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銭湯が始めた裏稼業 出会い編

もう40年近く昔のことなので、お許しください。

生まれた町には、多くの銭湯がありました。家の近くだけでも4−5軒はあったでしょうか。当時は今より活況だったと思います。それでも家庭の浴室保有率が進み、銭湯の経営も苦しくなっていた頃だったのかもしれません。

そんな事を知るわけもなく、一年中、脳内のお花畑でピンクの象がダンスし続けているような小学生時代、同級生の間で衝撃的なうわさが広まりました。

N君「だいちゃん、◯◯屋さん(銭湯)で、激安のファミコンソフトが売ってる」

まじで!?

N君「300円でソフトが買える。いこ、すぐ行こ」

スーパーマリオブラザーズが発表され、様々なソフトが世にでだしたころでした。それでも小学生が気軽に変える金額ではなく、誕生日やクリスマスになんとか、買ってもらえるようなものです。

それが、300円で買えるという情報に、ピンクの象がレインボーになるほど、狂喜しました。

しかし、なぜ、銭湯?

慌てて300円を握りしめて銭湯に到着しましたが、おもちゃ屋としての看板はありません。というか、普通の銭湯です。誘ってくれた友人のN君は横で戸惑っています。いや、お前、断言してたやん、というか入ったことないんか?と心の中で思いながら、私も戸惑っていました。

そこに、知らない小学生がやってきて、私たちを気にもとめず、風呂屋に一人ではいっていきます。そこに躊躇は微塵もなく、夜のお店に慣れた紳士のようでもありました。

N君と顔を見合わせて、慌てて後をついていきました。紳士は躊躇なく扉を明け、番台に座る店主をみると、手でサックッという仕草をしました。紛れもない、あのサックッはファミリーコンピュータにソフトを指すときのサックッです。

店主は頷くと、番台からでてきます。N君と私に気づくと、「君らもかあ?」と聞くので「キミらもです」とアホみたいな応えをしましたが、横をみると、N君はサックッをやってます。お前だけズルい。

店主に案内されるまま、紳士、N君、私で奥の扉からバックヤードにはいると、そこはお店でした。狭いスペースにガラスのショーケースが設置され、そこにファミコンのソフトらしきものが並んでいます。でも、ファミコンのゲームだと言うことは認識できました。

なぜなら、ファミコンソフトらしきものは、真っ黒のカートリッジで、でも表面には、ソフトの名前と値段らしきものが書かれたテープが貼ってありました。

こんな感じです。

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10種類以上のソフトが並んでいます。圧倒されていると、例の遊び慣れた小学生が「はじめてか?」と聞いてくるので、N君と二人で全力で首を立てにふると、「これ、黒いけどふつうに動くで、たまにアカンけど、指しなおしたらええねん」と教えてくれました。

店主「買うか?でも、あんまり人にはいうたらアカンで。お父ちゃんやお母ちゃんにも、内緒やで」

内緒って、無理やろと思いながら、N君の「友達から借りたって言う」という案にのっかり、購入することにしました。今思えば、いかがわしさMAXで立派な犯罪行為です。

それでも、お金のない小学生の間では、もちろん、私の中でも、当時の銭湯のおじさんは、ヒーローになったのです。

銭湯が始めた裏稼業 成長編 に続く。





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