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「ぼくの席」

ぼくは 窓口の前を行きつ戻りつしながら
え…と 次の行き先 次に席はありますか
と 担当者に尋ねた
「あります あります」
返答に胸をなでおろした
もう坂を下るばかりのぼくは
いくつかの条件面で妥協は仕方ない
そんなこと そんなこと わかっている
わかっている わかっているよ
ぼくだって
席はある――と言われたので座ってみたんだ

だけど どうにも座り心地がよろしくない
この席 この椅子――
間違っていませんか
「いえいえ これがあなたの席 椅子ですよ 何か問題でも?」
はあ ああ そうか そうか そうね そうね これがぼくの席で 椅子なんですね
「ええ ほかの皆さんも納得されておられると思いますが…」
納得――ああ 皆何を どうやって 心の中で折り合いをつけているのだろう
仲間の誰とも口をきかぬまま
ぼくは 椅子に何度も座りなおした

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