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【ご報告】 令和3年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業 キュレーター等海外派遣プログラム| アルスエレクトロニカ研修を修了させていただきました。

こんにちは。
2021年10月末で、令和3年度 文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業 キュレーター等海外派遣プログラムアルスエレクトロニカでの研修を修了させていただきました。

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アルスセンターでのファイナルプレゼンテーション
(Credit: Emiko Ogawa)

これは、2021年5月から10月の約半年間、オーストリア・リンツ市にあるメディアアート機関・アルスエレクトロニカで、文化プロデューサーとしての研修を受けるプログラムです。

世界最大のメディアアートフェスティバルである「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」の運営をはじめ、アルスエレクトロニカセンター(ミュージアム部門)や、プリ・アルスエレクトロニカ(コンペティション部門)、そしてフューチャーラボ(R&D部門)など、さまざまな部門に関わらせていただきました。

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(Credit: Veronika Liebl)

コロナ禍での渡航にも関わらず、無事に研修を終えることができたのは、文化庁さま、運営事務局のみなさま、メンターの方々、アルスエレクトロニカのみなさまをはじめ、本当に多くの方々に支えていただいたおかげです。

あらためてここで感謝申し上げます。
本当にありがとうございます。

そして、令和4年度の同プログラムの募集がはじまっています。(応募は1/4まで)

研修中は、本当に数えきれないほどの貴重な体験をさせていただきました。この記事では、その一部ではありますが、この6ヶ月でアルスエレクトロニカでどんなことを学ばせていただいたのかを書かせてもらいたいと思います。

※メディア芸術クリエイター育成支援事業の公式サイトには、研修中のオフィシャルな面談レポートを掲載していただいています!もしよろしければこちらもご覧ください。

初回面談(2021.7.12)

中間面談(2021.9.1)

最終面談(2021.10.25)

このプログラムに参加した理由

私はもともと、ざっくりと「まちづくりとアート」というテーマに関心があり、大学院の修士論文でも、「ローカリティ」というタイトルがつく論文を書きました。
そのまちの「まちらしさ」、「文化」はどのように作られていくのだろう?そこに、アートや文化機関はどのように関わることができるのだろう?と。
アルスエレクトロニカは40年以上かけてリンツ市を再生させてきた歴史があったので、そこをぜひ学びたいと思っていました。

でもそれ以上に、このプログラムで学びたかった/結果的に学んだのは、「組織」「人」です。

2019年にはじめてアルスフェスティバルを訪れた時、その会場の雰囲気と人に圧倒されました。単純に人が多いということだけではなくて、世界中から集まった人たちのパッションとネットワークが、その場のものすごいエネルギーを作り上げていました。

一体どんな人たちがこのフェスティバルを作っているのだろう?どんな人たちが集まっているのだろう?

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(credit: Martin Hieslmair)

また、アルスのようないわゆる「文化機関」が、40年以上も活動を続けているということ自体が、持続的な資金運営や組織づくりという面からものすごいことだと思いました。そしてそれは、これからの社会にとっても欠かせないことだと。

私は以前、お笑い芸人で絵本作家の西野亮廣さんのもとでインターンをさせていただいていました。
いわゆる「エンターテインメント」の領域で、ものすごい数の「人」「お金」が動く様子を間近で勉強させてもらっていたので、なおさらその「持続性」の大切さを感じていました。

なので、この6ヶ月間は、とにかくたくさんの人に会って、その人たちの心を知って、マインドを知って、どうすれば自分もそんな風に人と人を「つなぐ」プロデューサーになれるのか学ぼう!

そう思ってリンツに飛び立ちました。

20人以上の方々とのセッション

そして、その願いの通り、半年間ではアルスエレクトロニカの各部門から、合計20名以上の方々にお話を聴かせていただく機会をいただきました。

総合メンターである小川絵美子さんが、毎週のようにセッションを組んでくださり、直接一緒にお仕事をさせていただく方以外にも、本当にたくさんの方々にお会いできました。

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(Co-CEO/アーティスティックディレクターのゲルフリート・ストッカーさん)

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(Co-CEO/CFOのマークス・ジャンドルさん)

どうしてアルスエレクトロニカで働いていらっしゃるのですか?どんなことをされているのですか?何に難しさを感じていて、何を大事にされているのですか?

