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「アメリカに住めば英語は自然に身につく」なんて幻想です!

海外赴任や海外留学でアメリカに住んでいた、というと、「英語ペラペラ?」 なんていう反応が返ってくること、よくあります。
 
日本国内で英語を勉強してもなかなか上達しないこともあって、アメリカなどに住んで英語の環境で生活すれば、ネイティブ並みになるのでは、と期待してしまいますよね。
 
でもそれは、想像するほど簡単なことではないのです!
 
私たちが日本語を覚えたのは、生まれて育つ間に自然に身に着いたような気がしてしまいますよね。 だから同じように、その環境に身を置けば、自然に覚えられると思うかもしれません。
 
でも違うのです。 子供が言葉を覚えるのと、大人になった人間が母国語でない言葉を新たに覚えるのはまったく違う。
 
何が違うかというと、まず単純に耳が違いますよね。 生まれたばかりのときは、どんな発音も聞き分けられる耳を持っているらしいのだけど、言葉をしゃべれるようになる頃から、母国語にない音を聞く能力は退化していくらしいです。
 
だから大人の耳は、すでに母国語にない音は聞き取れなくなっているわけです。 日本人は “L” と “R” が区別できないというのも、無理のない話です。
 
聞き取れないんだから、毎日いくら英語を聞いたって、子供のようには吸収できないのです。
 
その上、英語って、日本語と一番遠いんじゃないかというくらい、共通項が何もないですよね。 文の構造がまるで違う。 ボキャブラリーが違う。 表現も考え方も違う。 日本の学校の授業では、英語の和訳や、日本語の英訳をやりますが、実際の英語はそんなに1対1ですっきりと訳せるようなものではありません。
 
そういう現実を知って、今まで想像していたよりはるかに難しいことにショックを受けたりします。 私が留学中に知り合った日本人のクラスメートの中にも、そんな人が何人かいました。
 
「自分は英語が好きでかなり勉強してきたし、大学でもできるほうだったんだけど。」
 
「日本の大学では英文科で、休学してニューヨークに来ているんだけど、生の英語は難しい。 今まで勉強してきたものは何だったんだろう。」
 
良い例があったら紹介したいのですが、そこまで探せる時間がなかったので、今日の CNN のサイトから拾ってきた簡単な文をひとつ。
 
"I feel like the banter was immediate,"
 
これって何というか、すごくニュアンスを含んだ感じの表現ですよね。 短い文で、シンプルな構造なんだけど、 “the banter was immediate,” の部分がなかなか英語ならではの表現になってます。
 
この文は、飛行機で隣同士になった男女が “fell in love” したという記事の中のもので、”banter” とは楽しく冗談をいう、好意をもって会話を交わす、というような意味です。 この1語の中にもいろんな意味が詰まってます。
 
“banter” が “immediate,” どうでしょうか、短い文だからこそ、ニュアンスが増し増している文なのが感じられますか。 あえて和訳は紹介しないでおきます。 学校で習う英語とはひと味違うのではないでしょうか。
 
音を聞き取るのも、日本人には難しいですよね。 発音もリズムも、日本語とはかけ離れてますから。 文字で見ると簡単な文でも、耳で聞くと全く違って聞こえたりするのです。
 
次の2つ、こんな感じに聞こえるというのを書いてみましたが、意味わかりますか?
 
-       「お」ぅまぃ「が」ーっ「ゆ」ぅるっか「め」いじーん! (「」が強く発音するところ)
 
-       か「むぉ」ん「ど」ん「ぎ」vぁま「は」ーっ「た」ーぃm
 
これは2つとも、とあるドラマから取ってきたセリフです。 どうでしょうか。 答えは以下のとおり。
 
-       Oh my god, you look amazing!
 
-       Come on, don’t give him a hard time.
 
文字になっていると難しくも何ともない文ですが、日本人が想像しているような発音ではなかったりするので、耳で聞くと全くわからなかったりします。
 
聞いてもわからないし、読んでもわからない、ということになって、大人にとってはかなりつらい状況です。 物事を理解する能力はもちろんあり、理解したいのに、言葉ができないせいで意思の疎通ができないというのは、想像以上にストレスフルなことです。
 
それに、会話しているシチュエーションで、相手の言っていることがわからないからといって、大人がいちいち 「いま何て言いました?」 なんて尋ねることも難しいですよね。 子供だったら 「○○って何?」 って訊いてもおかしくないですけれども。
 
さらに、もし 「それって何ですか?」 と尋ねることができたとしても、返ってきた答えの意味がまたわからない、なんてことも当たり前にありますよね。 そんなこともあり、話すことがイヤになるのもよくあることです。
 
そしてこれはニューヨークやロスアンジェルスなどの都会に限る話ですが、実はこういう都市では、日本語だけで生活ができてしまうんですよね。
 
ニューヨークには、日本人が経営するスーパーマーケットがいくつもあるし、病院もある。 紀伊国屋書店だってある(かつては旭屋書店もあった)。 美容院もある。 お寺もあるし、日本人会もある。 日常の生活は、ほとんど日本語だけで済ませることができてしまうのです。
 
日本人だけじゃなく、あらゆる国の出身者はそれぞれコミュニティを作っています。 中国人のコミュニティ、ユダヤ人のコミュニティ、プエルトリカンやドミニカンなどのラティーノのコミュニティ、ロシア人のコミュニティ、インド人のコミュニティ、などなど。
 
意外かもしれませんが、母国語のコミュニティで暮らしていて、英語が全く話せないという人も、ニューヨークにはたくさんいるのです。
 
アメリカに住みさえすれば、英語ができるようになるのではないのです。 住んでいたって、外国語を身につけるのは、それ相当の努力を必要とするのです。
 
でも確かに、日本で勉強しているよりは、英語を使う国に住んで勉強するのははるかに効果があるでしょう。 気候や食べ物や季節のイベントなど、文化をまるごと体験することで、英語の理解も深まります。 本気で英語を身につけたい人は、海を越えて、好きな場所に住んでみよう!
 


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