MMPI(ミネソタ多面人格目録)
質問紙式の性格検査、MMPI(ミネソタ多面人格目録)についてです。
1. 検査の概要
HathawayとMcKinleyが作成した質問紙で、全550項目から成ります。被験者は各項目について「あてはまる」か「あてはまらない」で回答し、「どちらともいえない」をできるだけ少なくするように求められます。適用年齢は15歳以上です。回答には約1時間~1時間半かかります。
この検査の特徴としては、妥当性尺度と臨床尺度の2つで構成されていることがあげられます。これについては後で説明します。
項目内容は以下の26に分類されます。
性格のプロフィールを描くためには、各尺度の粗点をT得点という特殊な得点に変換します。詳しくは別途マニュアルなどを参照してください。
2. 妥当性尺度
妥当性尺度には疑問尺度、L尺度、F尺度、K尺度の4つがあります。順に説明していきます。
疑問尺度とは「どちらともいえない」と回答した項目数です。平均2~4項目出てきます。これが30項目以上あった場合には、この回答を以て検査の解釈をするべきではないとされます。
L尺度とは、多くの人が当然自認するような些細な欠点を取り上げた項目です。これが高い人は、社会的望ましさに左右されて素直に回答していない可能性があります。低い人は率直に回答していて、自分のことをよく理解していると思われます。よってこれは低い方がいいです。
F尺度とは、健常者で「あてはまる」(逆転項目であれば「あてはまらない」)と答える人が10%未満の項目です。50点を超えてくると何らかの神経症状もしくは精神病症状があると考えられます。しかし80点以上である場合には詐病、症状の誇張、でたらめに回答している可能性が高いです。
K尺度とは、防衛的な受検態度を測定する項目です。これが高い人は自分が良い印象に見られるように操作している可能性があります。一方で低い人は故意に好ましくないように見せていたり、自分の抱える問題を誇張していたりといった可能性があります。
3. 臨床尺度
臨床尺度は、精神疾患患者群と健常群それぞれに実施し、両群の回答に有意差があった項目です。第1尺度から第0尺度まであります。多いですが順に説明していきます。
なお、これらの得点は各尺度で平均が50になるように作られているので、高得点/低得点は50より高いか低いかを指します。
第1尺度は心気症(Hs)です。身体上の問題や能力全般について扱っています。高得点は疲労や神経症の存在を意味し、低得点は日常生活を概して快適に送れていることを意味します。
第2尺度は抑うつ(D)です。文字通り抑うつ状態の評価や精神的混乱を扱っています。高得点は抑うつや神経過敏、低得点は情緒的安定を意味します。低い方が健康であると解釈できます。
第3尺度はヒステリー(Hy)です。身体症状に対する多様な訴えを扱っている項目と、情緒的問題を否定している面を扱っている項目から成ります。高得点は未熟や自己中心性を、低得点は同調性や興味範囲の狭さを意味します。
第4尺度は精神病質的偏倚(Pd)です。人生における不満足感や対人関係の軋轢について扱っています。高得点は反社会的傾向を、低得点は受動的態度を意味します。青年期の人が高い得点を出すとされています。
第5尺度は男子性・女子性(Mf)です。名前から受ける印象とは違ってあまり性的なことは扱っておらず、仕事や趣味における興味の持ち方、感受性について扱っています。高得点と低得点の解釈が男女で異なります。高得点の男性は知性的、低得点の男性は攻撃的、高得点の女性は攻撃的、低得点の女性は受動的であることを意味します。
第6尺度はパラノイア(Pa)です。非社会的行動や柔軟性の欠如などを扱っています。高得点と低得点が対立した概念になっているとは限りません。高すぎても低すぎても精神病的傾向を指します。よってこれは50点前後の人が一番適応的だということになります。
第7尺度は精神病弱(Pt)です。強迫的な思考、不安、自己能力への疑問などを扱っています。高得点は心理的動揺を、低得点は社会への適応を意味します。よってこれは低い方が健康的です。
第8尺度は精神分裂病(Sc)です。今は"精神分裂"などという言葉はあまり使いませんが、この質問紙が作成された当時はこのように呼ばれていました。奇異な言動といった精神病症状を扱っている項目のほかに、社会的不適応を扱っている項目があります。高得点は精神病性行動傾向を、低得点は温厚や他者への信頼を意味します。
第9尺度は軽躁病(Ma)です。躁的症状のほか、対人関係についても扱っています。高得点は誇大妄想や高い活動性を、低得点は無気力や自身の欠如を意味します。
第0尺度は社会的内向性(Si)です。社会参加と適応を扱っています。高得点は自信が無く遠慮がちなことを、低得点は社交的・外交的であることを意味します。
これらの他に追加項目も作られています。不安(A)や顕在性不安(MAS)、支配性(Do)など様々ありますが、今回は詳細は省きます。ただ、MASは独立した尺度として使われることもあるので、これだけは覚えておいた方がいいです。
長くなりましたが、MMPIの説明でした。実際に実施する時にはマニュアルをしっかり読んでから使用・解釈しましょう。
参考↓
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