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新卒の面接対策で一番大切なこと【その1】「想い」だけでは足りない。

採用担当になる前のエンジニア時代から、新卒採用でコンピテンシー面接を4年くらい続けてきた僕が、今なおブラッシュアップし続けている面接の手法、準備や対策、数百名の学生との面接を通じて感じた点などを通じて、学生の皆さんに就活をよりよいものにしてほしい気持ちよ届け!な連載記事第一弾です。

本連載の内容と想定読者について

21卒の採用活動も大詰めを迎えた学生の皆さんも多いのではないでしょうか。22卒インターンシップなどもすでに動き始めています。社会情勢が大きく変化していく中、どうやって自分のファーストキャリアをスタートさせようか悩んでいる方はたくさんいらっしゃるかと思います。

実際の選考として個別面接を数多く経験されている学生の皆さんは多いと思いますが、今回はそのなかでもコンピテンシーを選考基準とする「コンピテンシー面接」についての概要、具体的な手法についてお話したいと思います。連載後半ではより踏み込んだ面接への準備や、対策などにもついてもお伝えする予定です。

今回の連載は、21卒22卒の就職活動真っ只中の学生の方はもちろん、先輩たちから就職活動についていろいろ情報インプットを受け始めた大学1~3年生も対象としています。新卒採用でコンピテンシー面接を実施している、または実施しようとしている企業の採用担当の方にもすこしお役に立てるかもしれません。

※この連載記事は全部で【その3】まで執筆予定です

コンピテンシー面接とは

「コンピテンシー面接」という言葉を目にしたことがある方も最近増えているかと思います。「ガクチカ(学生時代に力をいれたこと)」を聞かれるから過去の掘り下げが必要だ、と認識している方はけっこう多いのではないでしょうか?
これについてまだまだ認識が足りない部分もあるので簡単にまとめると、コンピテンシー面接は以下の要素を含んだ面接です。

•「考え」や「想い」ではなく、「行動」した「事実」を知るための面接
• 「成果」を「再現」できる能力(コンピテンシー)の有無を測る
• なにを成し遂げたのか「成果」の「大小」は問わない

上の3つを聞いて意外だなと思われた方もいらっしゃるかと思います。面接でよく聞かれる質問として、以下は就活対策としてよく準備をするのではないでしょうか。

•志望動機
•自己PR
•企業や業界についての理解度を測る
•将来どうしたいか
•長所と短所

上記の質問へ答えるとき、学生の皆さんは自分の「考え」や「想い(熱量)」を伝えていることが多いのではないでしょうか?

「御社を志望したのは◯◯だと感じ、そこに共感したからです」
「私はこういう人間だと思っています。なぜならば…」
「将来はこういう社会人になりたいと考えています」

これが間違いというわけではありません。しかし人の心理的な性質として「考え」や「想い」を聞かれたときに(かつ自分自身の存在を認めてもらうためにアピールする際にはなおのこと)、多少盛って答えがちになるのです(盛りすぎて嘘になってしまう場合もあります)。
そして採用する側も、その盛られた話にいかに共感できるか、理解ができるかという部分で評価してしまいがちなのです。これには罠があります。いわゆるバイアスやスキーマと呼ばれているもので、簡単にいうと「思い込み」です。根拠がないけれども「そういうものだ」と絶対的に信じ切ってしまっている状態です。

この思い込みによって、候補者は面接で一生懸命に話をし、採用側も共感をして評価をしてしまったらどうなるでしょうか。入社後にかなり高い確率でお互いに「ミスマッチ」が起きえます。

「こんなはずではなかったのに」「思ったのと違う」と。

そうです。面接を通過するためには企業へ「想い」だけでは足りないのです。企業側も合否を判断するためには学生の「想い」だけでは足りないのです。

面接だけでミスマッチがすべて解消されるわけでは全くないという前提はありますが、面接自体の進行を構造化し、判断基準を平準化していくことは企業にとっても学生の皆さんにとっても有用なことだと思っています。そしてお互いに不幸のもととなるミスマッチを減らしていく手段として、コンピテンシー面接は有効だと思っています。

