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カザフスタンの安宿に泊まったら、自分以外全員ロシア人だった

(今年10月の話だ)

現在宿泊しているアルマトイ(カザフスタン)の宿は、なんと自分以外ほぼ全員が、戦争への招集を逃れるためにロシアを脱出してきたロシア人男性である。

旅人の宿と言えば、世界中から多国籍の人間が集まるものだが、話しかけるとみなロシア人だ。ロシア周辺の国には先月から多くのロシア人が国外脱出をしているとニュースで見かけてはいたが、まさかここまでとは。

めちゃくちゃアウェイな状況ではあるが、覚えたてのロシア語で話しかけているうちに、2人の友達ができた。

一人はセルゲイという22歳の青年だ。カザフスタンのサリー・シャガンにあるロシア軍基地に勤めている。軍では年に2回1か月の休暇が与えられるようで、国外脱出してきた他のロシア人と異なり、バカンスで滞在している。彼にとって自分は初めての日本人の友達のようで、やたら親切にしてくれ、アルマトイの街を案内してくれた。

彼自身はウクライナ戦争に反対であり、彼の知り合いは何人も戦地に送られたという。ただ、自分自身については招集されても断れると思うと曖昧な返事をしていた。ロシア中部の町で高校を卒業し、なんとなく軍に入隊したが、本当はあまり今の仕事が好きではなく、数年のうちに辞めたいようだった。不安そうに「おれはまだ自分が人生で何をしたいのかわからないんだ。日本の人たちはロシア人についてどう思ってる?」と聞いてきた。

もう一人はマラートという30代の男性。ロシアの有名大学を卒業後、ロンドンで修士号を取得したロシアのエリートだ。英語も流暢で、日本文化についても造詣が深い。カザフスタンには戦争が終わるまで滞在せざるを得ない。自分はロシアを自由な方向に導きたいと考えていたが、今はそれどころではなくなってしまったと話した。ランチを奢ってくれた紳士。宿の人間は、君以外は全員ロシア人だよ、と笑っていた。

アルマトイの街自体は小綺麗で整備されている。紅葉が綺麗で、空気はひんやりしている。バスにはスイカのようなカードで乗れるし、アプリと連動した電動スクーターで街中を動けるし、ヤンデックスタクシーというUberに似たタクシーアプリも安くて便利だ。大多数はイスラム教だと聞いていたが、女性はほとんどヒジャブを着用していないためイスラム色はあまり感じない。街中を歩いている人々は、ブロンド長身の典型的なロシア人タイプもいれば、日本人と見間違うモンゴロイド系の人々も多くいる。そのため醤油顔の自分もビニール袋を提げて歩いていれば現地人に溶け込めている。

なぜか熱湯しか出ないシャワーや、脳天に響くほど足が臭い男がいるこのロシア人宿をもう数日楽しもうと思う。

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