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空間を言語化する。ーー誰に向けた体験?

おはようございます。

ついに昨日から秋冬用のふかふかベレー帽を被りはじめて季節の変化を感じています。

さて、今日は季節はすぎてしまったけれど、そんな夏の終わりにみたアートの話を。

最近、あらためてアートやエンタメをたくさんインプットすることが大切、と西野さんに教えていただいたり、空間デザイナーの只石さんに「もっとつくる側の視点でみた方がいい」と教えていただいたりして。

ちょっと前になってしまうけれど、インプットした体験を言葉にしておこうかなと思いました。


訪れたのは、落合陽一さんの展覧会「未知への追憶」。
渋谷のショッピングモールの一角で開かれています。

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前にも何度か落合さんの展示は見たことあるけれど、「楽しませる」というよりは、落合さんの頭を覗き見するような、肌感に触れるような感覚で、鑑賞者の体験がどこまで意図的に設計されているのかはよくわからない。

鑑賞者の”体験”に対して空間が設計されているというよりも、ある”問い”に対して空間が設計(実現?)されているという印象が強くて、その問いをどう受け取るか、そこにどう飛び込もうとするかで、”体験”が形作られていくイメージ。


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余計なものは極力排除されていて、作品が浮き立つための背景に徹する壁が印象的。


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落合さんの個展はいつも文字量が半端なくて、作品や各エリアに対するキャプションをすべて網羅するだけでたぶん本1冊分くらいはある。

周りのお客さんをみていると、一人で来ている人が多くて、熱心に”言葉”を受け取ろうとしている人が多い。


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エリアごとの分け方を見ていると、「映像」「質量」「風景論」みたいに、テーマで分けられていることが多い。

なんとなくそのテーマの並べ方も、論文の構成みたいに意図があるのかなと思いつつ、気が付かないように微妙な色味やライトの違いで空間がつなぎあわされているのはおもしろいなと思う。

落合さんが設営中に書いたのかな?と思うような、床や壁にところどころのメッセージが書かれていて、隠れミッキーを見つけるような気分が楽しかった。

きちんと練られた何行もの文章よりも、手書きの一言の方がリアルさがあって、隣にその人がいるかのような感覚になって、「空間を成立させるために言葉を用意する(添える)」だけじゃなくて、「空間に描き込む」っていうのもおもしろいなと感じた。

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そして、やっぱり大事だなあと思ったのは音楽で。

この展示ではある一角で、環境音のような、背景に徹する音が流れていた。一定の時間で鳴る和のような禅のような鐘の音。

音があるから空気が流れるし、時間が経過するし、作品の位置関係があらわになる。そんな印象。


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そして、ホワイトキューブの中じゃなくて、渋谷という都市の中にいることを意識させる、というよりそれを一部として存在している作品。

この畳の一角から音が流れていた。
展示会場全体の中でも中心部にあったから、おそらくこれが扇風機の真ん中の部分というか、「目」のような作品なんだろうなと思った。


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ラストにかけて言葉が作品の一部のように降ってくる。


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印象的だったのは、最後の空間で。

いちばん五感が賑やかだなあと思っていた。それまでの白黒の世界観に比べて色味があるし、オーケストラの音も流れているし、ライトも派手だった。

エリアのタイトルを見ると、”共感覚”というフレーズが入っていて、やっぱりそうなんだなあと思ったり。


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ここまでざっと写真を振り返りながら書いてみて、今回の空間は、「個人に向けた体験」として設計されているんだなと思う。

そこにきた人同士のコミュニケーションを作ったり、その場で生まれる共鳴?を期待するというよりも、「世界ーわたし」みたいに、一人一人が問いに向き合う環境を整えている。

そんな感覚。

だからむしろ隣にいる人との感覚は切られるし、当然会話している人も少ないし、みんながそこに集中していく。

禅とかマインドフルネスとか、流行りの言葉を使うとそんな感じなのかな。

前に、チームラボの「PLANET」と「Borderless」の両方の展示に行った時に、どちらも「境界」がテーマだけれど、前者は「『世界とわたし』の境界」、後者は「『わたしとあなた(他者)』の境界」、それをborderlessにしていくという感じがして、なんだか今回はその前者に近いなあと思ったりした。

それは結局、空間の主人公を誰に設定するのか/どう演出するのかという問題な気もして、このあたり結構いろいろ明確に違いを感じたけれど、ここを書きはじめるとすごく長くなりそうなので、また今度にしたいと思う。


「個展」とひと口に言っても、誰に対して、どんな体験を想定するのかで、作り方が全然ちがう。

そんなことを思った展示でした。

もっといろんなアートをみにいきたいなあ。

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