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なぜわたしたちはコンピテンシー面接を実施するのか

なぜ、わたしたちはコンピテンシー面接を実施しているのか。

答えはシンプルに「未来を一緒に創る人たちを採用するため」です。

コンピテンシー面接は過去の行動しか聞きません。しかし「未来」を創ることにとても大きな影響を与える人たちを見つけ出すことができます(現時点での最善の手段だと判断しています)。なぜなら過去の行動事実をもとに、成果を生み出すために再現性のある行動をとることができるひとたちへ、しっかりと焦点をあてることができるからです。

コンピテンシー面接は手法として構造化しやすいため、複数の面接官が面接を担当することになってもいわゆるスキーマやバイアスが入りづらく、判断基準も明確にしやすいという特徴があります。

弊社も少し前までは人事と少数の面接官で対応できるくらいの応募者数でしたが、嬉しいことにどんどん応募が増えてきており(特に今年は爆増)、面接官も一気に人数を増やしスケールさせました。そのような状態でも、一定レベルなの質を担保した状態で学生の皆さんの話を聞けたという事実があります。また基本的に個別面接の形式をとるため、オンラインへの移行もとてもスムーズに行うことができました。

まとめると「未来を一緒に創る人たちを探し出すため、変化の激しい時代において有効な面接手法であるから」とわたしたちは理由づけています。

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どのように実施される面接なのか

実際にどうやって進行される面接なのかを、どちらかというと面接官視点で説明します。

1. ガクチカについて
2. ガクチカの中でも特に力を注いで取り組んだ課題
3. 上記の課題に取り組む際に、自身が行った行動の概要(時系列に沿って)
4. 行動概要ごとの課題
5. 上記の課題を解決するために、実際に行動をとった場面(いつ、どこで、どのような)
6. 上記の場面のなかで、自身が最初にとった行動
7. 上記の場面のなかで、その行動をとった理由
8. 上記の場面のなかで、その行動をとった結果
9. 上記の場面のなかで、結果をもとに次にとった行動
10. つぎの場面へ(5~9を繰り返す)
11. つぎの行動概要の課題へ

ざっくりですがこのような流れで面接は進んでいきます。各段階においてどういったことをやっていくのかをもう少し詳細に説明します。

1. ガクチカについて
まず大きなテーマとして設定するのが「学生時代に最も力を入れて取り組んできたこと」いわゆるガクチカです。ここは用意いただいている学生さんも多い印象です。

2. ガクチカの中でも特に力を注いで取り組んだ課題
その取り組みのなかでさらに力を注いだ課題や、それによって達成した成果について絞り込んでいきます。この段階で深堀りがスタートしていきます。抽象的な取り組みに対して、面接官はどんどん深堀りを実施します(圧迫する意図はまったくありませんし、そうした雰囲気にならないよう注意をしています)。

3. 上記の課題に取り組む際に、自身が行った行動の概要(時系列に沿って)
ある程度取り組みの具体性が明らかになったうえで、つぎはその取り組みに対して実際におこなった行動について聞いていきます。コンピテンシー面接の目的である『行動』した「事実」を集めるためです。しかし、この段階で詳細な行動事実を話すことのできる学生さんはほとんどいません。どうしてもざっくばらんな時系列のなかで、自分がやってきたことの概要レベル(だいたいこんなことをやってきました)のお話になることが多い印象です。

そこで、そのざっくりとした行動の概要について時系列に沿ってまずは聞いていきます。ここで注意が必要なのが、あくまで最初に設定したテーマについての行動概要にすることです。例えば部活動の大会で良い成績を収めたことについてテーマを設定したのに、新入生歓迎会での自分の功績について話し始めてしまうなどです。もちろんその行動概要自体がテーマと深く関連しているのであれば問題ないのですが、そうではない場合がほとんどです。

面接官としてもかなり気をつけて質問をしていく箇所なのですが、学生視点ではどうしても自己アピールにつなげたいという気持ちがあるので、ウケがよさそうな行動をピックアップしてざっくり伝えがちです(この気持はものすごくわかるので、どちらかというと面接官の腕の見せどころですね)。

4. 行動概要ごとの課題
行動概要を聞き終わったら、各行動概要ごとに課題がなかったかどうかを聞いていきます。わりとスムーズに進んだ部分もあれば、かなり困難な状況になり非常に大変な思いをした部分もあるはずです。この課題部分が明確にならないと、このあとの場面を想起する段階で学生さんも面接官も苦労することが多いですね。

5. 上記の課題を解決するために、実際に行動をとった場面(いつ、どこで、どのような)
コンピテンシー面接を実施するうえで面接官の多くが「難しい…」と感じるのが、実際に行動をとった場面を特定していくという、この段階です。

