったりしつつ、いつのまにか新郎新婦様のそばにいて、まるで忍者のように動きます。

新郎新婦様が祭壇にいる時には、主に新婦様に寄り添います。ドレスの裾やベールを整えたり、ブーケやグローブのおあずかり、涙されていればそっとハンカチを。

私は挙式の進行の中で、入場でバージンロードを歩く新婦様とお父様の姿が好きです。バージンロードは、新婦様が生まれて成長されてきた人生を表しています。その道をお父様とゆっくりゆっくり歩いて愛する人のところに向かうのです。

着なれないドレス、そして普段なかなかお父様と並んで歩調をあわせて歩くことなんてないでしょう。
新婦様とお父様は、ウエディングステップといって、一歩出したら両足揃える、また一歩出したら両足揃えるという歩き方をします。お父様はドレスを踏まないかなど心配しながらぎこちないながらにも、しっかり歩みを進めつつ新婦様をエスコートなさいます。新婦様が生まれてからお母さんより器用ではないながらも、ずっと大事な娘を見守り続けたお父さんの姿そのものだなと勝手ながら想像しています。

扉が開いて新婦様とお父様が登場された瞬間に、チャペルにいるゲストから、小さな歓声の花が次々と咲くように感じます。嬉しくて涙する人たちに、新婦様への祝福の気持ちが溢れはじめる瞬間です。

今はほとんどの挙式で、入場してすぐにベールダウンが行われます。新婦様のベールを顔の前に持ってくるという花嫁衣装のお仕上げを、お母様にしていただきます。お母様はそのお役目をやり遂げると、バージンロードを歩み進む新婦様とお父様の後ろ姿を見送ります。

私はそのお母様のそばに少しだけいますが、すぐに横の通路を通って1番前まで向かいます。そして、新婦様を迎えようとしている新郎様のそばにしゃがんで、ゆっくりと歩いて来られる新婦様とお父様に、がんばれがんばれと、思いながら見つめています。
真っ直ぐに前を見つめる新婦様の表情が美しくて、私はこの瞬間が好きです。
新婦様とお父様が新郎様の前に到着したら、エスコートチェンジ。私はジェスチャーと言葉でサポートをしています。そして、新郎新婦様が祭壇の前に揃ったら、牧師が挙式を進めていきます。

私は結婚式に立ち合う際に、いつも変わらず想像していることがあります。
結婚式を迎えてそのお祝いに来られる全員が、主役の人生ドラマに関わってきた大切な人たちだということです。みんなが笑顔で主役を見つめていて、瞳を潤ませる人もいて、こんなにも幸せな集まりってないかなと思っています。
ご両親はもちろんですが、花嫁姿を見たおばあちゃんが涙している姿は私はいつも自身の祖母の姿を重ねて、ジンとしています。
祭壇近くの柱の陰に隠れ立つ私は、「新婦様、みんな喜んでいますよ、優しい顔をされていますよ」と思いながら、その新婦様の後ろ姿を見つめています。

以前のように、大きな挙式披露宴を作り上げるウエディングプランナーは体調のこともあるしできないと思いますが、私はこれからも、チャペルの中でみなさんの物語のひとときを支えていけたらいいなと思います。






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トップの写真は
上海駐在時代に行った結婚式場
もう今はクローズしてしまい
2度といけない思い出の場所





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