デミのシミ【毎週ショートショートnote】750字
お題:[二次会][デミグラスソース]
初めてのデートの食事で、
向かいに座る男が
ローストビーフを口に運ぶ時に、
デミグラスソースを白いシャツにこぼした。
彼はそれに気づかず、私の興味を惹こうと
今年のトスカーナのワインは出来が良くないとか
キザに話していたんだけど、
まったく興味もわかなかった。
ただそのこぼしたソースを
気になっているうちに、
去年の10月の友人の結婚式の2次会で出会った
男を思い出していた。
1次会では気がつかなったけれど、
彼はローマの彫像のように目鼻立ちが整って、
胸板の厚みがシャツの上からも分かる
いい男だったのよ。
その時、冷えたブルゴーニュの白を
私は楽しんでいたのだけれど、
ワインのせいか目の前のいい男に
気持ちも揺らぎ鼓動が早くなっていたの。
その男といえば、
特に私を気にする素振りを見せるわけでもなく、
ペリエを飲んでいて、私がテーブルの下で
彼の膝をつま先で軽くつついた時、
彼はフォアグラを食べようとして
デミグラスソースをシャツにこぼしたの。
あのシミも目の前にいる男と同じような
シャツの場所だったわ。
「あら、失礼」私はそう言うって、
こぼしたソースを詫びたんだけど、
「気にする事なんてない、
ただシャツに君との出会いの後が残っただけさ」
と言って笑った目元が可愛かった。
私の鼓動は激しさを増したけれど、
2次会の喧騒の中で彼とはそれきりだった。
「次は青山あたりで飲みなおさないかい」
目の前の男がそう言った時、
私はふと我に返った。
「もう一度ブルゴーニュで酔わせて欲しいわ、
できればあの2次会で」
私がそう言うと、
目の前の男は目を細め、きょとんとしていた。
シャツのソースのシミは同じ位置だけど、
私は別の場所にいたみたい。
(おしまい)
*たらはかにさんの企画投稿作品です。
>>>色々面白いアイデアの作品を出している人がいて感嘆して、夕飯のハンバーグを
食べながら書き始めたんだけど、
やっぱり課題が難しくて、
デミソースをこぼしてしまいました💦💦😅