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「狂伝を読んで」

佐藤泰志という
5度の候補になりながら
芥川賞に手が届かなかった作家
その男の評伝
608ページにも達する大著を読了した
この作家の小説は 1冊も読んでいない
だが
思いを達せられぬまま
1990年東京郊外の植木畑で自死
享年41
この男の悔しさが
この1冊にぎっしり ぎっしり
詰まっているようで やるせない
「狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅」中澤雄大著
ひとりの男が背負い
吐き出せなかった
血の出るような思いが
読み手に伝わり落ちてきて
重かった 切なかった
しかし
佐藤泰志という男は 爪痕をくっきりと残した
自死から30年以上をへて
この世に これ以上ない足跡を 残した
物を書く――
その点で わが身とも
共通するのだけれど
さて
僕はどこに爪痕を残しているのやら

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