行動概要とそれに紐づく課題は明らかになっていますが、具体的な行動事実はまだ聞けていない状態です。この場面を特定していく段階ではじめて学生の「行動」した「事実」を集めることができるようになります。

大事なポイントとして、ここでいう場面とは「最長でも1日単位で、場所が特定されている」ものをいいます。例えば「アルバイトを始めて3ヶ月ほど経ち、夕方シフトにはいったある日の、スタッフの休憩室で」といった具合です。ここまで細かく特定していくことには理由があります。時間や場所を跨いでしまうと、学生の行動が抽象的なものになってしまい「行動事実」ではなくなってしまうことがほとんどだからです。

例えば「アルバイト先の新しいメンバー数人とそれぞれ仲良くなるためにコミュニケーションを積極的にとった」という行動は、なんとなく良さそうにきこえるのですが、これではまだ具体性にかけます。それぞれのメンバーと話すためには数日かかっている可能性もありますし、場所もバラバラかもしれません。またメンバーによって対応の仕方や、自身の行動に対するメンバーの反応もおそらくマチマチでしょう。

コンピテンシー面接で集めたい行動事実というものは、そのなかのとあるメンバーと、いつ、どこで、どのようにコミュニケーションをとったことによって「仲良くなる」という成果にたどり着いたのか、より具体的でリアルな学生自身の行動そのものなのです。

6. 上記の場面のなかで、自身が最初にとった行動
場面が特定できたら、その場面のなかで学生自身が行ってきた具体的でリアルな行動を時系列で聞いていきます。時系列で聞くため「その場面において◯◯さんは、まずはじめにどんな行動をとりましたか?」のような質問をします。

場面を特定できているので、学生さんはそのときの状況を思い出しながら話し始めてくれます。ここがとても重要なポイントです。冒頭書いたとおり「考え」や「想い」は盛って話すことができてしまいますが、「行動」した「事実」は盛れません(盛れたとしてもその後に整合性がとれなくなったり、事実に対して嘘をついているような感覚になるため心理的にやりづらくなります)。

7. 上記の場面のなかで、その行動をとった理由
具体的な場面で自身がとった行動が明らかになったら、その行動を選択した理由を聞いていきます。なぜ自身はその場面、その状況で、そのような行動をとったのか、これがまさにコンピテンシーが強く現れてくる大きなポイントです。

8. 上記の場面のなかで、その行動をとった結果
実際に行動をとったあとには必ず結果がついてきますので、それを確認します。なにも変化が起きなかったり、反応がなかったりすることもあると思いますが、それも結果です。

この結果によって合否が決まることはないので、できる限り事実を話してもらえるように面接官は努力しますし、学生のみなさんは無理をして良い結果に結びつけようとする必要もまったくありません。

9. 上記の場面のなかで、結果をもとに次にとった行動
上記の結果よりも、その結果をうけて次にどのような行動をとったのかという点が非常に大事です。PDCAサイクルでいう「C」や「A」の部分がどうなっているかをここで確認します。

この「行動」(とその理由)→ 「結果」 → 「行動」→ … という質問サイクルを特定した場面においてどんどん聞いていきます。非常に限定された場面のため、もうその日そのタイミングで行動したことはもうないよ!という状態になったら、次へ進みます。

10. つぎの場面へ(5~9を繰り返す)
行動概要の課題が1日の特定の場面のみで解決しないことも多いので、次の場面(日付や場所)を変えて、また同じように行動、結果の質問サイクルを聞いていきます。

11. つぎの行動概要の課題へ
行動概要の課題に対していくつかの場面を特定して聞いたら、その課題についてある程度はクリアした状態まで行き着くかと思います。そうしたら次の行動概要の課題に移り、同じように場面を特定していき、行動事実を集めていくというサイクルを続けていきます。

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このような流れで面接は進めていきます。
ここまで読んでいただいたみなさん、この面接に対して印象はどうだったでしょうか?ここまで細かく聞かれると想定していなかった方がもしかしたら多いかもしれません。面接というよりなんか尋問とか調査っぽい、と感じた方もいるかもしれません。その印象だいたいあってます。

そしてより体型系的に学んでみたいと思った採用担当のあなた!この本に同じような内容はほとんど書いてあるのでぜひ買ってください。当社ではこの本を教科書として設定し、面接官に新しくチャレンジいただく方には必ず読んでもらっています。

