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人やお店の「見える化」で、歩きたくなるまちづくりを。相模原市みんなのSDGs推進課に聞いたスポット開拓戦略

23年5月からまちのコイン「すもー」の運用が始まった相模原市。神奈川県内では6地域目、人口規模・導入面積共に最大規模での導入地域となりました。

この導入を牽引したのが、20年に設立された相模原市役所みんなのSDGs推進課です。

全国815の市区を対象にした「SDGs先進度調査」ではなんと総合5位と、全国的に見てもSDGs目標達成に向けて積極的な取り組みが評価されています。

今回はCS担当の功刀が、相模原市みんなのSDGs推進課で「すもー」の運用を担当する榎本さん、小原さんにユーザー数やスポット数が増加している理由を深掘りしていきます。



写真左から:(カヤック)功刀悠花、(相模原市)榎本 幸二、小原 渓

<プロフィール>

功刀悠花
面白法人カヤック ちいき資本主義事業部所属。CS担当として相模原市の運営サポートを行っている。
榎本 幸二
相模原市みんなのSDGs推進課 所属。大学卒業後、民間企業での勤務を経て2003年に相模原市役所へ入庁。税務、福祉等の部署を経て、20年のSDGs推進室の立ち上げから同課に配属。
小原 渓
相模原市みんなのSDGs推進課 所属。相模原市が20年に「SDGs未来都市」として選定される前年度に、内閣府地方創生推進事務局に勤務。22年4月からSDGs推進課配属に。

地元の中高生に背中を押された「すもー」導入への道のり

功刀:まちのコインのことを知っていただいたのはいつ頃でしょうか。

榎本:知ったのは神奈川県でまちのコインが「SDGsつながりポイント事業」として始まったタイミングからですね。鎌倉の実証実験が行われていた、2019年ごろでしょうか。

相模原市みんなのSDGs推進課としては、アプリを活用して市民の方への行動変容を促していきたいという方向性は決まっていたタイミングで。いろんなアプリを比較検討していたんです。

ただ、県庁の方からまちのコインについてお話を聞いたときに「自分たちで続けることができるのだろうか…」と尻込みしてしまい、導入には慎重でした。

功刀:まちのコインが単発的な施策ではなく、中長期的に取り組む必要がある点に不安があったんですね。そもそもアプリの導入が決まっていたのはなぜでしょうか?

榎本:日常的に使うスマートフォンをフックにSDGsに対する興味関心を高め、また行動変容につなげたいと考えていたからです。

少しずつ世間的にもSDGsに対する認知は広がっているとは感じますが、やはり「意識が高い人の言葉」というイメージがあるみたいで。

誰にとっても身近な問題であることを、楽しみながら理解・行動につなげる仕組みが必要だと考えていました。

功刀:その後、なぜまちのコインの導入に至ったのでしょうか?

榎本:導入の決め手になったのは地元の中高生たちの声ですね。1回目は、2年くらい前にある高校生から届いたメールでした。「市役所の方に一度お話ししたいことがある」と。

それで話を聞いてみたら「まちのコインを相模原市でも導入してほしい」という要望だったんです。

その翌年には中学生からSDGsの授業を通して市に提案があると言われて、実際に学校まで行きました。そうしたら「まちのコイン」のプレゼンだったんです。

ここまできたら、もう導入するしかないなと(笑)。

功刀:嬉しいエピソードですね! 決してカヤックからの回し者ではないです(笑)。そのあと、導入準備として通貨名を考えるワークショップを実施しましたよね。

榎本:市役所内の全庁掲示板に張り紙して募集したら4、5人想定のところ40人も集まってびっくりしました。

そのとき相模原市は面積も広くて地域によって特徴も異なるので、名前由来の通貨名がいいのではないか、という意見が多く集まって。

その結果、“相撲”と”相模”が似ているからという理由で「すもー」に決定しました。

ただ正直なところ、かなり悩みました。市民の中には、ポジティブに捉えない方もいらっしゃるだろうと。ただまちのコインを楽しんでくれる方はきっと面白がってくれるのではないか、と思い切って決断しましたね。

元々あったつながりも、新たなつながりも。より強固な関係性へ

相模原市役所の正面玄関に設置されている、SDGsモニュメントやまちのコインの「のぼり旗」

功刀:順調にスポット数が増えていますが、どのようにしてスポット開拓を始めたのでしょうか?

