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メキシコはお隣さん。        カリフォルニアのラティーノ文化

今日は、アメリカ時間で5月5日。5月5日は、日本では「こどもの日」ですが、メキシコでは「シンコ・デ・マィヨ(Cinco de Mayo)」という、祝日になります。「シンコ・デ・マィヨ (Cinco de Mayo)」というのは、スペイン語で、ズバリ5月5日という意味で、昔の戦争でメキシコ軍が奇跡的にフランス軍を撃退した日なのだとか。カリフォルニア州の南側のお隣さんはメキシコです。よって、カリフォルニアには、メキシコをはじめとする南米からの移民が多く暮らしています。ということもあり、メキシコの祝日であるにもかかわらず、「5月5日はシンコ・デ・マィヨ」という雰囲気が、ここカリフォルニアにもあるのです。私にとって、今働いているベーカリーがアメリカで3店舗目のお店になりますが、どのお店でもメキシコ人をはじめ、コロンビア、グアテマラ、エルサルバドルなど、南米の国出身のラティーノの仲間とも一緒に働いてきました。今のお店では、ケーキデコレーターふたりがメキシコ出身で、ボスのひとりがグアテマラ出身です。前のお店では、ディッシュウォッシャー(お皿洗い)やキッチンスタッフに多かったかな。ブラジルを除いて(ブラジルはポルトガル語ね)、南米国の母国語はスペイン語です。よって、スペイン語の会話も自然と身近に存在し、あいさつ程度でも覚えていると喜んでもらえるし、コミュニケーションの潤滑油にもなります。私が覚えたスペイン語を紹介しましょう。まずは定番の「¡Hola!(オラ!)」。英語の「Hello」にあたるものです。「¡Hola!(オラ!)」と言われたら「¡Hola!(オラ!)」と返します。それで、つかみはOK。「¡Hola!(オラ!)」に続くのが、英語の「How are you?」にあたる「¿Cómo estás?(コモ エスタス?)」というもの。いわゆる、「元気?」「調子はどう?」みたいな感じですね。これに答えるのは「Bien (ビエン)」。英語の「Good」と同じで、日本語なら「元気です」って言う感じ。更に、これにちょっと付け足して「Muy bien(ムイ ビエン)」というと、「Very good (とても元気です)」になります。「Myu (ムイ)」が「Very (とても)」という強調語ですね。そういえば「Bad」にあたるスペイン語は知らないなぁ(笑)。「¿Cómo estás?(コモ エスタス?)」と聞かれたら、なんであれ「Bien (ビエン)」または「Muy bien (ムイ ビエン)」と答えます。他には、知られたところで「ありがとう」は「Gracias(グラシアス)」。「はい (Yes)」は「Sí (シィ)」。英語で何か聞かれたときでも「Yes」の代わりに「Sí (シィ)」と答えるとポイントが高い(笑)。ところで、「No (いいえ)」はなんて言うんだろう? 他にも「ちょっとだけ」は「Poquito (ポキト)」、「No more (これ以上はない)」は「No más (ノマス)」、「熱い (Hot)」は「Caliente (カリアンテ)」。キッチンやベーカリーでよく登場する言葉です。面白いのが「Hasta Manana(アスタマニャーナ)」。これ、スペイン語で「また明日!」ということなのですが、日本語的に日本語の感覚で「アシタマニアーニャ」と言って普通に通じますよ。前に一緒に働いていたアメリカ人の女の子は、周りがほとんどラティーノの同僚だったことがあって、しゃべることはできないけど、スペイン語の会話もだいたい何を言っているのか分かるようになったと言っていました。アメリカでは第二言語としてスペイン語を学ぶようではありますが、それでもすごいですね。私は、ときどき「今のどういう意味?」とか「スペイン語で〇〇は何て言うの?」と聞くことはあるものの、そのレベルには程遠いです。でも、多言語に触れたり、生きた会話を学ぶことができるチャンスがあるのはいいものです。使おうと思えば使う機会がある、と思えば勉強するきっかけにもなります。私のことを「チンツー」と呼ぶ(私の名前は麻千子。彼女は、麻 千子だと思っているようで、千子を中国語読みするとチンツーとなるみたい)、キッチンで働くおばちゃんとお寿司コーナーで働くマカオ生まれのおばちゃん(同じく私を「チンツー」と呼ぶ)の母国語は中国語。仲良くしてもらっているふたりなので、覚えた中国語で挨拶したり、新しい中国語を教えてもらったりもしています。逆に日本語に興味がある子は、私に「Ohayo-」と声をかけてくれます。何気ないことですが、お互いがハッピーになる裏ワザですね。

