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勝手口から家を出る #第5夜

初めましてのみなさまも、おなじみのあなたもこんにちは、MAKIです。


わたしが初めて男のひとを
カラダごと受け入れたのは、
16歳の冬でした。


その頃のわたしは、
同じクラスの武装戦線的な男の子にフラれ
#昔からとにかく不良が好きw


地元の女友達を呼び出して、
国道沿いのファーストフード店に集合して
泣きながらフライドポテトをたくさん食べて
帰り道、自転車を空を仰ぎながら漕いで
同級生のお家が経営している本屋さんを横目に
上を向いて歩こうを口ずさみながらひとり、
瞳いっぱいに涙をためて帰った秋の日。


見かねたとなりのクラスの友人が
紹介したいひとがいる、と
繋いでくれたのが彼でした。

バスケ部のエースでポイントガードで
タイプではないけどモテていたので
わたしも存在は知っていて、
まさかのその彼からのオファーに胸は高鳴り、
失恋をした翌週にはメールのやり取りが始まり
翌月には付き合うことに。

ティーンエイジャーのこのスピード感を
いまではうらやましく懐かしむのです。

バスケの応援に行ったり、
お昼ご飯を新校舎の誰もいない教室で食べたり、
自転車を二人乗りして上級生に冷やかされたり、


校舎の影、芝生の上、
ときには大人に見つかってはいけないこともして

週刊少年ジャンプに連載がありそうな
やたらと女の子が肉感よく描かれる
小中学生がドキドキする漫画みたいな青春を
まごうことなく謳歌していたわたしたちでしたが
その彼は家庭環境が少し複雑で

お母さんと、弟と、
おばあちゃんと暮らしていて、
振り返ってみると
おばあちゃんのお世話に加え
気にかけている弟くんもいたから、
お母さんはきっと
毎日に疲れていらしたのだと思うのです。

お付き合い当初はお家に遊びに行くと歓迎されて
ケーキとかお菓子とか
お部屋に差し入れてくれたりして
とってもいいお母さんだったのだけれど

たぶん
息子を盗られたと思ったのか
はたまたわたしにオンナの色香を感じたからか

少しずつ、厭われ始めて

彼のお家を出禁になった高校1年生の冬。

お母さんがお仕事に行っているあいだに
靴は彼の部屋のベランダまで持って行って
お母さんが帰ってこないか確認して
勝手口から彼の家を出る
そんな逃亡犯のようなお付き合いに
わたしの熱も次第に冷めていき

春休み中はメールも電話もそっけなくして

春休み明け始業式の日、
運良く違うクラスで安心したのもつかの間
朝から校舎の靴箱前で入り待ちされて
芸能記者ばりに張り込まれ、
いまはその話はよそうと振り切り、
帰りのホームルームが終わると同時に
教室の外で出待ちされていて
「まきちゃん、あの子待ってるよ?」と
友人たちも心配してくれて

放課後、
誰もいなくなった教室に彼とふたり、
廊下で友人たちが見守るなか

ごめんね、と伝えるも
泣いて別れを拒否され、
そこをなんとかと宥め、
ハンカチをポケットから取り出し
彼の涙を拭って慰めながら
週刊少年ジャンプのお色気漫画なら男女逆やん!
と自分の行動にこころのなかでつっこんで

好かれると苦しい、
そう思う人生の始まりはこの彼との末路で

醒めたら即終了、の
リアリスト乙女座のわたしなのでした。

それでも、男のひとに対しては
気持ちのどこかで弱さが垣間見えると
元気付けたい、
自信を持たせてあげたい、という
謎の使命感のようなものがあり


冷静に考えれば
烏滸がましさ甚だしいのだけれど

どうか
わたしという存在に
救われてほしい、などと

真剣に、
そう願って、
彼らに接してきたように思うのです。


つづく

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