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漠然と


人生で大切なことは大体チャットモンチーが歌ってくれていてすっかり大人になってしまった私ができるのはせいぜい「人に迷惑をかけない」くらいだ。日当たりが良すぎる私の部屋で気持ちよさそうに太陽の光を浴びているサボテン。しょうもないことで泣いてばかりで涙の価値が下がりつつある。


帰り道にあるパーキングの看板が濃い赤と濃い緑だから通るたびにクリスマスを思い出す。もしも大きな地震がきて死んでしまうのならば何を着ようと考えながら明日の服を選ぶ。そうでもしないと幸せな人間だと勘違いしてしまいそうになる。誰かのために生きる方がよっぽど簡単なのに誰かの幸せを願うのは得意じゃない。だから、そんな私だから、私も私の幸せを願うべきではない。

ある本を読んで短編小説を書きたくなった。好きな脚本家は新しい映画を作ったらしい。周りをよく見てるつもりなのに時々友達に「今の人見てた?◯◯じゃない?」と聞かれても何のことか分からなかったりする。困った人がいたら困ってると気付く。話しかけない方がいいと思ったら話しかけない。怒られないよう傷つけないよう恥をかかないよう生きている。それでも私はいつだって右と左を間違える。自信がないから間違える。自信があっても間違える。周りをよく見てるつもりなのに友達が見つけた面白い瞬間さえ逃してしまう私だ。ここから先の人生は短編小説を書くためにもっともっと周りをよく見よう。自分の足元ばかり気にせず前を向いて歩いてみよう。右は右で左は左。そこが狂ってしまえば元も子もないんだけども。

好きな人がいない。恋人もいない。もちろん結婚なんてしてないしする予定もない。正社員にはならないし一人暮らしもしないし貯金だってできない。未来に対する不安はいつの間にか日常に溶け込み時々不安だったことを忘れている。ああ駄目だ、私は不安であらないと駄目なんだと我に返ったり返らなかったり。大好きな学園ドラマの配信が始まるらしいからなんか全てがどうでも良くなったり。どうしようまた勘違いしてしまいそう。恋人もいないくせにお金もないくせに幸せな人間だと勘違いしてしまいそう。鏡に写る貧相な体つきの自分に言い聞かせる。できるだけ楽しそうに笑いなさいと言い聞かせる。


体操服をパジャマ代わりにしていた時代は過ぎてしまい最近はもうガチャガチャをしなくなった。正社員でもないくせに高いお金を払って髪を染めたりまつ毛をくるんと上げたりしてる。急に襲いかかる漠然とした不安。スーパーで198円のブロッコリーを買うか買わないか悩んでるときと似たような不安。今はこのままでいいかもしれない。

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