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理科室の横河君【毎週ショートショートnote】1050文字

課題:【理科室】【曲がった】
「た、た、大変なんです 
横河君が、横河君が――」
職員室に勢いよく駆け込んでくるなり、
関 まど香が叫び声を張り上げた。
担任の斉藤 勝は何ごとだと思い、
関の方に駆け寄ると肩に手をあてて訊いた。
「どうしたというのだ、関さん」
「よ、よ、、よこかわくんが、、、
り、り、りかしつで、、」
関はそこまで言うと白目を向いて気を失い、
口から泡をふいてその場に倒れてしまった。
近くにいた体育の小林先生に頼み、
先に理科室に行ってもらった。
その向こうでは佐山教頭も立ちあがり、
「私も一緒に行きましょう」
と言って小林先生に続いて
走って教室を出ていった。
そして斉藤は関を抱え
保健室に行き彼女をベットに寝かせると、
その足で理科室に向かった。

理科室は東校舎の2階だった。
斎藤が西校舎から渡り廊下を渡って
東校舎に入った所で、
向こうから体育の小林先生がひきつった形相で
こちらに走ってきたが、
斉藤には目もくれずに通り過ぎて
一目散に走り去った。
小林先生の血走った目と
恐怖におののく顔は尋常ではなかった。

そしてその先に理科室があるところまで
来た時に、今度は佐山教頭が
「来るなら来い、俺は大丈夫だ、
来るなら来い、みんな殺ってやる」
と両手に持った包丁を血眼で振り回して
廊下に立ちはだかっていた。
佐山教頭は完全に気がふれている様子だった。
先に行ったところを曲がれば理科室があったが、
それ以上先には進めなかった。

その時だった、
理科室の方からものすごい力で引っ張られる
引力のような風を感じた。
包丁を振り回している佐山教頭は
簡単に足をすくわれて、宙に浮きながら
理科室の方に引き込まれていった。
そして理科室の曲がり角の向こうに消えると、
うぎゃぁ―――――――――
断末魔の叫び声が聞こえ、引力はおさまった。

すると廊下を曲がった理科室の方から
誰かが現れた。
横河君だった。
横河君が冷静な顔つきで
こちらに向かって歩いてきた。
斉藤は少し腰を引きながら、横河君に構えた。
「斉藤先生、これ」
横河君はポケットから本を差し出した。
斉藤はその本を受け取るか迷っていると、
今度は耳をつんざくようなサイレンの音が
体中に響いた。
斉藤はこの音のせいで
皆の頭がおかしくなってしまったのだと、
この本は絶対に受け取ってはいけないと感じた。

その時目が覚めた。
枕元には昨日の授業中に横河君から取り上げた
楳図かずおのマンガ
“漂流教室 3巻”が転がっていた。
「楳図マンガの恐怖が夢に、、、」
斉藤はそう言って額の脂汗を拭うと、
目覚まし時計を止めた。

その日の朝礼で漂流教室3巻は、
横河君の手元に戻っていったのは
言うまでもない。
(おしまい)

たらはかにさんの企画
毎週ショートショートnote
投稿作品ですが、字数を大幅に超えてます。
400字程度でまとめきれませんでした。