【レポート】物件・住居、居場所からはじまる若者の困難に寄り添う取り組みの現在とこれから〜休眠預金活用事業 助成団体による事業報告シンポジウム〜
2024年2月18日、京都経済センターで「物件・住居、居場所からはじまる若者の困難に寄り添う取り組みの現在とこれから〜休眠預金活用事業 助成団体による事業報告シンポジウム〜」が開催されました。お申込みは対面、オンラインをあわせて120名近く、多くの方に関心を寄せて頂いたことに大変感謝です。
本シンポジウムは23年度、まちとしごと総合研究所が実施した休眠預金を活用した助成を受け、社会的、経済的困難を抱える若者たちに向けた支援活動を行った、京都の様々な団体が休眠預金を活用し、実施したプロジェクトの成果を共有する場です。
特に、居住支援や居場所の提供を通じて若者の自立を促すことを目的とした取り組みが紹介され、参加者の皆さんから深い学びのリアクションをいただきました。内容を抜粋して報告いたします。
NPO法人サンカクシャ 荒井代表からの実践報告
代表の荒井さんからはサンカクシャで展開されているシェルター事業の実践について報告をいただきました。
若者にとっては一般的な支援や行政情報が複雑でアクセスしにくいことや、過去の経験から公的支援を避ける傾向にあり、不安定な雇用や貧困ビジネスに巻き込まれやすい状況にあるという荒井さん。
若者たちが社会において自立し、活躍できるようにするために、住まいの提供、生活保護の相談、そして企業との連携を通じた就労支援など、複合的なアプローチで支援を行っていることが伝えられました。
さらに単に物理的な支援だけではなく、若者に寄り添い、時には「バンジージャンプを飛んでみること」や「恋愛の相談にのる」というような「アソビ」の要素が自己肯定感を高めることがあるなど、サンカクシャがつくる場の空気感が伝わってくるようなプレゼンテーションでした。
サンカクシャのチャレンジからは、若者たちが抱える様々な問題に対して、一時的な支援に留まらず、自立に向けた長期的な視点での支援がデザインされています。
助成をうけた団体からの実践報告
今回の助成をうけて実践いただいた4団体から、取り組みについての報告をいただきました。各団体の実践からは、困難を抱えた若者が時に自傷行為に走ってしまう様子や、これまで「普通」とされていたことが揺らぐような様子もみられました。
京都市南区を拠点に活動するNPO法人happinessの慶山さんからは、これまでも取り組まれてきた子ども食堂、コミュニティカフェの運営に加え、今回の助成を活用して物件を購入し少女たちが安全に過ごすことができる「ハピネスハウス」の運営について報告されました。
京都市ユースサービス協会の大下さんからは、若者が社会との接点を持ち、自分らしく過ごせる場を増やしていくため、キッチンカーを活用した移動型ユースセンターや、公営住宅の改装した若者向けスペースの提供、食を通じた若者支援ネットワークづくりが実践されたことが報告されました。
NPO法人コミュニティスペースsaculaの牛田さんからは、コミュニティカフェを通じた居場所の提供と就労サポート事業について語られました。下京区の「すずなりランタン」を舞台に、若者が求める「役割」の提供に重点を置き、自己肯定感の向上と孤立感の軽減を目指しています。
一般社団法人merry atticの上田さん、富山さんからは、若年層のシングルマザーを支援として、独立型子どもショートステイの運営や、親子の分離を伴う宿泊支援、保護者を対象とした雑談支援など、育児疲れの解消や孤立感を減少させる取り組みについて報告されました。助成事業期間は2月末までとなり、シンポジウム開催時点では残りわずかとなります。最後まで若者に寄り添った支援が行われることが期待されています。
各実践報告パネルディスカッション
NPO法人山科醍醐こどものひろば 前理事長 村井さんにコーディネートをいただき、登壇者等や参加者のみなさんからの質問を取りまとめながら、ディスカッションを行いました。
前半は「発表を聞いてサンカクシャに聞いてみたくなったこと」をテーマにパネルディスカッションを行いました。
発表頂いた荒井さんからは京都の発表団体の取り組みについて「発表団体の取り組みから刺激を受けた。自分たちも検討していた議論もあり、情報交換を今後もしていきたい。」というコメントをいただきました。サンカクシャの現場を担う早川さんから「まちの方、行政の方とは団体として関わるのはもちろんだが、そこに住む一市民としての関わりや、力を抜いたコミュニケーションをとることも重要」と、支援の文脈だけでなくシェルター近隣の方々と若者との間にたつコミュニケーションが語られました。登壇者である竹田さん(京都市ユースサービス協会)からは「荒井さん早川さんたちがこれだけの関わりを続けられる熱量はどこからくる?」など登壇者の発表を深堀りする問いかけがされました。
後半は前田さん(京都市都市計画局住宅室長)、吉田さん(株式会社 フラットエージェンシー代表取締役)から、「公営住宅や民間物件を取り扱う立場から、これからの若者支援と物件の利活用」についてディスカッションが行われました。
「若者をどう定義していくのか、ワーキングプアやひきこもりなどの問題もそうだったが、新しい課題に対してどのように整理していけばいいのか、議論が必要。」という声や、「物件オーナーの安心が重要。NPO等の取り組みに対してどう借りやすくしていけるのか。不動産事業者がNPO等と連携して、オーナーの理解を促進していけるかが重要」という声をいただきました。
これからの若者支援と物件・居場所の利活用に向けて
むすびでは、まちとしごと総合研究所 三木より会場へのあいさつが行われました。
「京都で今実際に困難に直面している若者がおり、一方で希望を抱いて京都に進学したり子育てや仕事に来ている若者もいます。それらの若者が地域で育まれていくよう、若者を支援する事業者と、物件利活用に携わる事業者、若者の力を求めている事業者とのネットワークづくりに、まちとしごと総研としても取り組んでいきたい」という思いが語られました。
今回ご参加頂いたみなさんと課題を共有し、連携が生まれていくためのキックオフのような時間になりました。