一見ありきたりに見える問いも、部門を渡り歩いて、たくさんの立場の方にお話しを聴くことで、少しずつ見えてくる「組織」や「人」がありました。

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(ミュージアム部門のソニア・バイラーさん)

私から見えているのはほんの一部ですが、それでもアルスエレクトロニカという生態系がどんな風に動いているのか、そのコアに少しでも触れられたような気がします。

この研修中にいただいたたくさんのご縁が何よりの宝物です。

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(Cooporate Communications部門のクリストファー・ソンライトナーさん)

フェスティバルの波に飛び込んだ夏

そして、もうひとつのとても大きな体験が、フェスティバルチームでの「夏」です。「『夏』です」と書くと、なんじゃそりゃ、という感じなのですが、「何を体験しましたか?」と言われると、「フェスティバルチームの皆さんと『夏』を体験しました」と答えるのが一番しっくりきます(笑)

そのくらいどっぷりとチームに入らせてもらっていて、朝から夜まで、オフィス内でも外でも、みなさんとたくさんの時間を過ごさせてもらいました。そして、みなさんのプロフェッショナルを日々間近で感じていました。

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(Credit: Ars Electronica - Robert Bauernhansl)

具体的には、私はオンラインフェスティバルのプロジェクトマネジメントを担当させていただきました。

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(同じオンラインフェスティバルのマネージャーさんたち。みんなこれを使おう!と、カレンダーをくれました。)


アルスエレクトロニカには毎年世界中からアーティストやリサーチャーの方が参加されるのですが、オンラインでもたくさんのパートナーの方々が参加されています。私は、日本のパートナー様をはじめ、台湾、インド、ナイジェリア、南アフリカ、イスラエル、オランダなど本当に多様な文化の方達とご一緒させていただき、パートナー様も、企業の方、大学の方、インディペンデントなキュレーターの方、アーティストの方などいろんな立場の方たちがいらっしゃいました。

立場や文化が違えば、コミュニケーションの仕方や優先順位、締め切りに対する感覚も本当にさまざま。

一日に何個もミーティングが続いたり、予期せぬ事態が発生すると、オフィスで頭がしっちゃかめっちゃかになることも多々ありましたが、「Maaya、プロマネの仕事はトラブルシューティングだから」と、同じオンラインフェスチームのマネージャのみなさんがいつも助けてくれました。

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(頼もしいチームのみなさん・・)

そんなこんなで、気がつけばあっという間に、7、8、9月が過ぎ去り、フェスティバルの夏は過ぎていきました。文字通り、フェスティバルの「波」を身体で体験させていただけたことで、あの熱気の裏側にどんな人たちがいたのか、どんな苦労があって、どんな想いがあったのか。そのかけらを少しでも感じさせてもらえたかなと思います。

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他にも、夏の間はフェスティバルと同時並行で、那須塩原市の中学校向けに特別ワークショップをやらせていただいたり、国際フェスティバル「科学と芸術の丘」のマネジメントも担当させていただいていました。

すべての思いの丈を書くと、文章がとても長くなってしまうので、この記事では割愛させていただきますが、どのプログラムも本当にたくさんの方々に支えていただき、どれも比べられない貴重な体験ばかりでした。

オリジナルワークショップとファイナルプレゼン

さらに、フェスティバルが終わった後の10月には、オリジナル企画をやらせていただきました!

ひとつは、オリジナルワークショップ「Picture Commons Workshop(ピクチャーコモンズワークショップ)」です。

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(credit: Emiko Ogawa)

これは、街の公共空間の写真を使って、わたしたちの未来のコモンズのあり方をイメージする!というもので、アルスセンターのシティズンラボで開催させていただきました。

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(credit: Emiko Ogawa)

ワークショップをいちから作り上げるのは初めての経験でしたが、子供から大人までたくさんの方が参加してくださいました。

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(credit: Emiko Ogawa)


そして、研修の集大成として、これまでお世話になったみなさまをお呼びして、アルスセンターでファイナルプレゼンテーションを開催させていただきました。

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(credit: Emiko Ogawa)

ゲルフリートさんをはじめ、様々な方が興味を持ってくださり、内部でも呼びかけてくださったおかげで、本当にお忙しい中、各部門から20名以上の方々が足を運んでくださいました。

