「死ぬ準備」

「死んだら葬式するでしょ? するでしょ!」
ええ まぁ します するでしょうね
「立派な 大勢 人が来るような?」
まさかまさか 地味で安くて…そんなんでいいですよ 家族 きょうだい その郎党 少しは友達も来てほしいかな
「ふんふん ならそこそこお金かかっちゃうね」
ああ 200万くらいは覚悟してます
「結局それくらいはかかるだろうね」
なんだかどうでもいいような よくないような
結局葬式なんて生きてる人間 残った人間がやるもんじゃないですか
「ふんふん 死ぬ前に何か書き残しとくのもよいよね」
ああ そうそう デスノートでね
「ぷっ それを言うならエンディングノート!」
ああそうそう それです
まだ書いてないですね それ
「書いといたほうがいいかも ですよ」
そう そうですね もう60過ぎたんだしね
実はこの前 義理の伯母 身寄りのない人なんですが 亡くなって…
彼女もいろいろ書き残してたようで…
「へぇ 例えば?」
彼女 シャンソンとか習ってたらしく そういうのを葬式でかけてほしいってノートに書いてたそうで
「ほぉ ちょっとおしゃれかもね」
そうですね いいかも…ですね
「あなたならどんな曲をかけてもらいたい?」
う~ん なんでしょうね
ロックが好きなんですけど まぁ昔のが
好きだったって言ったほうがよいか
「ほぉ サザンとか?」
いや
「ならB‘zとか」
いやいや 日本の 邦楽はほとんど聞いてこなかったんで
「ふ~ん ま ギンギンガンガンのロックを流すのも違和感ありでしょうから ビートルズあたりのポピュラーなのを見繕って流すとか どうでしょうね?」
はい確かにそうなんですけど
自分の来し方を考えると
風に吹かれて―とか
「はあなるほど ディランですね メロディーはロックっぽくないですけど」
ライク・ア・ローリングストーンとか
「はいはい それもディラン ま 多くの人にわかる曲ではありますね」
うん 自分でも無難すぎる曲かなって…
「無難…ですか」
ええ 他の人が違和感を持たないという曲でしょうから 無難
「死んだあとなんですから そんな必要ないですよ」
…となると何かなあ…
「お好きな曲を ロックでギンギンで」
インスタント・カーマとか
「はい?」
ジョン・レノンですよ
「イマジンなら知ってますが」
そんな平和ソングばかり歌ってたんじゃないですよ 彼は
「ふーん…」
あと同じジョンだと ミート・シティとか コールド・ターキーも面白いかな
「知りません」
同じイギリス人だと イアン・デューリーのヒット曲ヒット・ミー・ウィズ・ユア・リズミスティックなんかも いいな
「……」
キング・クリムゾンの21世紀の精神異常者なんかでもいいですかね
フリージャズみたいに パラパラパラパーッてペットとサックスで盛り上がりきったところで音が切れ そこから一転して静かな曲になるんですよ 風に語りて…が流れる…そんなのがステキだな
「はいはい ま お好きにどうぞ」

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