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それをひとは不倫と呼ぶけれど #第7夜

初めましてのみなさまも、おなじみのあなたもこんにちは、MAKIです。


堪え性のないわたしの
つかの間の結婚生活について、
ふつうの奥さんみたいに
旦那さんを愛して、
旦那さんにだけこころもカラダも開ける、
そんな人生だったらよかったのかもしれないけど


いま思い起こしても
カラダすら開けなかったあの時代は
ほんとうに苦行だったのです。


かつて、ある秋の日、
腐れ縁という表現がぴったりな
十数年来、数年おきに、だいたい半年ほど、
時折とろけるようにカラダを重ねる期間が訪れる
それだけのパートナーだったひとが帰国して
(少しばかり仕事でタイにいたらしい)


オンナであるわたしを
思い出させてくれた夜があって、
カラダが喜んで、
半年余り、
つかの間のオンナに戻れて、


喜んでいたそばから
未曾有のウィルス騒ぎが始まり、
ふつうの奥さんになりたかったわたしは
万が一この情事でウィルスを持ち込んではいけないと思い、あの春から疎遠になって。


3年間の仮免ラストの婚姻生活は雁字搦めのこのご時世で、
でもわたしにはたくさんの友人が出来て
こころはとても満たされたけれど
それと反比例するようにカラダは寂しくて
満たすことはもちろん出来ず

またわたしは誰にもカラダすら求められない
哀れな人妻に舞い戻っていて、


ふと
この不思議な関係だったパートナーとの情事を
振り返っていたのです。

仕事で海外に発つ少し前、
そのひとは結婚をしました。
長身でグラマーで大型バイクを乗り回せるような
クラブで出会ったらしいいかにもイケイケなそのオンナのひとと
結婚式場は20件くらい見学に行って決めたのだと
惚気ていたのもつかの間、

結婚式後、
詳しくは聞いていないけれど
すぐに別居婚の運びとなり、
たぶん離婚調停を経て
婚姻期間は1年あったのかな程度の
なんとなく訳アリな雰囲気で


そりゃあ式場を20件もまわるような
規格外の嫁だから
きっとすべてにおいて
こだわりがとても強かったのだと
同情もするのだけれど

わたしとの何度目かの再会はその調停期間中で
恋心があるわけではない
カラダだけの関係とはいえ、
再会のその年はほぼ毎週末そのひとの部屋へ行き
およそ半年くらいは通っていたので

世間に言わせれば
不倫関係と呼ぶのかもしれないけれど
性衝動以上の気持ちはなくって

なんせ、
そのひとの別居中の家というのが
夜の街の治安は褒められたものでない東京の東側
いかにも小綺麗な独身男性が住んでいそうな
オートロック付きのワンルームマンションで

そこはまるで刑事ドラマの張り込み部屋の如く
ノートパソコンと、煎餅布団と、
引越しのときの段ボールがテーブル代わりにひとつあるだけで
#たしか409号室
#部屋番号的に不人気そう

初めて訪れたときはカーテンすらなくて
おいおい、これでは情事が丸見えではないかと
これまでホテルで会うばかりだったそのひとの
これがほんとうの姿だったのだと
小学校の屋上がよく見える窓辺に射しこむ
そのひとの細く寝心地のよい左腕越しに
朝陽の昇るさまを感じながら
至極残念に思ったものです。
#さすがに翌週にはカーテン付いてた

こんなおもてなしのカケラもない部屋で抱かれて
見窄らしくて誰にも言えなかったけれど
でもそのひとはわたしのよいトコロを
なぜだかいつもちゃんと記憶してくれていて
新しく見つけてくれもして

頭のてっぺんからつま先まで
とろけるどころか
気の狂うような悦楽を
わたしに教えてくれたのもそのひとで

いつだったか、
若かりし頃は時間も忘れて没頭して
ホテルのチェックアウトを5時間も超過して
モーニングコーヒーどころか
さすがにお腹が減ってしまって
ランチを食べて解散したこともあったよなぁと
懐かしく、
カラダの疼きを思い出したりするのです。

つづく

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