ただし、手法を自社にいきなりフィットさせようとしたり、カスタマイズしようとすると難易度があがるので、まずはお手本通りにやりつつ少しずつブラッシュアップしていく方針をおすすめします。僕たちもそのようなアプローチで改善を続けています。

原著もあり以前は面接官育成の教科書として当社も利用していましたが、面接官育成はマンガ版のほうが面接官としての立ち上がりが早いこともわかったので今はマンガ版を利用しています。合わせて読むことによってより深い理解は得られますので、これからコンピテンシー面接を学んで社内に展開していくぞ、という強い気持ちがある方は併読をおすすめします。

次回はコンピテンシー面接の対策(準備)について書きます

今回の記事はここまでです。次回、コンピテンシー面接への対策や準備として、以下をお伝えしたいと思います。

•このコンピテンシー面接を実施する中で、面接官は具体的にどういった答えを求めているのか
•コンピテンシー面接の最中に気をつけるべきポイントはどこか
•どういった学生がコンピテンシー面接の評価が高い/低いのか

もうすでにかなりの文量となっていて、かつ上記こそが学生が知りたいコアな部分だと思うのでプレッシャーを感じつつあるのですが、コンピテンシー面接についてのぼくの知見をほぼぜんぶ書いちゃうので、ぜひまた読みにきてください!

※この連載記事は全部で【その3】まで執筆予定です
【その1】本記事
【その2】コンピテンシー面接の具体的な対策と準備、評価について
【その3】コンピテンシー面接は社会人になってからも役に立つ

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「新卒採用」に望む学生の皆さんに対しての想い

連載最後の記事に書こうかどうか迷ったんですが、書いちゃいます。

通年採用、終身雇用の終焉、個の時代、そしてコロナ禍。人生の大きな転換点に立っている学生の皆さん、先行きに対して不安を抱いている方も少なくないと思います。しかし逆にこのような状況はチャンスでもあります。自分がコントロールできない要素に対して悩んでいてもなにも始まりません。しっかり考えて動いて、さらに考えぬいて動き続けられたひとが納得のいくスタートラインにたてると思います。厳しいかもしれませんが、その格差はより一層顕著に現れそうです。

運もあるでしょう。タイミングもあるでしょう。でもその運やタイミングも準備ができていない人の前に転がってきたとしても、なにも掴むことはできないはずです。

しかし、いざ自身の就活になると…
実際に動き出してみると面接のテクニックや対策ばかりに走ってしまい(これが大事な場面もあるのですが)、就職先を決めること、入社することがいつのまにかゴールにすり替わってしまっている方も多くみられます。僕自身も就活しているときには同じような状態だったのであまり偉そうなことは言えないのですが(と言いつつ言ってるやん!て思われたらごめんなさい。。)、ぜひ小手先のテクニックに執着するのではなく、自身の本質を見つめ直しこれからのキャリアに備えた準備や練習期間だと思って「就活」に取り組んでみてはどうでしょうか?

みなさんがアドバイスを貰っている社会人の方で「就活がすべてではないよ」と言う方も多いと思いますが(僕も言いますw)、いま就活に望んでいる学生の皆さんからすると「いや、ほぼ全てだよ。人生かかってるんだよ」というのが本音だと思います。あくまで結果論や経験を踏まえてしかお伝えができないのですが、自分の持っている力を存分に「就活」へ注ぎ込んでほしいなと思います。そうした熱量をもった学生の皆さんにお会いできることを、ぼくも楽しみにしています。

そしてきっと就活中は苦しいタイミングのほうが多いと思うので、そんなときは周りの方をたくさん頼ってみてください。僕に頼りたいという特異な方がいれば、Twitterとかで絡んでみてください。時間の許す限り自分なりの考えをもとにサポートはできるかもしれません(たぶん…w)。

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https://twitter.com/Machamoto
サーバーワークスのまつもとです。現在はHRマーケティングを担当し、21卒の新卒採用では主にコンピテンシー面接の面接官および面接官育成を実施しています。

サーバーワークスでは最近Youtubeでの動画配信にも力をいれています。AWS(Amazon Web Services)専業のクラウドインテグレーターとしてのノウハウや知識をどんどんアウトプットしています。僕もときどき動画に出てきたりするので、興味のある方はぜひ覗いてみてください。


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