お世話になったみなさまに、何か少しでも恩返しができればと、ただの報告ではなく、私から見た「いま」と「未来」のアルスエレクトロニカについて、感じていることやアイデアをお話しさせていただきました。

みなさんすごく熱心に聴いてくださり、Q&Aでもたくさんのフィードバックをいただけて、最後の最後まで本当に貴重な学びをいただきました。

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Co-CEO/ アーティスティックディレクターのゲルフリート・ストッカーさん
(credit: Emiko Ogawa)

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この夏をずっと見守ってくださったフェスティバルディレクターのマーティン・ホンジックさん。思わずとびきりの笑顔。
(credit: Emiko Ogawa)


たくさんの方々に支えられて

ここまでにも、このプログラムでたくさんの方々に関わっていただいたことを書かせてもらいましたが、これはほんの一部です。

日本サイドのアドバイザーとしては、ICC主任学芸員の畠中実さんと、ソニーグループ株式会社 コーポレートテクノロジー戦略部門 Group1 統括部長の戸村朝子さんにサポートいただきました。

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面談では、メディアアートのキュレーション的な視点と、ビジネス的な視点と多様な方面からアドバイスをいただき、メディアアートとは何か?プロデュースとは何か?キュレーションとは何か?を日々試行錯誤する中で、たくさん背中を押していただきました。

また、アルスエレクトロニカサイドでも、センターやフェスティバル、フューチャーラボなど各部門でメンターの方々についていただき、定期的にセッションを組んでいただいたり、何か聞きたいことがあれば会いに行かせてもらっていました。

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フューチャーラボメンターをしていただいたMaria Pfeiferさんと。
(Credit: Kyoko Kunoh)

そして、総合メンターの小川絵美子さんには、最初から最後まで、本当に二人三脚のように(!)伴走していただきました!
毎週のメンタリングセッションだけでなく、何かあればランチやディナーに誘っていただき、生活のことからキャリアのことなど、たくさんのことをお話しさせていただきました。
本当に、絵美子さんのあたたかいサポートがなければ、この6ヶ月をこんなに楽しく走り抜けることはできなかったと思います!

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(credit: Moe)

他にも、渡航前や研修中のあらゆる手続きをサポートしてくださった事務局のみなさま、大学関係者のみなさま、渡航前のドタバタ家の整理を手伝ってくれた英雄(友人)など、本当にたくさんの方々に助けていただきました!

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ここまでざっくりと、この6ヶ月での体験を書かせていただきましたが、本当に半年前の自分では考えられなかったような、貴重な体験をたくさんさせていただきました。

日本のアート、都市の未来のために何ができるのか。

ここからがはじまりだと思っています。


冒頭でも紹介させていただきましたが、本プログラムの令和4年度の公募が開始されています。本当に素晴らしい体験ができるプログラムなので、ぜひたくさんの方に知っていただければと思います!

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↓募集要項などはこちらから


次はドイツに留学します!(しています!)


そして・・・

最後の最後になりましたが、
いまこの文章を書きながら、私はドイツのミュンヘンにいます。
今学期から、在籍中の東京大学の交換留学制度で、ルートヴィヒマクシミリアン大学ミュンヘン(LMUミュンヘン大学)のSociocultural Anthropology コースで学ばせていただけることになりました。

Urban SociologyやUrban Ethnologyなどのコースがある大学で、「都市」と「アート」をテーマに、来年夏までの約1年間研究を続ける予定です。
コロナがもう少し落ち着いたら、アムステルダムやバルセロナなど、ヨーロッパのまちづくりがおもしろい都市も巡ってみようと思います。

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(LMU大学のメインキャンパスの入り口。キャンパスが大きすぎて、一体いくつあるのかまだわかりません・・)

この交換留学も、コロナ禍での大変な手続きをサポートしてくださった大学関係者のみなさまのおかげで実現いたしました。本当にありがとうございます。

たくさんの機会をいただいているからこそ、社会のために自分が何ができるのか。向き合って、楽しんでいきたいと思います。

いつも応援ありがとうございます。
今後とも、よろしくお願いいたします。


2021. 11. 21  Maaya Makino


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