行街-毎月第3月曜日に投稿-

三者三様の小説人たち 毎月第3月曜日に投稿します。

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マガジン

  • コウ和辞典

    正式なコウガイ語の辞典です。 ここだけでしか発行されません。他に出回っているとしたらそれは偽物です。 騙されないようにお気をつけください。

  • 思いついたらつける草

    • 38本

    週刊連載を目指している不定期連載のエッセイになる予定集 三人の作家たちが、思いついたときに小説にするまでもないけど、とりあえず書いておこうかなって思ったら、ゆる〜く書きます。 たまに小説も入っています。

  • 行街 4月号

    • 1本

    泊木 空 「ここは秘密の園 ①」

  • 『行街』3月号

    紫乃羽衣 「pasta di pace ~パスタ ディ パァチェ~」

  • 行街 2月号

    久保田ひかる「◾️りある」

記事一覧

固定された記事

ここは秘密の園 ① 

泊木 空  天国の海には白い雲波が立ち、乗客を乗せた飛行機はシャチのように躍り出る。窓から見える雲波は雨粒を含んで柔らかそうだ。地上よりもぐっと近づいたせいか、…

シェザール(Shezár)

笑いやユーモア、愉快な出来事だけでなく、娯楽やエンターテインメント全般を表す。 喜劇的な演劇や映画、ジョークやユーモアに富んだ会話など、笑いを誘うもの全般を指す…

ライカノン(Lycanon)

物理的な旅だけでなく、精神的な探求、内省、自己発見の旅なども含めた広義の「旅」を意味する。 新たな地を訪れ、その文化や自然に触れることで、自己成長や新たな視点を…

ジュラニル(Juránil)

家庭料理や伝統料理だけでなく、食事に伴う社交やもてなし、食卓を囲んでの会話や団欒も含む。栄養や味だけでなく、家族や友人との絆を深め、コミュニティを築くための重要…

ネプタリア(Nephtaria)

豊穣祭や収穫祭のような伝統的な祝祭だけでなく、地域コミュニティが集う様々なイベントを含む。 音楽、踊り、食事、ゲームなど、人々が楽しむための多彩な催し物が行われ…

クルンダボ

クルンダボ クルンダボとは、コウガイ国南方に存在するとされる架空の洋館及び洋館に住まう怪物の名である。作家久保田ひかる(1998-)によるファンタジー小説『クルンダボ…

『坂の上の思い出』

久保田ひかる  今から大体2年ほど前の話だ。私は当時、関東の北の方に住んでいた。北関東は一部の中心地を除いて、暮らすのに便利な場所とは言い難い。しかしながら、大…

マナウラ

空気中に漂う、見えないエネルギーの波。このエネルギーは特定の場所や時間にのみ感じられるもので、それに触れることで人々は一時的に創造力や感受性が高まるとされている…

アンガムノケ

深い海や暗い宇宙の奥深くに存在するとされる、生物や物質。その正体は誰にもわかっておらず、時々不思議な光や音を発して目撃されることがあるが、具体的な形や性質は謎に…

フィヨラビチョー 

1828〜1874。政治家。ガシャコの生まれ。19世紀コウガイ国に於いて、当時最年少で国家の実権を握るに至った人物であり、コメディアンとしても知られる。彼が主演を務めた映…

ムノイ

神話や伝説に登場する、季節の変わり目や収穫、再生などを祝う祭りや儀式。 慣習や伝統を重んじる集団において、コミュニティの結束を深め、未来への希望や祝福を象徴する…

ルバシム

日常生活の中で起こるささやかな幸せや感動のこと。また、そのことへの感謝も示す。

クフチ

クフチ 自転車の改造を指す。1960年代にコウガイ国の若者たちの間で流行した。左右どちらかのペダルを取り外し、残ったもう一方のペダルを片足で操作して走る。転じて、上…

ネメシス

中世期における被差別民族に対する蔑称であり、近代では動物の内臓を好んで食べる者を指した呼称となっていた。メネシ(Meneshe)地坊のス(=人々)という意味であり、彼らの…

イーミーミー

1)コウガイ国南部に伝わる民間伝承に登場する怪物。獣のような見た目で3本の足を持ち、目を持たず、口は二つあるとされる。夏の夜に一人で屋外を歩いているモノを喰らうと…

『帰り道の思い出』

久保田ひかる  つるりとした白い壁の中に銀色の四角い枠が嵌め込まれて、ガラス窓が外を切り取っている。窓から程近い電灯が光の線を描いて、やや遠くに見えるパチンコ屋…

固定された記事

ここは秘密の園 ① 

泊木 空  天国の海には白い雲波が立ち、乗客を乗せた飛行機はシャチのように躍り出る。窓から見える雲波は雨粒を含んで柔らかそうだ。地上よりもぐっと近づいたせいか、太陽の光は急速に肌を焼くので、上空に出て数十分もしないうちにもうひりひりしている。  俺は窓についた震える雫を指で撫でながら、ここからほんとうに落ちるんだ、と頭の中で呟いた。雫の残した水跡の震えが、泣きながら書いた手紙の文字に似ていて、俺は目を瞑った。 「これから飛行機で上空に上り、富士山よりも高い高度から落下しま

シェザール(Shezár)

