見出し画像

「また会いましたね。」とつい声をかけたくなる絵が1枚、2枚と。

はじめに ~再会の再開~

新型コロナウイルス感染症による外出自粛期間が緩和され、久しぶりの美術鑑賞です。

島根県立美術館で開催されている「日本美術の巨匠たち」。
会期:2020年6月1日(月)~7月5日(日)

この企画展の鑑賞レポートはまた後日書くとして、今日は合わせて観たコレクション展のことを少し書きます。
こちらは2階のフロアを5つの部屋に分けて、ジャンル別に展示されています。その中の西洋画の部屋、この日は「樹のある風景」というテーマで飾られていました。
そこで目にとまった絵が、ポール・ゴーギャンの《水飼い場》です。
ゴーギャンの作品の中では代表作にあげられる絵ではありません。描かれた時期は1886年で、ゴーギャンがファン・ゴッホとアルルでの共同生活をはじめる1888年の前、つまりタヒチに滞在するぜんぜん前のことです。
この絵には、全体的に印象派に寄っている作風を感じます。
(1886年5月には第8回印象派展が開催され、ゴーギャンも出品しています。)

実はこの絵、実物を観たのは2回目です。
展示室の部屋で目の前に立ったとき、「あれ、これはどこかでみたことがあるぞ」。
しかし、どこで、どの展覧会で見たのか思い出せずに家に帰りました。
そして、真っ先に自宅の図録の棚から1冊、2冊と抜き出してはページをめくります。すると、2020年1月に上野の森美術館で開催された「ゴッホ展」の図録のなかに同じ絵を見つけました。

「ゴッホ展」はその後、兵庫県立美術館へ巡回されるのですが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため会期途中で残念ながら中止となってしまいました。
この世に1枚しか存在しない絵を、日時を異にして別の場所で観るという体験は絵画鑑賞ならではの楽しみです。
長い旅から戻ってきたゴーギャンの《水飼い場》。
次はいつどこに向かうのでしょうか。
3回目の再会を期待しつつ、美術活動の再開のいい1日になりました。

本日のディスクリプション。

お題《水飼い場》ポール・ゴーギャン

川か池かは分からないが、牛が水を飲んで休んでいる風景が描かれている。絵のほぼ中央に一頭の黒い牛。そのやや左側後方にもう一頭。
画面右手には枠の途中で切れてしまうほどの高さまで成長している木々が描かれ、その木立の背景になるように赤い屋根を持つ家屋がひとつ建っている。窓や扉も描かれていないためか、牛舎にしては立派に見えるが何の建物かは分からない。画面の左側には男性と思しき人物が一人、中央の牛の背を眺めている。彼は水面の上に設けられた木製の素朴な踊り場のような板状におり、手すり両手をおいてくつろいでいる。果たして、彼が牛の飼い主なのであろうか。

※ディスクリプションとは、作品の様態を言葉に変換する作業。作品の記述。

正解のひとつとして。

 1885年の夏、ノルマンディー地方の港町ディエップを訪れたゴーギャンは、数ヶ月滞在して海岸や農村の風景を見て回った。本作は、近郊を流れるサアーヌ川の情景を主題にした数点のうちの1点で、穏やかな浅瀬で寛ぐ2頭の牛とそれを見守る男の姿を描いている。川面に揺らめく光の反映や短いストロークによる右の木立など、この時期のゴーギャンの作品を特徴づけるピサロら印象派の画家たちからの影響が随所に認められる。一方、背景のひときわ大きな面積を占める赤い屋根の建物などに後年の作品に顕著な色面処理の兆候を見ることもできる。この過渡期を経たゴーギャンは、ブルターニュ地方のポン=タヴァンを訪れて新たな様式を追求、印象派を脱却して独自の象徴主義的作風を発展させていく。
 後年、5歳年下のファン・ゴッホは、ゴーギャンと一時期アルルで同居、わずか2ヶ月の共同生活で衝突を繰り返しながら多大な精神的影響を受けることになる。
※「ゴッホ展」(2019-2020)図録の作品解説より引用。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

お立ち寄りありがとうございます。頂戴したサポートはアート活動を深めるために使わせていただきます。