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「鉄橋を渡る」

京浜東北線に揺られ 横浜に向かう
向いの席に座る女は
左足首に紺色のサポーターをつけている
1年以上
ひざ痛でサポーターをつける僕は
部位は違うが
同類だ と思った

若い女である 僕から見ると
世の中で働くほとんどの女は若い
50歳だとしても 若い女だ

この女――
アラフォー
そこまでいかないか
とはいえ
三十の坂は越えた感
真っ白な靴を履いている
薄緑色のレース地のスカート
ジャケットを着ており
地味なバッグを手に
どこか営業先に向かうのか

女の首が目に入った
というより
のど
そこに
タテ1センチ ヨコ3センチくらい
赤いあざがある

ほぼ長方形のそれは
人為的につけられたのか
それほど 四角い

何の痕なんだろ

女が目を閉じ こっくりしだした
その赤い四角を
斜め向かい
2メートルほどから
僕は凝視する

昼下がり

東京から横浜へ
乗客もまばらな
京浜東北線の車内に
強烈な加齢臭がする

どこかに
おっちゃんがいるのか

見回すが いない
僕ではないっ! 自分の臭いではないっ!

女の のどが気になるが
僕は席を立ち 隣の車両に行くことにした

その際
女の
まだ寝ている女の
四角い赤色した
ちいさな窓を見た

さっきより赤みが薄れている

なんだろ なんだろ
ピンク色した のどの窓

加齢臭と
おんなの のどの赤色の窓

その車両から隣に移り
僕は席に腰を下ろした

列車は多摩川を渡る

ガタガタッ ガタガタッ

鉄橋が音を刻む

目的地の桜木町も
もうすぐだ

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