笑いやユーモア、愉快な出来事だけでなく、娯楽やエンターテインメント全般を表す。 喜劇的な演劇や映画、ジョークやユーモアに富んだ会話など、笑いを誘うもの全般を指す。 ストレス解消や気分転換、社会的な潤滑油としての役割も持つ。

ライカノン(Lycanon)

物理的な旅だけでなく、精神的な探求、内省、自己発見の旅なども含めた広義の「旅」を意味する。 新たな地を訪れ、その文化や自然に触れることで、自己成長や新たな視点を得る旅を指す。 人生の転機や区切りとなる重要な旅も含まれる。

ジュラニル(Juránil)

家庭料理や伝統料理だけでなく、食事に伴う社交やもてなし、食卓を囲んでの会話や団欒も含む。栄養や味だけでなく、家族や友人との絆を深め、コミュニティを築くための重要な役割を表す。食事にまつわる伝統や儀式も含まれる。

ネプタリア(Nephtaria)

豊穣祭や収穫祭のような伝統的な祝祭だけでなく、地域コミュニティが集う様々なイベントを含む。 音楽、踊り、食事、ゲームなど、人々が楽しむための多彩な催し物が行われる。 感謝や祝賀、団結などの感情が共有され、コミュニティの絆が強められる。

クルンダボ

クルンダボ クルンダボとは、コウガイ国南方に存在するとされる架空の洋館及び洋館に住まう怪物の名である。作家久保田ひかる(1998-)によるファンタジー小説『クルンダボの主人より』にて登場する。豪奢な洋館であるが、館は実際にはヤドカリの貝殻のようなものとされ、ヤドカリの本体にあたる部分が地中に埋まっているとして描写される。

『坂の上の思い出』

久保田ひかる  今から大体2年ほど前の話だ。私は当時、関東の北の方に住んでいた。北関東は一部の中心地を除いて、暮らすのに便利な場所とは言い難い。しかしながら、大人にとっては不便というほどでもない。車にさえ乗れればそれで生きていける程度の地域だ。勿論私も大学を卒業し、地元に帰ってすぐに免許を取得した。車を乗り回して、無職同然のフリーター生活を満喫していた頃だった。  そんな日々の中である。山代先生から電話があった。「自宅の蔵書を整理したいから手伝ってくれないか」私は二つ返事

マナウラ

空気中に漂う、見えないエネルギーの波。このエネルギーは特定の場所や時間にのみ感じられるもので、それに触れることで人々は一時的に創造力や感受性が高まるとされている。また、マナウラは古代の言語で「空のオーラ」という意味も持つ。

アンガムノケ

深い海や暗い宇宙の奥深くに存在するとされる、生物や物質。その正体は誰にもわかっておらず、時々不思議な光や音を発して目撃されることがあるが、具体的な形や性質は謎に包まれている。

フィヨラビチョー 

1828〜1874。政治家。ガシャコの生まれ。19世紀コウガイ国に於いて、当時最年少で国家の実権を握るに至った人物であり、コメディアンとしても知られる。彼が主演を務めた映画「イーミーミーと一晩」はコメディ映画として高い評価を得たが、現在コウガイ国内では閲覧が禁止されている。 42歳で政権を握った後、後年全体主義と呼ばれる政治思想に基づいた治世を行ったが、反発する勢力によって若くして暗殺された。享年46歳。

ムノイ

神話や伝説に登場する、季節の変わり目や収穫、再生などを祝う祭りや儀式。 慣習や伝統を重んじる集団において、コミュニティの結束を深め、未来への希望や祝福を象徴する行事。 文学や詩の中で使われることがあり、時間や空間を超えた絆、失われた記憶、または真実の愛を象徴する用語。

ルバシム

日常生活の中で起こるささやかな幸せや感動のこと。また、そのことへの感謝も示す。

クフチ

クフチ 自転車の改造を指す。1960年代にコウガイ国の若者たちの間で流行した。左右どちらかのペダルを取り外し、残ったもう一方のペダルを片足で操作して走る。転じて、上記のような走法も同様に呼称する。

ネメシス

中世期における被差別民族に対する蔑称であり、近代では動物の内臓を好んで食べる者を指した呼称となっていた。メネシ(Meneshe)地坊のス(=人々)という意味であり、彼らの食文化を貶した意図を含む。現在では、メネシ差別の歴史を踏まえ単語自体がタブーとなっている。

イーミーミー

1)コウガイ国南部に伝わる民間伝承に登場する怪物。獣のような見た目で3本の足を持ち、目を持たず、口は二つあるとされる。夏の夜に一人で屋外を歩いているモノを喰らうと信じられている。「イージービー」や「ミミーミー」などの呼称もある。 2)コウガイ国南部に生息するマナナ(哺乳綱真無盲腸目)を指す幼児語。

『帰り道の思い出』

久保田ひかる  つるりとした白い壁の中に銀色の四角い枠が嵌め込まれて、ガラス窓が外を切り取っている。窓から程近い電灯が光の線を描いて、やや遠くに見えるパチンコ屋の看板は流れるそぶりもなく凝り固まっている。  僕は電車に乗っていた。珍しくイヤホンを忘れてしまった。スマートフォンのバッテリーが空近かった。  田舎を走っていく電車にはほとんど人もいない。向かいの列の端に禿げ上がった仏頂面のおじさんが大きく足を開いていて、逆の端にはやたらと目のきつい女性が長い爪を器用に避けながら