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読書レポート「エコシステム・ディスラプション」

全体所感


ビジネススクール教授であり経営戦略が専門ということもあり、深い考察、研究、豊富な事例と読み応えのある一冊。

普遍的な結論、フレームワークやツールの提示方法など雰囲気としては、目名著『ビジョナリー・カンパニー』シリーズに近いものを感じた。

これまでの決まった業界や”枠”の中での競争戦略ではなく、パートナーとの連携・共生を前提とした考え方、リーダーシップを標榜とするのではなく、自社の価値構造によってはフォロワーにつくことのメリットなどこれまでの経営戦略本とは異なる考え方が興味深かった。

同時にコロナが起こり、これまで以上により一層の大きな変化を問われる今に合った戦略のベースになる印象。繰り返し自身のキャリア状態、担当プロダクトのフェーズにより読むことで新しい気づきが得られる。


1.学んだこと


①業界の非連続敵変化はイノベーションではなく、エコシステムによって起こされる
1.製品・サービスを単独で見るのではなく、顧客の体験を基点に
  全体としてどういう価値構造となっているのかを捉える

2.価値構造すべてを1社で完結させることは不可能。
  企業間連合「エコシステム」として顧客に製品・サービスを複合的に
  提供していく

★正しいゲームに勝つこと⇒顧客にとって、本当に価値のあることは何か?

②エコシステムの定義=パートナー同士が協力し合い、エンドユーザーに価値提案を行う構造

1.「価値提案」が軸。
2.価値提案を行うために協力する具体的なパートナーがいる
3.プレイヤーは協力的な環境で、明確な役割や立場を持って連携し動く
  └パートナーをまとめる、自社がパートナーに加わって欲しいと考え
   能動的にパートナーが加わる構造への落とし込み

③価値構造の定義=価値提案を構築するための要素をまとめたもの

価値提案のコアは価値構造。
カスタマーインサイト(イノベーションの旅のスタート地点)
 ↘価値提案(顧客が享受するはずの効用)
   問い:「顧客にどうなってほしいのか?」
  ↘価値構造(価値要素の配置)
   問い:「価値要素はどこにあるの?どう配置されている?」
   ↘エコシステムの活動
    (自社とパートナーが価値提案を実現するために展開する課題、
     能力・技術)
   問い:「それぞれの価値要素はどう活用する?」
      「各段階で何が必要?」

④ウェイフェアの事例
顧客のインサイトを捉え、「発見」の強化、「検討」という要素の追加。

⑤スポティファイの事例
価値構造のピボット。レコード会社と戦うのではなく、あくまでもカニバリを認知しレガシーへの畏怖や尊敬すら感じる戦略転換。アーティストへの直接参加の取りやめ→ポッドキャストの追加。

⑥アレクサの事例
MVEからスキル拡張、開発者向けスキルキットの開放、APIパートナーへの拡張、IoT体現
→一連の流れの中でしっかりとエコシステムを活用し複合的な価値要素から構築している。

⑦エコシステム・ディスラプションを分析するフレームワーク(P.223)
4つの象限
└①市場の破壊
 ②安定邸な共存
 ③復活の幻想
 ④現状の拡張

⑧エコシステム・リーダーシップのリトマス試験

▼質問1
価値提案を拡大するにあたって、自社のリーダーシップは現在のパートナーと同程度かそれ以上に、新たなパートナーにも理解されるだろうか?
※皆が理解しているとは限らない。

▼質問2
自社が価値提案を拡大しても、既存のパートナーは引き続き現在の役割を受け入れるだろうか?
※状況が変化すれば、パートナーが参加する理由も変化する

⑨理解されてこその戦略

従来の破壊=業界の枠内での競合の順位を逆転させた。
エコシステム・ディスラプション=その枠を壊し、価値提案そのものを覆す。
→成功のためには、組織に共通の言葉をもたらし、ゲームの変化や勝利の定義を組織の全員が理解すること。

2.印象的なワード


■MVE(最小限の構成要素からなるエコシステムのプロトタイプ)
エコシステム・ディスラプションは、小さなところから段階的に始める。
①価値構造の把握⇒②価値提案を定める⇒③MVEを作る
※MVP(必要最小限の製品)カスタマーインサイトのためのツール
 MVEは、パートナーの連携と規模拡大のためのツール

■新たな分野で効用を競うには、新たな視点が必要となる。
そのためにズームアウトして製品や組織、業界だけではなく、自社が参加するエコシステムのレベルで課題を熟考する。

■効果的なエコシステムの防御
従来の競争戦略は、陣地の攻略、直接的な敵、ゼロサムゲームなどの軍事的思考を基盤とした。
エコシステム戦略は、共存、同盟の構築、共通の戦略的関心の発見など外交的な立場を基盤とする。
→防御で重要なのは、パートナーとの連携

■組織内の相互理解を深める
重要なことは首尾一貫した答えを出すこと。
一つの企業内でも個人やチームごとに異なる視点を持っているが、異なる考え方を構造的な手法でまとめるプロセスを踏むことで、チームとしての共通の知見を最大限に活用できる。
(チームビルディングのヒント)

■適切な役割とマインドセット(マイクロソフト/ナデラ氏)
他社が進んで追随する分野でエコシステムをリードする。自社がフォロワーとなることがより生産的な場合は、他社のリーダーシップを支援する。エゴシステムを解決する賢い方法は、皆がそれぞれの道のりでヒーローとなれるように、連携構造を築くこと。
※いったん成功してリーダーが賞賛と同意に慣れてしまうとCEO以下が連携のマインドセットと謙虚さを取り戻すのは非常に難しい


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