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「はらぺこあおむし」を読んだことのない大人に、その素晴らしさを伝えさせてほしい

私が大好きな絵本のひとつに「はらぺこあおむし」があるのだけれど、今回この絵本にとても悲しい出来事が起こってしまった。


この風刺画に対する抗議は、偕成社の社長である今村氏のおっしゃる通りだと思うけれど(素晴らしい抗議文だと思った)、

https://www.kaiseisha.co.jp/news/28125

その後buzzfeedからの取材に回答した毎日新聞のコメントを見て、やっぱり今回の関係者の皆さんは、この作品の魅力に気づかれてないのかな?と思ってしまった。

「掲載した風刺漫画は肥大化するIOCに対する皮肉を表現した作品です。今回のご指摘を真摯に受け止め、今後の紙面作りに生かしてまいります」


シンプルで美しいこの絵本が大好きで、この絵本を楽しんでいる子どもと彼らの世界の素晴らしさを日々感じている身としては、この絵本を「食べまくる物語」と表現してしまうことは本当にもったいないと思う。

なので、野暮だと思うし誰にも求められていないけれども、この本と子どもの世界がどんなに素晴らしいのか叫んでおきます。


はらぺこあおむしは、食べること・経験すること・成長すること=生きることの素晴らしさを究極にシンプルに描いたお話

まず、子どもにとって食べることは「生きること」だ。子どもが食べているときって本当に真剣で、彼らはその食べものから味や香りはもちろん、手触り、色、音やもっと色々なことを掴み取っている。

彼らにとって「食べること」は大仕事で、頑張って食べようとしているその姿は「肥大化」などという言葉とは全く無縁だ。そしてその根底には、今村氏がおっしゃるように、純粋な「成長したい」という本能が輝いていると思う。


そして「ちっぽけなあおむし」が色々な食べものを食べていく姿には、栄養を摂って大きくなっていくことだけではなく、あたらしいものに出会い、それを経験して自分の中に取り込んでいくことも重ねられている。

げつようび、りんごをひとつみつけて食べてみた。

かようび、なしを食べてみよう。昨日はひとつ食べたけど、今日はふたつ食べてみようかな。

すいようび、今度はすももを食べてみよう...。

あたらしいものを自分に取り入れていくことがどれだけの冒険か、昨日の自分よりもう少しだけ頑張ってみることが、どれだけ素晴らしくて困難なことか。


そうやっていろんなものをいっぱい、どんどん食べたあおむしはお腹が痛くなってしまう(「そのばん あおむしは おなかが いたくて なきました」)。私はこの一文が本当に大好き。頑張って、頑張ってるんだけど、時に困難にぶつかって、一生懸命泣いている子どもの姿が勝手に重なってしまう。

その後、自分の中に取り込んだたくさんの栄養、たくさんの経験を「さなぎに なって なんにちも ねむり」ながら本当に自分のものにして、あおむしは

「それから さなぎの かわを ぬいで でてくるのです」。


短い、シンプルな繰り返しで表現されるおはなしを通して、あおむしが一生懸命生きて、「きれいな ちょう」になる姿は本当に美しい。子どもができて、子どもにこの話を読み聞かせるようになって、本当に感動した。なんてすごい絵本なんだろうって。


ということで勝手に熱く書いたけれど、結論としては、私は「はらぺこあおむし」が大好きということです。

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