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傍若無人のネンパイ星人にご用心!(総督)

 「若いモンがなってない」とぼやき合うのは、ある種、中高年にのみ許された普遍的な嗜みなのかもしれない。教会でも「若いモン」が来ないと嘆きながら、なぜ来ないのか、なぜ来ても長続きしないのかを問うことなく、時代のせい、「ゆとり」のせいにしてはばからない人々がいる。周囲の困惑を尻目に、「まだまだ若いモンには任せられん」と居座り続ける人々がいる。彼らこそ、次々と若い才能を摘もうと暗躍するネンパイ星人である。

 ある神学校の同窓会で、現役の学生に対するダメ出しをドヤ顔でまくし立てるOB連中にドン引きした覚えがある。こんなところで先輩風吹かせるなよ、見苦しい。ネンパイ星人は、とかく上から目線で「答え」を教えたがる。「若いモン」が知りたいのは、「答え」なんかじゃないのに。ああいう歳のとり方だけはしたくない。

 ある教会会議では、議論の流れも司会の忠告もことごとく無視し、我がもの顔で熱弁をふるうネンパイ星人の姿も頻繁に見かける。あゝ、醜い。確かに、一時代を築き上げた先人たちの働きは尊い。しかし、自分の思い通りにならないと怒り出す、時間を気にせず延々と自説を繰り返すなどの蛮行に至っては、「老●」との誹りも免れまい。

 師弟関係が障壁になってものが言えない牧師もいる。空気の読めない新参者が素朴な疑問を差し挟もうものなら、「年長者への敬意が足りない」と叱られたりする。教会はいつから体育会系になったんだ?

 キリスト教に限らず、既成宗教の教団組織では総じて信仰の継承が課題になっている。信者は高齢化し、牧師も住職もなり手がいない。日本全国7万7千のうち、住職がいない「無住」状態のお寺は2万を上回るという。無牧の教会も増える一方。「俺たちのころは……」とか「昔は良かった」などと懐かしんでみても何の解決にもならない。当時と今では社会的環境がまるで違うのだ。今日のような事態を招いた責任の一端が、自身にもあることを少しは自覚したほうがいい。

 国会前に集う「若いモン」を冷笑する輩もいる。普段は無関心な若年層に説教を垂れるくせに、いざ声を上げ始めると「浅はかだ」とか「背後に組織が……」などとイチャモンをつけ始める。当然、同じキリスト者であっても神学的・政治的スタンスはさまざまだし、教会内にも温度差がある。ただ、未来ある「若いモン」の足を引っ張る暇があるなら、彼らに足りない豊富な知恵と経験を絞り合って、自分たちには何ができるかを考えてほしい。

 必要なのは対等で建設的な議論だ。互いに安全な壕の中に閉じこもり、見えない敵を相手に見えない銃を撃ちまくるような不毛な泥仕合はもう終わりにしよう。

 無論、日々謙虚に学び、弛まぬ努力で「若いモン」に負けない情熱を維持し、陰ながらサポートし続ける敬愛すべき先人たちも大勢いることを付記しておく。

(2015年7月11日付「キリスト新聞」掲載)

【総督】名前不明 キョウカイジャーを統括する司令塔。「神の国」建設に寄与するため、あらゆる予定調和を打ち壊し、業界の常識を覆そうと目論む野心家。地上では仮の姿でキリスト教メディアに携わる。サブカル好きの中二病。炎上体質。武器:督促メール/必殺技:連投ツイート/弱点:カマドウマ(便所コオロギ)。

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