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「M&Aの業界構造に風穴を開けてほしい」M&Aクラウド×投資家対談 SMBCベンチャーキャピタル 中野哲治氏

皆さんこんにちは。藤原です。先日、M&Aクラウドは10億円の資金調達を発表いたしました。

「UPDATE M&Aクラウド」では今回の資金調達の発表に合わせて、このラウンドにご参加いただいたVCやCVCなどの投資家の皆様と、当社代表取締役CEO 及川厚博の対談記事を連続で公開していきます。

今回対談させていただいたのはSMBCベンチャーキャピタルの中野哲治さんです。M&Aクラウドへの出資理由や未来に向けてお互いに取り組みたいこと、さらに資金調達中にあった中野さんの男気あふれるエピソードなどもお聞きすることができました。ぜひ最後までお読みくださると嬉しいです。

腹の据わった及川の対応に驚き

――中野さんは前回ラウンドからご出資いただいていますが、もともとM&Aクラウドや及川と出会ったきっかけは何でしたか?

中野 きっかけはインキュベイトファンドさん経由の紹介でした。そのときは及川さん、結婚式か何かでいなくて(笑)。代わりにCFOの村上さんのピッチを聞いて、コンセプトやビジョンがものすごく面白いなと。それで及川さんを改めてご紹介いただいたというのが初めの出会いでした。

その当時の印象ですけど、本当に腹の据わった人だなと。資金調達を進めるにあたって大変な出来事もあったのですが、まったく動じないというか。やっぱりシリアルアントレプレナーで腹を括ってきた方だなと思いましたね。

及川 実は、リード決定のプロセスの中で、終盤にラウンドを仕切り直したんですよ。詳細はここでは控えておきますが(笑)。

中野 ラウンドを終えてみたら結果的には何の影響もなかったですけど、当時は逆算して結構アクセル踏んで投資されていたので、普通の起業家だったらもうちょっとアタフタすると思うんですよね。よく動じないなと。

――どうして動じなかったんですか?バーンも結構あったんですよね。

及川 もちろんバーンレート計算して数カ月後のこの日に死ぬんだろうなというのは意識しましたけど、それを知ったからと言って別にやる行動は変わらないんで。やることが変わらないということは、動じるのがもったいないというか。

中野 確かにそんな印象はありましたね。終わったことをあれこれ言っても仕方ないんで、次に何やるかにフォーカスされていましたよね。後で話してわかったんですが、及川さんってゴリゴリの空手家じゃないですか。動じない、裏切らない、男気ある起業家だと思いますね。

及川 中野さんだってボクシングやってましたよね。

中野 及川さんのほうが本物だと思います(笑)。あともう1つ印象として思うのが、ポーズではなく本当に利己的ではない人。自分に関わった人を全員幸せにしようとされているんじゃないですかね。

投資家対談_SMBC_中野さん

中野さんは男気系キャピタリスト!?

――ありがとうございます。今度は逆に及川さんからみて中野さんってどんなキャピタリストですか?

及川 中野さんって稀有なキャピタリストだと思っていて、男気系ですよね。VCの人って一般的に頭良くて話が上手で、二枚舌じゃないですけど、個人的にちょっとそういう印象があるんですが、中野さんは言ったことを反故にしない。さっきの話みたいなM&Aクラウドがピンチのときでも決して逃げずに一緒に何とかしようという気概をもの凄く感じました。確かあのタイミングでラウンドを降りなかった投資家は新規株主だとSMBCベンチャーキャピタルさんだけだったと思うんで。

キャピタリストってキャリアに傷がつくと、将来独立したときにLP出資受けられなかったりするんで、結構保守的になるケースもあると思うんですけど、中野さんは自分のキャリアをベットしてでもM&Aクラウドに賭けてくれているんで、本当に男気系の人ですね。

――男気系のキャピタリストって業界だと他にどういう方になるんですか?

及川 どうだろう。赤浦さん?

中野 赤浦さんは確かに男気が凄いですよね。というかインキュベイトファンドの皆さんは本当にそんな感じですよね。

及川 その中でも中野さんはやっぱり男気系に振り切ってる方だと思いますね。

中野 中野の場合は、単にあまりロジカルじゃないっていう裏返しになりそうですが(笑)。でも、ほかの投資家の皆さんもわりとロジカル一辺倒というよりは、初めてのミーティングの印象で、もう6割方決まっているのではと思うんですよね。ご投資したいか否かという観点で言えば。

――男気でウチみたいなところに出資して、中野さんの社内のお立場的には大丈夫なんでしょうか?

中野 いやいや、そういう意味だと弊社は良い会社だと思いますよ。投資検討に際して担当者の熱量という部分を、ある程度は汲み取ってくれる土壌があるので。ですのでそこは大丈夫です(笑)。

及川 熱量だと、中野さんの上司の太田さんにもそんな匂いを感じますね。

中野 おっしゃる通りで、確かに太田は非常にクレバーなのですが、本質的には本能型のキャピタリストで、リスペクトしていますね。

外部環境と優秀な経営チームの合わせ技が投資の決め手

――投資観点のお話が出たので、前回ラウンド、また今回ラウンドもなのですが、M&Aクラウドに出資を決めていただいた理由をお聞かせいただけますか?

