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はしがきとして(筆者のこと)

初めまして、伊東菜々子と申します。
職業はグラフィックデザイナーというのでしょうか。
以前は主に漫画の装丁デザインをする会社に勤めていました。
近頃退職してフリーランスとなりました。

突然ですが……人生の話です

人生が意図しない方向に変わるきっかけは様々あると思うのですが、自分の場合、それは子どもの出産でした。
2人目の子どもが1歳になったタイミングで、ワンオペ育児から逃げるように復職したのですが、それはそれはうまくいきませんでした。
毎週保育園から発熱によるお迎え要請の連絡が入り、病児保育と園を渡り歩き、深夜は仕事部屋と子どもの寝室を往復。
わりとシビアにデザイナー個人の売り上げが明示されてしまう職務内容だったため、面談ではどうしても自分の足りなさを突きつけられ……。
会社はだいぶ融通をきかせてくれ、夫も身を削ってがんばってくれましたが、にっちもさっちもいかない2年間でした。

小さな子どもがいるってのは、常に誰かが上に乗ってるってことなんですね

問題を整理した結果の退職

このまま子どもの成長を待ってジリ貧で耐える、という選択肢もあったかもしれませんが、そちらの道は選びませんでした。
生活に合わせて仕事環境を変えることにしたのです。
具体的に言うと退職して独立し、一番問題になっていた「通勤時間」をカットしてとにかく地域密着型となり、バラバラになってしまっていた「収入」「やりがい」「自分の成長実感」「地域の情報収集(子どもがいるとすごく大事ですね)」などを、まるっとひとつにして自分の仕事の中におさめてしまおうと考えました。

漫画装丁の仕事は大好きでした(元々デザイナーになろうという確固たる意志はなく、漫画が好きだから潜り込んだところがあります)が、子どもができたことによって関心の幅が広がっていきました。
子どもの人生の視野が内在化されたためでしょうか、地域のこと、環境のこと、教育や福祉や今後につながることが気になります。
そういったことに関わりながら自分のできることで貢献できる仕事はなんだろう。
まだ模索中ですが「地域を暮らしよくする」を主眼に働きたいと思い始めました。

初めはポートフォリオにするつもりで

そこでまず自分の営業ツールとして「地域の野菜直売所と果樹園マップ」を作りたいと考えました。
私の住んでいる神奈川県大和市は高密度な市街地ではありますが、畑と果樹園が点在し、そこでは小規模ながら美味しい野菜の直売や季節のフルーツ狩りを楽しむことができます。
そのマップと農家さんのインタビューをまとめたリーフレットを作成し、デザインのポートフォリオとして使いたいと考えたのです。
地域に根ざしたデザイナーとして働くには、土地に根付いた農家さんのことを知るのはぴったりだと思えました。
そして何より自分がその地図を欲しい!
最初に取材をお願いしたのが、自宅から歩いて3分のところにある、私が地域で一番好きな場所「まちなか農園」(仮名)さんでした。

住宅や運送会社に囲まれた場所にぽっかりとひらけた、きれいな畑です

思わぬ問いを得て

しかし、対応してくださった奥様のKさんは「70代の夫婦2人だけでやっている畑だから、今後は縮小していく予定。宣伝になるようなことは困ります」とのこと……。
想像がつきそうなことですが、私はこの場所がなくなることを少しも考えていなかったので、衝撃を受けてしまいました。
そういえばご近所の農家さん、あちらもこちらも年配の方が作業されている。
あと10年もしたら全部とは言わないまでも、大半が戸建やマンションや倉庫に変わってしまうのではないか……。
当然ですが、町の中に畑が点々とできたわけではなく、元々全て畑だった場所にだんだん家が建っていって、いま、侵食完了寸前の状況になっているということなんですね。
思い出したのですが、我が家が建っている場所も3年半前に分譲されるまでは畑だったそうで、庭を作ってくださった方が「土がいい」とおっしゃっていました。
そんないきさつがありながら、わがままにも「この場所がなくなったら嫌だな」という感情が湧いてきました。
そしてたくさんの疑問も降ってきました。
生産緑地という制度も初めて知りました。
でも、部外者が口を出すことでもないと分かっています。
そこで、宣伝になるようなことはしないので、インタビューだけでもさせて欲しいと、無理を承知でお願いしました。
何ができるわけではなくとも、知ることができる範囲で知りたいと思ったのです。

このインタビューが、youtubeチャンネル「まちなか農園-365日-」を制作することになるきっかけとなりました。


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