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『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』は映画を愛する全ての人へ向けた優しい作品

現在公開中、チャン・イーモウ監督作『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』を観に行きました。

巨匠チャン・イーモウ監督作品ですが、本作では『HERO』や『LOVERS』で魅せた武闘アクションなどはなく、1969年、文化大革命下の激動の中国を舞台に、映画をめぐる様々な想い、不器用さ、優しさ、時代に翻弄される戸惑いを繊細に描いたヒューマンドラマです。

造反派に抵抗したことで強制労働所送りになった男は、映画の本編前に流れるニュースフィルムに娘の姿が1秒だけ映っていることを知り、強制労働所を脱走し、逃亡者となりながらフィルムを探し続ける。一方、少女もある目的で、映画館に運ばれる缶フィルムを盗み出そうします。

出会うはずがなかった男と孤児の少女(最初は男の子だと思われる)が、ある1本のフィルムをきっかけに、思いがけない方向へ進んでいきます。

広大な砂漠も美しく描かれる

文化大革命時代に映画を観る高揚感

村から村へ運ばれる大切なフィルムですが、道中で落として引きずられてしまい汚れるというハプニングが起こります。このままでは「映画が上映できない!」という非常事態に、何としてでも映画を観たい皆の気持ちが一つになり、フィルムを救出する作業シーンが見どころのひとつです。

このシーンが本当にわくわくしました。
わたしは趣味でフィルム写真を撮っているので、「フィルム」という存在がとても好きです。指紋や傷、水滴の跡もつけてはいけない繊細なモノが、ライトの光を浴びて、うっすらと焼き付けているモノを写し出す。

しかし現在の中国は完全にデジタル化され、フィルム映画は消滅してしまいました。劇中で流れるニュース映画は本作で撮影されたものですが、中国でフィルム現像できる場所がなく、海外で現像を行なったそうです。
また中国ではCGを駆使した大規模資本の商業映画が次々と作られていますが、本作はあえて映画の基本に立ち返ったシンプルなスタイルを心掛けたそうです(パンフレットより)

時代の流れによって淘汰されるモノは必ずでてきますが、やはり寂しさを感じてしまいますね。国立映画アーカイブなど、フィルム映画の保存活動を行なっている機関もあるので、積極的に支援ができればと思う所存です。

1970年ごろの中国を背景にした本作は、監督にとっても「青春時代を思い出」をつなぎ合わせたパーソナルな作品だそう。
フィルム映画の現在にノスタルジーを感じながらも、文化大革命時代に、村の映画館にぎゅうぎゅうに集まり、長いこと楽しみにしていた映画を観るという光景は、監督の優しい「映画愛」をひたすらに感じました。

こんな一体感を持って映画を共有することができたら、本当に素晴らしい事だと思う
パンフレットでは時代背景の解説もあります

▼▼『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』に登場するごはん▼▼

本作ではとっても印象に残るごはんが出てきます。それは「ビャンビャン麺」です!

ビャンビャン麺は、中国・陝西(せんせい)省の西安市一帯で食べられている伝統的な幅広手打ち麺で、麺を台に打ちつける時や延ばす際に「ビャンビャン!」と音がするので、この名前がついたそう。日本ではたびたび、漢字が読めないと話題になる食べ物ですね。

劇中では村にある食堂で、映写技師のファン電影と、男と少女が出会うシーンに登場します。
お腹を空かせた二人に、ファン電影が食べさせるビャンビャン麺。一心不乱に食べる男と、こっそりお弁当箱に入れて持って帰る少女。「ラー油が効いてて美味しい」というセリフもあり、太麺にピリ辛のタレが絡まって本当に美味しそう!男はたっぷり黒酢もかけて食べていました。

チープな器も可愛く見える

セブンイレブンやカルディでもビャンビャン麺が販売されており、わたしもハマってよく食べていました。(セブンは期間限定商品だと思うので、今年の夏も絶対発売してほしい…)

映画ともコラボしている西安麺荘 秦唐記というお店では、オンラインショップでもビャンビャン麺を購入できるそうです。近いうちにお店に行って、本場のビャンビャン麺を食べてみようと思います!

全ての映画を愛する人へ

チャン・イーモウ監督が、映画に向けて書いたラブレターのような作品。温かくもあり、どこか切なさも感じる本作は、『ニュー・シネマ・パラダイス』へのオマージュのように感じられます。全ての映画を愛する人に観てほしい一本です。

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