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お金では買えない何か。

スーパーで野菜を買う。

この野菜を誰が作ったか、ほとんどの場合知るよしもありません。さらに言えば、そこに興味すら持たないことのほうが多いかもしれません。

きっと、これでいいのだと思います。誰が作ったのか、どういうおもいで作ったのか、あれこれ考えてもめんどくさいし、であれば何も考えず買ったほうが気楽かなと。つまり、お金で解決したほうが楽だと。


一方で、ぼくは、ちょっとひねくれてます。

確かにお金で解決したいことは少なくないです。でも解決したくないこともいくつかあるのです。例えば、食べるもの、仕事、仲間のこととか。


だからこそ思うのです。

お金で買えない何か、がきっとあるのではと。

では、その正体は何でしょう。ずっと考えていますが答えが出ません。さしあたり、暫定的に「やさしさ」と呼ぶことにしています。


話は再び野菜に。

自分で作った野菜がやたらに美味しいと感じる経験は、誰にでもあると思います。

また、よく知っている、とても信頼している方が作った野菜にも、安心感となんともいえない美味しさを感じる経験も、やはり誰にでもあると思います。

もしかすると、科学的な分析ではスーパーで購入する野菜と何ら変わらないとしても、なぜか美味しく感じる。何かがあるんですよね、お金で買えない何かが。


今、ぼくが代表をつとめるなないろ未来財団で、「なないろ通貨」という地域通貨の実証実験をしています。一切のプレミアがつかない通貨。とすれば顧客はこの通貨を使う価値がどこにあるのか。なないろであっても円であっても等価であれば、あえて交換して使う価値などないと思いませんか?全くそのとおりで、価値を見いだせない人にとっては何の意味がない通貨です。

でも、ぼくは、お金では買えない何かが循環する仕組みを作りたいと思って、この通貨を構想し実証実験をしています。

今、ぼくらの診療所では、受診患者さんに「200なないろ」をお渡ししています。外来にわざわざ来てくださったという労をねぎらって。診療所でも使えますし、併設するきっちんでも使えます。

先日、こういうやりとりがありました。
200なないろを馴染みの患者さんにお渡ししたら、その方が、「では、あなた(受付スタッフ)にコーヒーをごちそうしますよ、そちらのカフェでね」と。このやりとりに、お金では買えない何かが循環しているような気がしませんか?


その他、財団でこんな取り組みもしています。有償ボランティア制度。登録している方が、好きなときにきて、好きなことをやるというもの。お礼に2時間で1000なないろをお渡ししています。お金だけが欲しいならば他のパートをされればいいと思うのですが、そうではないんですね。ぼくらも、そういうボランティアさんの姿をみて幸せな気分になります。


そして、今回、こういう実証実験を考えました。

5年目に入る農園運営について。これまで過去4年間は自社農園としていわゆる仕事(業務)の一環としてやってきました。それを、5年目の今シーズンは仕事ではなく活動としてやってみたいなと。労働でも仕事でもなく、活動として。
(全く詳しくないのですが、このあたりの解釈はハンナ・アーレントの「人間の条件」を参考にしています)


まだイメージですが、こんな感じ。
農園のネーミングはなないろ農園に。運営主体をなないろ未来財団として、農園メンバーを募ります。メンバーには財団の会員になっていただいたうえで、出資金をその人の範囲内で出していただきます。出資金の半分は農園の野菜をお渡し。4割は経費、1割を障がい者施設などに寄付(農園の恵みを)。


メンバーは、できる範囲で、できることを、無理なく楽しくやります。出資するだけでもよし、ちょこっと農園で野良仕事をしてもよし、その場合は有償ボランティアとしてなないろ通貨をお渡し。ボランティアもいろいろあり。直接土をいじってもいいし、農作物を洗ったり、運んだり、箱に詰めたり、調理してメンバーに振る舞ったり、写真を撮って記録に残したり。

これって、小さなコミュニティーというか、小さな互助の世界だと思うのです。農業って、農家さんが頑張って作って、たいていどこかの誰かに購入されます。一般的には顔と顔が見えない関係性で、お金が仲介し、お金で解決されます。このあり方はを否定するものではありません。よくある市場経済ですので。なないろ農園はあえて違う手法を。顔と顔がみえる関係性(互助メンバー)に限定し、農作物は外にはあえて出さない。メンバーの中だけで共有する。「●●さんが水やりした野菜はおいしいなー」「○○さんが種まいた野菜はおいしいな」などいろいろメンバー同士で語り合いながら。

閉鎖的といえば閉鎖的かもしれません。でも、繰り返しますが、この互助の中で作られていく関係性だったり、野菜だったりに、お金では買えない何かがすごく詰まっているような気がしてならないのです。


お金では買えない何か。

さらに探ってみたいと思います。


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