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はじまりの詩 1/?

20歳。
専門学校2年生の夏。
大好きなサッカーを友人と楽しむ。

照りつける陽射しは容赦なく
次の日ぼくは耐えられる程度の頭痛と高熱にうなされる。

体温が40℃を超えた時に
近所の診療所に駆け込む。

下された病名は"熱中症"。

念のため採血をし、解熱鎮痛剤を処方され帰宅。
1週間後の再診となった。

処方された薬を飲み、1〜2日もすればすっかり軽快した。

明日からは学校に行けそうだ、そんな事を友人に電話しているとキャッチが入る。

知らない番号。
携帯ではなく、この辺の固定電話の番号だ。

恐る恐る出ると
先日、かかった診療所からである。

どうやら、採血結果で気になる点があるために、再診日を待たずに今すぐ来て欲しい、といった内容であった。

ぼくは意味もわからず、まだどこかダルい身体を起こして診療所に向かう。

照りつける太陽の元、自転車を漕ぐ。
1分もしないうちに汗が吹き出る。

帰りたい。

ブツブツと文句を言いながら走っていると
すぐに診療所に到着した。

受付を済ませると
他に待っている人をすっ飛ばし
診察室に案内される。

どうやら"パニック値"を叩き出したヤツがいるようである。

※パニック値とは、採血結果で飛び抜けて異常な値に対して緊急速報的にお知らせが来る値である。

20歳のぼくは、まがいなりにも医療系の専門学校に通っている。

パニック値に関しても、血液データの正常範囲についても、ある程度は把握していた。

今のぼくは友達と真夏にサッカーをするくらいの健康優良児で、何不自由なく寮生活を満喫していた。

そんなぼくに主治医は伝える。

「CPKの値が正常上限の100倍を超えています」

ぼくにはまだこの事の重大さが理解できなかった。

しかし、間違いなくこの瞬間に
ぼくの障害者生活がスタートした。


つづく。

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