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量的研究

量的研究の概要、アナログ研究、効果研究の話をします。
対になっている質的研究の記事は別にあります。

1. 量的研究とは

仮説を立て、データを数量化し、統計的検定を用いて仮説を検証するのが量的研究です。

臨床心理学において量的研究を行なうのは次の3つの場合です。
①実践活動やその効果を対象とする:過程研究、RCT、メタ分析、実験などの結果や有効性をテーマにするもの
②アセスメントや介入の対象となる事柄をテーマとする:心理、認知、感情、パーソナリティ、集団特性などを扱うもの
③実践活動に関連する一般的事象をテーマとする:コミュニケーション様式、援助要請行動、社会文化的傾向などを扱うもの

量的研究の枠組みとしては調査法と実験法があります。
調査法は、現実場面に操作を加えずに研究対象の特質を明らかにします。
実験法は、相関や因果関係を調べるために複数の実験条件に対象者を割り当て、独立変数のみを操作し、他の条件はまったく同じになるように統制した上で、従属変数の測度の変化を検討します。


2. 技法① アナログ研究

大学生や一般人など、非臨床群を対象に量的研究を行なうのがアナログ研究です。なんらかの心理的・精神的問題を抱えていない多数の被験者のデータを収集して分析します。

目的がいくつかあります。
1つ目は、アセスメント技術(心理尺度など)の標準化のために行なう場合です。心理検査は臨床像を把握する上で大変有用なものですが、開発のためには多数の被験者に実施して得点や回答のパターンを吟味する作業が必要です。
2つ目は、臨床的な問題の発生・維持メカニズムを探るために行なう場合です。非臨床群と臨床群の比較を行なうことで、問題の理解に繋がります。
3つ目は、非臨床群そのものを対象とすることに意義がある場合です。例えば社会的な心理現象や人間の行動様式を明らかにすることが目的ならば、一般人を対象にした研究が適しているでしょう。

アナログ研究の利点は主に4点です。
①高度な統計手法の適用が可能です。一般化できる現象や因果関係を正しく明らかにすることができます。
②臨床群と比較できます。両群の量的及び質的な差異を見ることができます。
③多岐にわたる情報収集が可能です。研究者が関心を持っているテーマについての情報がたくさん得られます。
④実験などを用いた統制が可能です。臨床研究では明確になりにくい特定の要因や介入の影響について、厳密な因果関係を検討することに繋がります。


3. 技法② 効果研究

ある心理療法に介入効果があると結論付けるためには、無作為化比較試験(RCT)が必要です。

RCTでは、人を無作為に複数の群に割り付けて異なった介入を行ない、その結果を群間で比較します。例えばうつ病の人をたくさんリクルートし、半分に分け、片方の群には一定期間認知行動療法を行なってもう片方の群には何もしないといったことをします。そして一定期間後に両群を比較し、もしも認知行動療法を行なった群で症状が有意に改善していた場合、その療法は効果があるということができます。


量的研究は数量データを統計解析するのでエビデンスがある/ないがわかりやすいのですが、統計分析のスキルが必要になります。公認心理師は科学者-実践者モデルといって研究活動をすることが求められていますから、統計の知識を持つことはとても重要なことです。
僕が統計を勉強した時に役立った本を1冊紹介して、この記事は終わりにします。


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