私のアメリカ生活はカリフォルニアのみなので、てっきり「そういうもの」なのかと思っていましたが、メキシコ人のおっちゃんがやっているような「Taco truck (タコスのフードカー)」や、メキシコ料理店の多さは、カリフォルニアならではもののようです。駐車場とか道端に突如として出没するTaco truckは、見るたびに「おいしそうだなぁ」と興味はそそられるものの、あまりにもメキシコ感が強く、実は未トライ。集まるお客さんも、工事現場のメキシカンのおっちゃんたちが多いイメージで、そこに入っていくには少し勇気が必要です。でも、いかにも本場っぽいし、安そうだし、おいしそう。いつかいい機会が巡ってくることを待ちたいと思います。そんな私でも、メキシコ人が経営するメキシカンレストランには行けますよ。とは言っても、多くの場合、旦那さんと一緒ですが。チェーン店ではなく、個人経営のお店がやっぱりおいしいです。私がいつも食べるのはTaco(タコ)。このTaco(タコ)ですが、日本だと、なぜか「タコス」となるようで(笑)。単数形はTaco(タコ)で、複数系がTacos(タコス)。One taco, two tacos。ま、それはいいとして。Tacoを注文するときは、まずはソフトかハードを選択します。お皿となるトルティーヤの種類ですね。私はパリパリタイプではなく、ソフトタイプ派。続いて、メインのプロテインを選択。チキン、ビーフ、シュリンプなど。あとは、玉ねぎのみじん切り、コリアンダーなどを乗せてもいいかと聞かれるので「ぜひお願いします」となって、オーダー終了。旦那さんのお気に入りはBurrito(ブリトー)です。大きめのトルティーヤで具材が巻かれたボリューミーなものですね。こちらも、プロテイン、豆のタイプ、ライスのタイプなどを選択できることがほとんどです。メキシコ料理って、基本の材料はトルティーヤに豆、米、サルサ、アボカド、チーズにプロテイン(肉とか海老)。それを巻くか、乗せるか、混ぜるか、または乗せて焼くか、挟んで焼くか…みたいに、組合せでメニューが構成されているような… と、失礼にもそんなふうに思っていたのですが、ある時、旦那さんと行ったメキシカンレストランで、こんなことがありました。いつも通り、私はタコを、旦那さんはブリトーをオーダーし、待ち時間に他の人たちは何を食べているのかなぁ、と見渡してみると、どういうことか、それはそれは大勢のお客さんが、真っ赤なスープに入った麺を食べているのです。まるでラーメン。もしかして、これがこのお店の名物メニュー?! 旦那さんにみんなが食べているのは何なのかと聞いてみると、メニューを見てきてごらん、と言われ、改めてメニューを観察すると、ありました、Noodle部門が! 名前はMenudo(メヌード)となっています。早速ググってみると、牛の胃袋を煮込んだピリ辛スープのことらしいです。詳しくは翌日、職場のラティーノの同僚に聞いてみることに。私の話を聞いたグアテマラ出身のボスが最初に口にしたのは「それって週末だった?」。はい、確かにその通り。サンクスギビング明けの週末だったはず。というのも、彼の話によると、テキーラをたらふく飲んだ後に食べるのが、Menudo(メヌード)なのだそうです。私が目にしたのは、お休みにテキーラでパーティーをして、二日酔いとなった翌日の典型的な光景だったのだ、と笑いながら話してくれました。食べたことがない、と言うと、メキシコ人のケーキデコレーターのおばちゃんが、今度作ったときにマチコにも持ってきてあげるね、ということに。ラッキー!あれから随分と日が経ってはいますが、楽しみに待ってまーす♪