中野 今回のご投資ではいくつか理由があるのですが、まず1点目はチームですね。初回にご投資してからこれまで、チームの雰囲気が非常に良いなというのは強く感じました。業界のペインを解決するだとか業界構造を再定義するために、それに適したチームが情熱を持って走れているかどうか。もうそれに尽きると思いますね。

それに伴って採用がとても上手くいっていると思います。及川さんは採用については厳しく見ていると思いますが、しっかりカルチャーフィットした優秀な人が採用できている。スタートアップは採用が上手くできているか否かが結構わかりやすい指標だったりしますから。これが1点目の理由です。

2点目として、定量的な側面では、前回ご投資させていただいたときにはまだM&A成約の母数もそれほど多くなく、エコノミクスが固まっていなかった中で、チームとビジョンに共感してご投資させていただきました。今回のラウンドのタイミングでは、プラットフォームに登録からオファーがあってマッチングがあって成約に至るまで、各ファネルでその率がしっかり見えていて、CPAも安定してきています。ビジネスとして明確に勝てるエコノミクスができてPMFできたというのが、この1年数ヶ月だったと思います。

エコノミクスの観点でいうと、実はもっと良くなるとも思っています。MACAP(M&A Cloud Advisory Partners)の立ち上げは2021年の年始からですが、結構フラッグシップな案件とともにローンチしたので、プラットフォームからの流入導線だけではなく、インバウンドでも案件が獲得できてるように思います。そうすると、CPAに対して獲得できる案件単価も同時に上がっていくので、CPAレシオはさらに良くなっていくのではないかと。これが2点目の理由です。

――ご指摘の通り、プラットフォームの機能だけでは難しいような案件もMACAPが支援できるようなりました。

そうですよね。また3点目として外部環境についてお話すると、IT企業をまずはペルソナにしているM&Aクラウドの立ち位置の良さというのは抜群にあります。コアビジネス×ITだとか新規事業などの文脈でトラディショナルな大企業によるIT企業に対する買収ニーズがとても高くなっていて、これは僕が銀行の法人営業部に在籍していたときから肌感として持っていたことなんですね。

それに加えて新興上場企業による潜在的なM&Aを資金使途とした海外POの事例が出てきています。未公開スタートアップ企業でも大型資金調達の事例がいくつも出てきていて、その一部はM&Aに流れると思われます。このように日本のM&Aを取り巻くエコシステムが、米国に近づきつつあるなというのは強く感じます。この外部環境の変化に対して、M&Aクラウドは小中規模案件はプラットフォームで、中大規模案件はMACAPで対応できるので「ITが絡むM&AはとりあえずM&Aクラウドに持っていこう」という第一想起が確実に取れるようになると思っています。これが3点目です。

あと付け足すなら社会的意義が抜群にあるということですよ。足元はITで攻めつつ、将来的には事業承継という部分にも広がると思いますし、これまで業界構造的にアクセスできなかったM&A案件まで拾えるようになれば、それこそ日本国内における社会的インパクトというのは計り知れないものがあるので。

ちなみに、社内では投資について誰も異論なかったですよ。

――それは良かったです。初回投資の際はどうだったんでしょう?中野さんも少しお話されたように、まだエコノミクスも見えていない状況だった中で、お決めいただいた理由というのは?

中野 やっぱり当時お話させていただいていた及川さんとCFOの村上さん、この2人への信頼感ですね。あとはビジョンにも大変共感したこと。レガシーな業界というのはさまざまな投資案件で関わることがあるのですが、その産業とか業界をアップデートしたり再定義したり、バリューチェーンを変えたりする案件の中でも、M&Aというのはものすごく市場が大きいですよね。

業界構造を変えていく、そこに切り込んでいくのは及川さんだなと思いましたね。M&A仲介の人ではなくて、M&AでExitした原体験を持っていてITに明るい人。多分、他にいないなと思いました。そこに村上さんみたいなプロフェッショナルな方がジョインして一緒にやられていて、ものすごく良いチームだなと思いました。

及川 村上もCFOですけど、プログラミングスクールに行ってましたからね。それで僕も採用しようと思いました。いろんな領域を個々人がカバーできていないとM&Aプラットフォームは無理だと思ってたんで。

投資家対談_SMBC_及川さん

中野流、「声で投資する」とは?

