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証拠説明書の書き方~その5【タイムカード】~

今回のnoteでは、最強の証拠3点セットの一角、タイムカードについて解説していきます。

「タイムカード」という言い方は少し時代遅れかもしれません。昨今は、わざわざ打刻しなければならない煩わしさを解消する、また勤怠を総合的に管理できるようなソフトウェアも存在します。その本質は、従業員の始業時間と終業時間が分単位で明確に記された勤怠記録ということです。

労働基準法第109条で「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない」と定められています。同法第120条では、第109条に違反した者(使用者・雇主)に「30万円以下の罰金」が科せられる罰則もあります。タイムカードなど勤怠記録は「労働関係に関する重要な書類」に相当します。さらに重要なことに、労働時間の客観的な把握を使用者・雇主に義務付ける労働安全衛生法の改正(「第66条の8の3」の追加)が2019年4月1日に施行されています。原則的には、会社にはタイムカードなどの勤怠記録が残されているはずなのです。

雇用契約書は所定就業時間(および、それから休憩時間を除いた所定労働時間)を立証しますが、タイムカードの勤怠記録と照合することによって所定外労働時間(=残業時間)が立証されることになります。

労働基準法で定められた一日の所定労働時間は最大8時間、それを超えた所定外労働時間に対しては割増賃金(残業代)が支払われなければなりません。所定就業時間の始業時間の前に行った業務、および所定就業時間の終業時間の後に行った業務は所定外労働時間(=残業時間)の業務です。タイムカードは、所定就業時間の始業時間の前に何時間何分仕事をしたのか、および所定就業時間の終業時間の後に何時間何分仕事をしたのかを立証することになります。すなわち、タイムカードは、(未払い)残業代を請求するに当たって欠かすことのできない証拠となるわけです。

ちなみに、第20回noteで解説した通り、残業代は残業時間1分単位で請求することができます。ただし「1ヶ月単位の残業時間の合計に限り、1時間未満の端数がある場合、それが30分未満であれば切り捨て、それが30分以上であれば切り上げで計算してもよい」ということになっています。

私自身、労働審判の申立てでは未払い残業代を1分単位で計算し、「時間(丁度60分)」の残業代は「基礎賃金×割増率1.25×所定外労働時間」で算出し、端数の「分(60分未満)」の残業代は「基礎賃金×割増率1.25×(○○分÷60分)」で算出しています。 すなわち、仮にタイムカード上の残業時間が20時間28分だったとすれば、私の残業代は「(基礎賃金×1.25×20時間)+(基礎賃金×1.25×[28分÷60分])」で求められます。

次回も引き続きタイムカードについての説明をしたいと思います。特に、相手方(ないし被告)からタイムカードの証拠としての信頼性に疑義を投げかけられる場合、申立人(ないし原告)がタイムカードを入手することができない場合について解説する予定です。どうかお楽しみに!

街中利公

本noteは、『実録 落ちこぼれビジネスマンのしろうと労働裁判 労働審判編: 訴訟は自分でできる』(街中利公 著、Kindle版、2018年10月)にそって執筆するものです。

免責事項: noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。

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