最後に、もうひとつ。私がベイエリアのベーカリーで働いていた当時、そこのお店のディッシュウォッシャーは、ほぼ全員がメキシコ人でした。とにかく陽気でフレンドリー、そして働き者のディッシュウォッシャーチーム。そして、そのベイエリアのお店といえば、一緒に働いていたのが、ぶちこちゃん。ぶちこちゃんは、お店の新規開店のために選りすぐられた経験豊富な日本人の女の子。とにかく小柄(笑)。150㎝未満。日本から来たばかりで、決して英語が得意ということはありませんでしたが、持ち前の素直さ、笑顔、好奇心、そしてコミュニケーション力で、どんなスタッフとも仲良しだったぶちこちゃん。ディッシュウォッシャーチームからも人気があって、いつの日からか「ジャパリータ」と呼ばれるようになっていました。ぶちこちゃん本人も、そして私も、漠然と「ジャパリータ」の「ジャパ」は「ジャパン」からきているのかなと思っていたところがあり、深く理由を聞くこともなく馴染んでいた呼び名でした。ところが、ある日、ぶちこちゃんが「昨日、スタバでこんなことがあったんです!」という話をしてくれました。なんでも、スタバで注文を済ませ、商品が出てくるのをボォ~っと待っていたら、白人の男性が「Excuse me, ジャパリータ」といって、ぶちこちゃんの横を通り過ぎていったというのです。ぶちこちゃんは「え~っ?なんで私のニックネームを知っているの~?」とびっくり。確かにこれは不思議、と改めて調べてみると、ジャパリータというのは「Chaparrita (チャパリータ)」というスペイン語で、小柄な女性を呼ぶときに使われるそうです。要は、ぶちこちゃんがスタバで出会った白人のお兄さんは「ちょっと通してくださいね、そこの小さなお嬢さん」と言っていたのですね。納得。ちなみに、小柄な男性に対しては「Chaparrito (チャパリート)」となるのですが、基本的に男性が小柄と言われて嬉しくはないので、あまり気やすく使わない方がよさそうです。前に働いていたベーカリーで、メキシコ人のキッチンスタッフのおばちゃんが、小柄なメキシコ人のディッシュウォッシャー君をニコニコして「ジャパリート」と呼んでいるのを聞いたことがあります。仲良しのふたりでしたので、愛をこめて「小っこい君」といったところのようですね。

同じように、以前、今のお店のパンチームにいた白人の男の子には「Flaco (フラコ)」というニックネームがありました。 私は、しばらくたってから、Flaco (フラコ)が彼のファーストネームでもなければ、ミドルネームでもないことに気づき、なんで?と聞いてみると、Flaco (フラコ)というのは、スペイン語で「やせっぽち」という意味なのだそう。確かに、その19歳の彼は、細身の長身。アメリカにおいては、少々痩せすぎといったところなのでしょう。背が高くて、ほっそりやせ型、優しい顔だちに金髪のロン毛。更に、素直で優しい。日本だったら、さぞかしモテることでしょう。なんでも、彼が住んでいるアパートのラティーノの住人たちが、彼のことをFlaco (フラコ)と呼ぶようになり、それが職場にも広まったようです。ジャパリートと同じく、男性に対して「やせっぽっち」というのも、親しみがこめられていないと使えないものですが、それだけ彼が愛されキャラだったということです。納得。

もちろん個人差はありますが、気さくで大らかで、とにかく明るいのがラティーノの印象。アメリカでありながら、メキシコをはじめとする、南米の人々、食べ物、文化、習慣、考え方、言葉を肌で感じることができるのは、カリフォルニア生活の醍醐味のひとつなのかもしれませんね。

そういえば、日本にいる頃、突然、後ろから「Excuse me」と外国人の男性に呼び止められ「道を聞かれるのかな?」と思って立ち止まったら、カタコトの日本語で「ナンベイノヒト?ナンベイノヒト?」って言われたっけな。今でも不思議。今となっては顔もよく覚えていないけれど、あのときの男性は南米の人で「仲間がいた!」と嬉しくなって、つい呼び止めてしまったのでしょうか(笑)。その気持ち、今なら少し、分かります。


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