――会社としてはお聞きできたので、今度は中野さん個人としての投資基準をお聞かせいただけると嬉しいです。気になる起業家も多いのではないかと。あと投資後のスタートアップ経営に対する関わり方もお聞きできたらと思うのですが。

中野 投資基準で言うと、僕は比較的早いステージへのご投資が多くて、だいたいプレAからシリーズAというところになります。特にプレAが多い気がします。あとは産業とか業界の深いペインに対して、それを解決すべく正しい人が起業しているかどうかですかね。

及川 ユアマイスターみたいな。

中野 そうですね。星野さんも確かにその一人です。前にお話したかもしれないですが、起業家の原体験みたいなものが当然あれば良いのですが、どれだけ深く、そのペインに対するリサーチだとか想いがあるかどうかって、起業家の「声」に出るんですよ。ちょっと変態かもしれないですが、投資したい起業家ってその「声」が脳に響いて心を揺さぶられるんですよね。

及川 「声で投資する」って書いておきましょう(笑)。

中野 大丈夫ですかね、それ(笑)。まあでも、そういう意味では解決しようとしている業界のペインに対する理解や解像度の深さ、粒度ですよね。正しい人が起業して情熱を持って取り組めば、今の環境だと、結構な確率で勝てると思っているんですよ。

及川 それは僕もそう思いますね。

中野 良い時代というか、スタートアップはそういう環境になってきていると思います。そこに優秀な人達が集まってきますし。この観点で投資家を魅了できる起業家であれば、採用でのチームアップでもそうですし、エンタープライズ領域ならトップ営業でもそうですし、社外の人も同じく魅了できますからね。

及川 感覚値として、中野さんって他のキャピタリストとちょっと違う基準で投資されていますね。人気があるスタートアップだから出す、という感じではない気がするので、今の「声」の話を聞いて確かになあと思います。

――それでは投資後のスタンスについてはどうでしょう?

中野 実は千差万別なんですよ。非常に高い頻度でやり取りしているご投資先もあれば、四半期に一回くらいのご投資先もありますし、世間的に言うならハンズ・イフ的な感じなんでしょうね。求められる事に対しては全力で動きます。一方で、とにかく起業家がその領域で一番のプロフェッショナルであることは間違いないので、中途半端な干渉で起業家の貴重な時間を奪うということだけは絶対にないように、常々気をつけているところですね。

あとは自分が絶対にこうだと思ったことだけ言うようにしています。僕も35年生きてきて、過去、銀行の営業もかなりハードワークしてこなしてきてますので、本当に自分の経験からしてこうなんじゃないかなと、確信持って言えることは、しっかりとお伝えするようにはしています。

――では今後のお話として、及川さんから中野さんへの期待を聞かせてください。

及川 これを機に中野会に入れてほしいです(笑)。中野さんって、自分で言ったことは絶対にやり切ってくれますし、変な人紹介したりしないですし、僕もいろんな起業家友達増やしていきたいと思っているので、これからもいろいろご紹介してほしいです。そういうネットワークで経営者としての視座も高めたいなと思っているので、入れてもらえるなら中野会に呼ばれたいです。

中野 いやいや、幹事をお願いしたいくらいです(笑)。

超フラッグシップな大型案件に期待大

――では今度は中野さんから見たM&Aクラウドへの期待を聞かせてください。

中野 まだまだ時代が追いついていないということはあると思うんですね。デマンド・サプライ間のフリクションを減らすために、マケプレがサプライヤーの方にSaaSで降りていくという流れがあると思うんですけど、M&Aクラウドで言うと、ダイレクトなM&Aにおいて買い手と売り手双方の入り口のハードルを下げるような仕掛けというのを、どんどん加速してやっていただきたいと思っています。

プラットフォームに蓄積されたデータに基づいた企業価値の算定だったり、適切なマッチングだったり、そういったことをやりながら、入り口の部分のハードルを下げることがM&Aクラウド主導でできれば、もっと早く環境が変わっていくと思うんです。

あとは、もうちょっと大きめの、超フラッグシップな大型案件。これにM&Aクラウドも絡んでほしいです。そしたらもう完全に第一想起が取れるようになりますよね。もちろん今も取れつつあると思うんですが、より絶対的な第一想起が取れるようになると思うので、そこは頑張ってほしいですね。

及川 そうですね。Paidyみたいな案件を決めたいですね。

中野 そこにM&Aクラウドが間に立って付加価値を出して超大型案件を決めた、というケースができたら最高ですね。

――及川個人に対する中野さんの期待という意味だとどうでしょうか?

中野 ブレずにこのままやっていただきたいなと、もうそれだけですね。本当に埋もれてしまっている潜在的なM&A案件を拾い上げる。そこまで行き切っていただきたいなと思っています。このペインは放っておくと最終的には国難くらいのレベルだと個人的には思っていて、これを解決できたらその社会的意義は、とてつもなく大きいものですから。

及川 頑張ります!!

――いろいろと勉強になりました。今日はどうもありがとうございました。

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投資家対談ラインナップ

11/01 インキュベイトファンド General Partner 本間真彦 氏
11/05 スカイランドベンチャーズ CEO・パートナー 木下慶彦 氏
11/08 STRIVE インベストメントマネージャー 四方智之 氏
11/12 SMBCベンチャーキャピタル 投資営業第一部 中野哲治 氏
11/15 博報堂DYベンチャーズ マネージングパートナー/取締役COO 武田紘典 氏
11/19 MS-Japan 代表取締役社長 有本隆浩 氏、常務取締役 藤江眞之 氏
11/22 NORTH AND SOUTH Founder 北尾昌大 氏、Founder 南坊泰司 氏