小原:まずは相模原市が行っている「さがみはらSDGsパートナー制度」に登録している企業・団体を中心にお声がけしましたね。3年前くらいからの取り組みで、1000者近いパートナーさんがいるんです。

榎本:最近はチラシ持ってお店に直撃してるよね(笑)。

小原:そうですね(笑)。もちろんお店や店員さんの状況も配慮しながら、行けそうなところを見極めて……ですが。

ただ普段から導入用のチラシは持ち歩いているので、飛び込みでお話ししてその場でQRコードを設置していただいて帰ってます。

功刀:スピード勝負ですね(笑)。

榎本:あとは自宅の近くにチェックインスポットがあることがダウンロードのきっかけになると考えているので、点在している公民館や図書館などの公共施設にも置いています。

功刀:私も先日相模原市さんにお伺いしたのですが、まさに生活の動線上にチェックインスポットがあるなと感じました。

ユニークな体験を作っている「NPO法人けやきの会」さんにもお会いできたのですが、すごく楽しんでくださっていて嬉しかったです。

小原:そうですね。事業所を利用されている方にも楽しんでいただいているみたいで、次から次へと新しい体験を作ってくれています。本当にありがたい限りです。

功刀:スポット開拓してみて変わったことはありますか?

小原:やっぱりスポットがある地域はよく足を運ぶようになって、顔を覚えてくださった方から声をかけられるようになりました。それは公務員としても個人的にも嬉しい変化ですね。

「さがみはらSDGsパートナー制度」のパートナーさんとは以前からつながりがあるとはいえ登録数も多いので、皆さんと常に連絡が取れているわけではなかったんです。

まちのコインが始まってから改めて連絡をとるようになって、新たな取り組みにつながっていると思います。新しいつながりづくりだけではなく、既存のつながりがさらに強固になったと感じていますね。

榎本:これまではアプローチができなかった方たちとのつながりも本当に増えましたよね。この新たなつながりを活かして、まちのコイン以外でも連携していきたいです。

この数ヶ月の運用を通して、やはりイベントとの相性がいいということは十分見えてきたなという印象です。実際にまちのコインを目的にきてくれる人もいますし。

8月4日に開催される「橋本七夕まつり」にも出店予定です。イベントでゴミ箱の場所がわかりづらいという声があったので、ゴミ箱スタンプラリーを実施することにしました。

マップに位置情報が表示ができるので、来場者の方に少しでも役に立てばいいなと思っています。

SDGsの目標達成に向けた行動変容を促すという最終ゴールには道半ばですが、まずは登録してもらって楽しんでもらうことを目指していきたいですね。

もっと登録が増えてきたら、そういう仕掛けづくりにも挑戦していこうと考えています。

小原:そうですね。市全体としてのアプローチはまだこれからですが、スポットさんのSDGsに関する認知理解は広げられているのかなと思います。

たとえばまちのコインについて説明するときに「フードロス削減体験」などSDGsに関連した取り組みについてご紹介しているんです。

いろんな企業・団体の方とSDGsについて話す機会が増えたことが、まちのコイン導入後の大きな変化かもしれません。

23年5月に行われたツアー・オブ・ジャパン相模原ステージのまちのコインブース

歩きたくなるまち、開いているまちを目指して

功刀:まちのコインを導入したことで、まちにどんな影響がありそうでしょうか?

小原:「外に出てまちを歩く理由づくり」に役立っているのではないかと考えています。実際にすもーを使っている方からまちを出歩くようになったという声も聞いているので。

最近は既存スポットの位置関係をみながら「お散歩コースの選択肢が広がるように」とチェックインの導線を作っています。

実際にそのコースを楽しんでくれる方がいたらいいなとモチベーションにもつながっていますね。

功刀:歩いている人が増えるだけでもまちのにぎわいづくりにつながりますし、健康促進の意味でもSDGsの目標達成につながることもありますよね。

小原:市役所職員としても、地元の人間としても市内のことはよくわかっているつもりでも知らないことがたくさんあります。

まちのコインをきっかけに「こんなところあったんだ」と気づくことも多いんです。だからこそ様々なお店や団体の方に活用していただきたいですね。

榎本:導入するまで、まちのコインの導入効果は経済価値だと思っていました。集客ツールとして導入される飲食店のスポットさんも多いですし。

だから飲食店ではない企業や団体の拠点に知らない人がたくさんきても困ってしまうのでは、という懸念もあったんです。

でも「NPO法人けやきの会」さんをはじめ、直接関わる機会がなくてもまちのコインを通じて“地域の中の1つの施設として認識される”こと自体が価値のあることだと感じました。

今や何でもオンラインで誰の顔も見ずに完結できる時代じゃないですか。まして地域の知り合いなんて作る機会もないですし。

でも“知らない・関わらない”で終わりにせず、お互いに“いる”存在として安心できるだけでもまちの見え方は変わるのかなと思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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