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「牧師夫人」と呼ばないで(総督)

 匿名の「牧師夫人」によるツイッターアカウントがある(@BokushifujinBot)のをご存じだろうか。「今週のつぶやき」欄でも何度かお目にかかったことがあるが、ご覧いただける方はぜひ検索してみてほしい。そこには、ほとんど公には語られない牧師の妻によるありのままの悲喜こもごもが綴られている。

 「牧師は孤独だっていうけど、妻も孤独です。彼の重荷を共有することはできないし、自分の魂のうめきを打ち明ける牧者がいない」
 「教会の方と過ごすのも楽しいけれど、ノンクリ(非信徒)のママ友(母親同士)と過ごす方が気楽」
 「子どもたちにパパと過ごす時間をください」
 「共感する人といえば、相撲部屋のおかみさん」
 「いきなり牧師館に入ってこられるの、ほんとうに困るんです。集会室の一つじゃなくて、プライベートスペースなんですよ」
 「牧師夫人を嫌いになっても、主の教会は嫌いにならないでください!!」

 聞くも涙、語るも涙――。以前、キョウカイイエローも「牧師夫人」への「明文化されていない役割が期待され、それがかなわないと文句を言われる」という牧師の連れ合い、家族の悲哀を訴えていた。

 時あたかも、某国首相の連れ合いが「私人」か「公人」かをめぐってメディアを賑わせている。公費で賄われた秘書が随行し、公的行事に参加した上、「首相夫人」との肩書きで名誉職に就くぐらいだから、「私人」との言い逃れはできなさそうだ。

 かたや教会の場合、夫婦で牧師をしているのでない限り、「牧師夫人」は明らかに「私人」のはずだが、教会の都合で勝手に「公人」扱いされ、来客の接待や会堂清掃など教会の雑務を丸投げされる例も少なくない。「私は教会と結婚したわけじゃない!」という嘆きの声も、何度耳にしたことか。

 実は、何を隠そうこのキリスト新聞も「教会の奥さん」と題するインタビューを連載していた負の歴史がある。毎回1人の「牧師夫人」について、その生い立ちや証しを紹介するもので、1965年から5年間、計215回にわたり掲載された。タイトルもさることながら、本人の生年月日だけでなく、身長、体重までが平然とさらされている!

 連載のリードにはこうある。

「サラリーマンや商人の奥さんなら、悪妻はいざ知らず、すこしくらいできがわるくても、ご主人さえちゃんとしておれば、かっこうがつく。ところが教会の牧師夫人ともなれば、そう簡単にはいかない」

 たかだか50年前の紙面に載っていた文言とは信じがたい。

 他方、「牧師夫人」の立場を積極的に利用し、教会(特に婦人会など)の実権を陰で握っているという事例もあるのでややこしい。威を借るキツネはどこにでもいるのだ。

 ちなみに、「総督夫人」には残念ながら何の役得もない。

(2017年3月18日付「キリスト新聞」掲載)

【総督】名前不明 キョウカイジャーを統括する司令塔。「神の国」建設に寄与するため、あらゆる予定調和を打ち壊し、業界の常識を覆そうと目論む野心家。地上では仮の姿でキリスト教メディアに携わる。サブカル好きの中二病。炎上体質。武器:督促メール/必殺技:連投ツイート/弱点:カマドウマ(便所コオロギ)。

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