解雇と退職勧奨はまったく異なる!
第78回noteで解雇には普通解雇と懲戒解雇と整理解雇があることを述べましたが、これから数回のnoteにわたって、会社の都合で「会社を辞める」ケースでの不当な排斥、「解雇」と「退職勧奨」が不当な排斥に当たる具体的なケースについて解説していきたいと思います。
なお、この『本人訴訟で不当な解雇に対抗する』シリーズでは、不当に排斥された方が本人訴訟で「地位確認請求」ないし「損害賠償請求」の労働審判/民事訴訟を起こせるように、労働審判手続申立書/訴状などの書面の書き方までも具体的に説明する予定です。ですが、まずは、その前段階として基本的な枠組みや概念をしっかり理解しておきましょう。それは、地位確認請求事件/損害賠償請求事件の難易度が残業代請求事件と比較すると格段に高い、「会社を辞める」にはさまざまな事情や背景が絡んでいて実際の係争事件にはいくつものパターンが存在するからです。
まず、当たり前のことですが、基本中の基本をおさえておきましょう。それは、「”解雇”と”退職勧奨”はまったく異なる」ということです。インターネットで時々、「退職勧奨に応じなかったから解雇された・・」または「退職勧奨された後に解雇された・・」といったことを目にすることがあります。しかし、こういったことは違法であると考えられます。
繰り返しですが、第78回noteで解説したように、解雇は、必ず普通解雇か懲戒解雇か整理解雇の3つのうちの一つに当てはまります。そして、それぞれに要件があるので、その要件に該当しない場合、雇主(会社)は従業員を解雇することはできません。
もちろん、就業規則の解雇ないし懲戒解雇の条項に「退職勧奨に応じないこと」が解雇事由として定められることなどあり得ません。万が一「退職勧奨に応じないこと」が解雇事由として定められていたとしても、そんな事由は懲戒解雇に相当しないのはもちろんのこと、普通解雇に求められる「客観的合理性 ⋀ 社会的相当性」という労働契約法第16条の定めも満たすはずもないですから(改めて解説予定です)、「退職勧奨に応じなかったから」という理由での解雇は雇主による権利の濫用として法的に無効になると考えられます。そして、退職勧奨をされたとしても、それは勧奨に過ぎませんから、当然に拒絶することができます。
また、「退職勧奨された後に解雇された」ということそのものもあり得ません。仮に退職勧奨された後に会社を辞めるとしても、それは勧奨を受け入れて会社を辞めるということのはず。つまり、合意退職です。当たり前ですが、合意退職と解雇は全然違います。
むしろ、雇主とすれば、従業員に会社を辞めてほしい時、実際には「(法的に)解雇にはできないので退職勧奨をする」ということが多いのではないかと思います。つまり、無理矢理に解雇すれば、それは違法であるし、訴訟になれば敗訴して解雇は無効になってしまうので、退職勧奨に応じてもらって従業員自らの意思で会社を辞めてもらうことにするということ。これであれば、法的には何ら問題はないはずです。第77回noteで説明したように、離職票に「会社都合退職」と記載されて、従業員は会社を辞めた後に粛々とハローワークで雇用保険の失業者給付の手続きを進めるだけです。
ただし、この「退職勧奨に応じてもらって従業員自らの意思で会社を辞めてもらうことにする」のがけっこう曲者。それは、雇主がこのプロセスを悪用するからです。つまり、雇主が従業員を巧みかつ半ば強制的に合意退職に追い込んでいくのです。悪質なブラック企業なら、会社都合退職であるにもかかわらず従業員に「退職届」を書かせて「自己都合退職」にしてしまって、会社を辞めた後の雇用保険の失業者給付が従業員にとって不利になるようなこともあるかもしれません。これが「退職強要」です。退職強要にはいろいろなパターンがありますが、これも追って解説していく予定です。
では、今回はこれで一旦区切ります。引き続き次回、会社の都合で「会社を辞める」ケースでの不当な排斥、特に違法な解雇について解説します。お楽しみに!
街中利公
免責事項: noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。
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